第12話 祭壇の上へ
登って来た敵が簡易結界に弾かれて転げ落ちるのを眺めていると、ジョゼフが目を覚ました。
「ウゥ、痛い。…ここはどこですか?」
「祭壇の上だ。俺たちは魔物の群れに包囲されている」
「奴らは登って来ないのですか?」
俺は黙って指を差した。祭壇最上部のふちから顔を出した敵がまたしても結界に弾かれ、絶叫とともに落ちて行った。
「辺り一帯を簡易結界で覆ってある。俺の魔力が続く限り、奴らは手出しできない」
ジョゼフはごくりと喉を鳴らした後、震える声で訊いた。
「あなたの魔力が尽きたら、どうなるんですか?」
俺が一瞬答えを渋っていると、キャメロンがなんでもないことのように言った。
「まあ、死ぬね。全員死んで任務完了さ」
ジョゼフは暗澹たる表情を浮かべたが、慰めになるような言葉は思い浮かばなかった。当然だろ、俺たちも死んじまうんだから。
完全に詰んだな。
目をつむってうずくまっていると、いろんな思い出が浮かんできた。戦士の村で訓練に明け暮れた幼い日々、村を出て初めて一人で魔物を倒した時の高揚感、好きな女と見た美しい草原の夕陽、最初の相棒と交わした軽口、守りきれなかった幼子の死に顔-。
平凡だが、それなりに起伏のあった二十五年間。それが俺の人生だった。
感慨にふけっていると、簡易結界がゆるみ出した気配を感じた。どうやらもう時間がないようだ。
キャメロンが静かに起き上がって、剣を抜いて構えた。こいつも結界のほころびを感じたらしい。
それにしても死が近づいているというのに、キャメロンの様子は普段と変わらない。変に力が入っているでもなく、立ち姿にも飄々とした風情が感じられる。
こいつは大した奴だな。俺は少し感心した。いや、少しだがな。
俺も立ち上がって大刀を抜いた。
死が避けられないとしても、最後まで闘って終わろう。
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