第5話

 ハッとそういえば、

 「お母さん、中央学院はどうやって見つけてきたの?」

今頃、思い出した私。母は、私に顔をむけて、口元に運んでいた紅茶をひと口飲んだ。

 「あー。同じ職場のお母さん達や、あさみちゃんママとか、おすすめしてくるから、そんなにいうならと、遠いけど、さちにも1度体験してみて欲しいなと思って。どうだった?さち。」

 「えっ角のあさみちゃんママ?」

 「そうだよ。」

 「あさみちゃん、ひさちゃんと同じ塾だよ。」

 「そう、そう言ってた、あさみちゃんママ。楽しそうだし帰りとか心配なくていいんだけど、楽しそうすぎちゃってって、言ってたよ。あさみちゃんママは、すごく塾調べをしていて、中央学院がここら辺では、面倒見が良いと聞いたと言っていて、それならと、思っていたのよ。」  

へぇ〜

 「でも、遠くない?」

 「駅前だから、バスでもいいし。塾は夜からだから、送ってもいけるしね。春休みだったら、自転車もあるしね。」

 調べたら、バスは15分くらいで駅につく、そこから歩いて3分。帰りもバスがあるから、1人でも大丈夫か。体験した英語の授業は、わかりやすかったけれど少しスピードが速く感じた。嫌ではなくて、問題がとけたような爽快感があって、早く終われの授業ではなくて、もう、終わったの?と授業が短くかんじられた。教室長の〝楽しみですね〟を思い出した。親身に…なかなか決められない私には、あっているのかもしれないな。でも、はじめましてはドキドキだし、ヒソヒソ女子も怖い、探せば同じ学校の子がいるのかな。でも、聞かないねぇと話していたから、全くいないかも。それってどうなんだろう。体験の時、そそくさと教室を出た事を思い出した。毎回、塾の時そうだとしたら、やっていけるかな、私。友達できたとしても、同中じゃない人とどう付き合っていくのがいいのか、わからないなぁ。塾友って、はじめてで。学校の友達とのいごこちに、あらためて、感謝した。そこを、まだ中学生だし、わざわざ抜け出さなくてもいいのではないかと、思いはじめた。それに、塾は高いのでは?母に、受け取ったパンフレットを見せてもらった。今なら入学金なし…よしよし。体験後、入塾希望なら4月本科+春季講習1科目無料。授業料が発生するのは5月からか。他の塾はどれどれ、母に渡したパンフレットを全部持ってきてくれた。揃ったぞ。さぁ、どうするか。ふむふむ。3月という時季だからか、だいたいみんな同じ感じ。違うところは、夏期講習の値段かなぁ。合宿があるところもある。見てみると中央学院がお得な気がする。お友達とも夜待ち合わせして、また、ゾロゾロと帰りたい気持ちとゆっくりな教室長がいるところも私には合っている気がする。同じ事をなん度も考えていた。うーん。

 「見て見て、雪が降ってきたよ。」

と、弟がカーテンを開けて、母と私に見せてくれた。

 「本当だぁ。降ってきたねー。」

 「また、積もるかなぁ。」

どおりで少し部屋が寒くなったわけだ。手を伸ばして、そばにあった自分のカーデガンを羽織った。



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