第17話
「終わった?」
「うん。今、終わったところだよ。」
クラスの子の視線がチラチラと。
「ちえちゃんところ終わるの1番遅かったよ?」
「本当?いつも1番早かったのに。」
本当にそう。サッカー部の顧問だから、早く終わって外で走りたいんだなぁというのが、担任へみんな思っていた事。
「やっぱり、先生今年で異動しちゃうのかな。」
「えっ?」
鞄に荷物を入れていた私は、顔を上げて、
ちえちゃんを見て、先生を見た。先生は、いつも帰りの会が終わるとすぐに教室を出て行ってた。けど、今日にかぎって、まだ、教壇にいる。サッカー部やら女子が何人か先生を囲んでいて、笑い声も聞こえる。
「…知らなかった。」
「サッカー部の子達が、内緒なって話していたよ。」
先生みんなに何も言っていなかったな…。まわりを見てもみんな、知っている人知らない人と分かれているみたいで。教室の真ん中辺でだらだらと話している人達もいるなぁ。そんな中、男子何人かが、後のドア近くで、大きな声で先生に、
「先生、バイバーイ。」
と、言った。先生が、
「おうっ。」
と、片手を上げながら答えていた。私は、支度ができたので、
「ちえちゃん、帰ろうか。」
と言った。ちえちゃんは、うなずきながら後ろにいる先生をチラッと横目に気にしていたので、ちえちゃんに
「先生のところに行ってみようか。」
といってみた。ちえちゃんが速攻でうなずくので、荷物を持って、教壇近くまで行ってみた。内緒って話していたから、聞いていない風に、とりあえず、
「先生、さようなら。」
と、ちえちゃんと頭をペコッとしながら言った。先生は、
「おうっ。」
てだけ、また、言った。にこにこしながら。先生は、他のクラスのちえちゃんに気づいて、
「あれっ、帰りの会もう終わってるの?
俺も職員室戻らなきゃ。」
と、黒板を急いで消してながら、囲んでいる生徒に、
「ほら、先生もう、教室でるぞー。」
と、教室にいる子達に聞こえるように、少し大きな声をかけた。私とちえちゃんは、なぜか、先生を先頭に大きな集団の中に入ってしまい、教室を出て階段を降りて誰と何を話したか覚えていないくらい、みんなの声が飛び交っていて、気づくと下駄箱まで歩いてきてしまった。みんなで、なぜか、
「先生、さようならー。」
と、会釈して、先生は、
「おうっ。」
って、書類を持っていた右手を挙げて、笑顔で同じ事を言った。それだけを言って、後を向いて職員室へとむかった。その場にいるみんなで、少しの間だけ、先生の後姿を見ていた。そして、無言で、自分の下駄箱から、靴を取り出した。外にでると、男の子が、
「さっぶい。」
と、両手をポケットに入れて、背中を丸めながら、言った。なぜか、その集団でぞろぞろと帰り始めた。
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