AOI 第26話
机を囲んできた女の子達は、結局休み時間が終わるまでいた。後席とかの男の子達と同中なのは、会話から理解した。また、名前も聞かれていないし、私から聞く事もなかった。結局、席も離れているみたいだし、私は2教科だけだから、そんなに話す機会もなさそうかな。と、思ったら少しだけほっとした。はじめましてー、とかでほんわかとした出会いを期待していたけど、現実はそんなに甘くはないのかもしれないと悟った。隣の子は全く話してこないし、私は、はじめての塾で頭の中ぐるぐるパンクしそう、目の前の静かで微動だにしない男の子と同じ状況の私なのでは、と思ったけど目の前の男の子は、真摯に勉強と向き合っているかもしれないと頭の中で考えがかわって、男の子がふと頼もしく見えはじめたけれど、いや、いけない、勝手に妄想していてごめんなさいと心の中でつぶやいた。はっ、またしても、私って奴は、数学数学。授業は始まっているのだ。
数学の授業は、学校の授業とは全く違っていた。問題の読み解きを効率よくいかにスピーディーにできるかにかかっているみたい。目から鱗だった。そして、受験は時間配分も大事らしい。へー、そうなんだ。学校のテストでさえ余裕がなくて、見返したりなんてまったくできていない。最後の問題に行くほど黒板横の時計を見て、もうこんな時間と思って、焦ってしまう。そして、テスト終わりには、いつも、あーあと椅子の背にもたれかかり、不甲斐ない自分に落胆している。そんな姿を解消できる日を迎えることが、手の届くところまできているとは。すごく、ワクワクしている。私が、ワンアップするみたい。塾に通っている友達は、みんなこんな気持ちを体験としているのかな。ひさちゃん達を思い出し、すごいなぁと感心した。私も、これから塾で、頑張れそうな気がした。数学の時間もあっという間に終わってしまった。と、同時にノートを見て、その授業の進むスピードに驚いた。頑張るぞ、私。よし、今日の塾は終わった。帰るぞ。机のうえの荷物をぽんぽんと入れていく。次の授業を受ける子が入ってきて席を探している。早く席を空けてあげなきゃ。席を立つと、隣の女の子が、
「次受けないの?」
と、見上げてきた。私は、
「うん。英語と数学だけなんだ。」
と、見下ろしながら話た。
「私も、帰ろうかな。」
と、言うので、私は、えっかっ帰ろうかなって言った、今?と、心の中でつぶやいた。
「うん。帰ろう。」
と、女の子は、また、言った。私は、
「…帰る?」
と、聞くと、女の子も荷物を片付けて、
「一緒に帰ろう。」
と、声をかけてくれた。私は、次の授業はいいのかな?と思いながら、女の子に、
「うっうん。」
と、2人で椅子をしまって教室のドアに歩いて行った。
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