第22

 この日が、とうとう来てしまった。初塾が、始まる。今日から、土日はお休みで12日間。私は、午後から始まる、英語と数学を受講する事にしている。1時半からはじまる。1教科60分授業。…60分…大丈夫か私。体験した時の静けさが思い出される。あの子達もいるのかな…なんとなくの面影が頭に浮かんだ。あのやり取りが続くのか、同じ中学の子がいるのか…行ってみなきゃわからない。スキップなんて想像できない、今日の空のように、どよーんとして体がなんだか重たい。今年も雪が多いので、母から、バス通学にしてと言われた。自転車は滑るから、心配なんだそうだ。たしかに。家で、弟とお昼ご飯を食べて、1時丁度のバスに乗る。1人残される弟は、友達が家に遊びにくるそうで、居間でゲーム大会を開くらしい。1人はさびしいのではと、気にしていたけれど、友達とスケートに行ったり、映画を見に行ったりと、結構忙しい。来年からは、部活だぞーと、今のうちに遊んどけーと話している。ただ、母はお財布とにらめっこして、弟に仕方がないなぁと他のお友達が持ってくる金額を聞いてだいたい同じくらいを持たせている。弟もなんとなく家のお財布事情はわかっていて、自転車に乗って、市の施設の体育館や冬でも入れる温水プールに行ったり、家で遊ぼうとか誘っている。私も塾へは自分で水筒を作って持って行くことにしている。今日は、甘ーくて、あったかい紅茶を作った。弟にも作った。家の暗黙のルールのような、その場に入る人の分も一緒に作ったり声をかけたりする。

 「行ってくるねー。鍵お願い!お風呂お願い!」

 と言って、なんだかんだと余裕がある様子だったはずが、バス停まで、小走りの私がいる。バス停には、横断歩道を渡った所に、総合病院があるので、10人ほど並んでいた。間に合った。バスの中は、あったかい。バスは、左折をして国道を走る。国道は朝早くに除雪車がはいるので残っている雪小さく固まっていて、タイヤのチェーンが音をたてて走っていく。窓から見た空は、グレーで、帰りは雪だなぁと思った。バスは、時刻通りに駅に到着した。初めてだからか、降りて、また小走りをして、横断歩道先にある塾へと信号機の赤に少しほっとして止まった。雪国ならではか、雪が積もると道路の下から水が出て、溶かしてくれる。氷点下になると凍るかと心配するが、なぜか大丈夫。テレビ取材もくる、風物詩となっている。でも、歩くのは大変。びしゃびしゃだから、一歩が大きく、次はどこに足を下ろそうかと確認しながら進んでいく。あぁ、やっぱり靴濡れちゃうな。

目の前は、もう、塾。自動ドアが開いた。

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