第16話

 卒業式が終わり、幾度かの雪で、校庭の雪だるまは、小高い山と化していた。今日は、終業式。春休み前の最後の登校日。3年生がもう来ない学校は、下駄箱からして静かで、教室へ行く階段も続く教室も、そこだけガラんと虚構になっている。こんなにも、静かに寒い学校ってなかなかないのではと思った。先輩達の後姿を思い出す。もう、見る事が無いのに。冬休みの諸注意や、今年は例年より雪が多いので、登下校の安全の為、3月いっぱいは部活動はお休みになった話があった。ぽけっとしていた私はえっなにーっと前のめりになった。この春休みは、練習頑張ろうと思っていたのに。ポカンと空になっていくようだった。4月に入ってから再開予定らしい。私達には、中学最後の春休みなんだよー。少しでも練習して1回でも勝ちたいんだよー。先輩達の後ろ姿を見て、私は、燃えていたところだったのに!くすん。通う塾がちがうから、友達とも顔を合わす回数が減ってしまうし。会えるかなぁ。1人づつ、名前を呼ばれ、『成績表』が手渡された。私も呼ばれて、席に座り鼻先5cmくらいで広げて、目を閉じ、今さら遅い、いろいろな神様にお願いして、胸はドキドキ、あの時もう少し勉強しておけば…とか、この短時間にたくさん頭に浮かんで、でも…パッと目を開いて見た。……ほんの気持ち上がったかなくらい。『成績表』を閉じた。教室は、見せ合いっこしている人や、大きい声で、

 「やべー、下がったー。」

 と、言って、周りで笑い声があがったり。賑やかになった。先生が、

 「はい。前むいてー。」

 と、言いながら、みんなを見渡した。

 「今日で、この教室ともお別れです。」

 と、話はじめた。耳がシーンと空気を拾って聞かせてくれているようだった。先生の話は続く。私は、2年生のこのクラスのみんなとの日々が、今日で終わることが信じられなかった。また、明日、教室で、おはようと言っているような気持ちでいる。不思議でしかたがない。みんなどうやって気持ちの整理をつけるのか、すごく聞いてみたい。ただ、また、新しいクラスもすごく楽しみだったりしている。新しい下駄箱に、新しい教室、隣の席は優しい女子がいいなとか、思いを巡らせていた。先生の話は、この1年の間で、1番耳を傾けたかもしれないほど、いろいろ考えていたわりには聞いたところは少しすとんと、胸にじわりときた。2年生最後の教室に、最後の日直の号令がかかった。先生に話に行く子、急いでドアを開けて出て行く子、春休み遊ぼうねーとか約束している声が聞こえたり、誰か後ろのドアから人をかきわけて入ってくる子いるなぁと見ていたら、ちえちゃんだった。 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る