第7話

あれから6年の月日が流れる。

 今は10歳、歳を重ねたのだ。中身と合わせれば30歳は超えて居る。まぁそんな事より、この6年間の成果を語ろう。


 まずは身体強化ブーストを維持できる時間は、4時間以上は可能となった。ガイは一日中維持できると言っている。そして、言わずとも性能も上がっている。


次には雷魔法の成果だ。

 同時にチャージ出来る、稲魂は5つまで増えた。

一つから3つまでは一年ちょっとで増やす事は出来たが、4つから増やすには手を焼いてしまった。2つ増やすのに6年もかかったのだ。チャージ数を増やすのに、威力とスピードはさほど成長していない。


 次に雷装の方は、これはこれで精度上げるのに一番時間がかかった。雷装は一回り大きくなったが、威力も性能も上がっている。


 影法術は平和に暮らして居るせいか、負の感情がなく成長の限界にたどり着いた。まぁ、平和って事で良しとしよう。


 そして剣術の方は、ラーラの独断だが四大流派の四つとも中級に毛が生えたぐらいの実力まで上がっていると言われた。他の成果と比べて、一番成長が遅い。やはり相性が良くないのか、ラーラの指導力がないのかよく分からない。


そして、新しい技も獲得している。

 無属性魔法の加速アクセル魔法強化マジックバフ


 加速アクセルは、短距離だがワープしたか様に高速で移動できる。

 

 魔法強化マジックバフは、魔法の威力を強化させる魔法。6年間、稲弾の威力は上がっていないが、この魔法を掛ければ威力が上がる。


だが、欠点はある。

 それは魔法自体ではなく、自分自身にあった。ガイの様に、異なった一般型の無属性魔法を同時に使う事はまだ出来ない。


「ラーラ、最近の調子は大丈夫か?」

「うん、少し眩暈がするけど、こんなのは平気よ」


そして、それ以外に朗報がある。

 どうやら俺は兄になるかもしれない。弟か妹かはまだ分からないが、ラーラの腹の中には新しい生命ができていた。


「父さん、母さんは大丈夫なのか?」


だが、ここ最近ラーラの体調は悪い。

 俺を身ごもった時は、あまりにも元気に暴れていたことにガイは頭を抱えていたが、2人が出来た時は何故か体調が悪かった。


 いつも以上に元気がなく、ベッドの上で安定している。


「僕が買い物中に勝手にどっか行かないでね」

「もうー、何回言うのよ!前みたいに勝手に剣を振ったりしないから」

「信じられないなー」

「父さん、買い物は俺がするよ。父さんは母さんを看病してて」

「え?良いの?それは助かるな。流石、お兄ちゃんになる子だ。なら、頼もうかな」


この村には魚屋がない。

 畑はあるが、今日はラーラから魚料理をリクエストが入って居る。ここから3時間も掛かる隣の村に行く。


 3年前に初めてこの村に来たが新しく分かった事がある。俺が思って居る様な剣と魔法の世界ではなく、科学技術も日本の様に進んでいる。窓を覗き込むとテレビもあり、街中を歩く村人の中に携帯の様なモノを持っている。そして、村を守る兵士の両手には機関銃の様な銃を持っていた。


「おう、アリス!今日は何をご所望だ?」

「鯖を6枚欲しい」

「あいよー、全部で600Gギルだが、500にまけてやる」

「本当ですか!ありがとうございます!」


 この世界の魚類は日本と変わらないようだ。鯖もあれば鮭もある。この世界のお金の事をGと言う。他の商品を見比べれると1G=1円と見た。


今日はラーラの大好物な鯖の味噌焼き。

 元日本人として嬉しい料理だが、この国では米の文化がない。鯖の味噌焼きとパンは合わないんだよな。


「米食いてぇ...あ、すみません」


 袋の中にある鯖を見ていたら、背の高い人とぶつかってしまった。その人物はフードを深く被っていて、顔がよく見えない。

するとゆっくりと南の方へと指を指した。


「手遅れになる前に...一度、故郷へ帰るんだ」

「え?」


どことなく落ち着く声であった。

 男だろうか?彼はそれだけ言って素通りする。


「...なんなんだ?変な人だな」


アリスは彼が言った言葉を思い出す。


 平和ボケか...確かに前世と比べれば、この世界は平和だ。俺がかつて望んでいた環境。ガイもラーラもそして村のみんなも俺を化け物と言う人はいなかった。


そうか、俺は楽しんでるんだ。


「この世界に来て良かったな。一体誰が俺を呼んだんだろう。神だろうか...そいつに感謝しきれないな」


 

 アリスは一体何のためにこの世界に転生したのかは分からない。だが、自分を化け物と呟く者もいなく、平和に暮らせて居る理想な人生を送れて居ることに、アリスを転生させた者に感謝の言葉を呟く。

















 だが、平和な時間はすぐ終わろうとして居ることは、アリスは知るよしもなかった。彼の平和な物語はエピローグに突入していたのだ。




第七話 『終わりの時間』

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