第11話 魔物の軍勢

 強烈なショックで目が覚めた。

 右肩があり得ないほど痛む。脂汗を流しながら飛び起きた。

 周囲を見まわして事態が絶望的であることを覚る。俺たちは魔物の軍勢に完全包囲されていた。


 キャメロンもどこかをやられたようで、口から血を流しながら起き上がった。ジョゼフは気絶しているようで、横たわったままぴくりとも動かない。どうやら三人とも遠距離からの初撃をもろにくらったようだ。

 右肩の痛みは続いている。俺は“しまった”と唇を噛んだ。利き手の右腕に力が入らない。これでは攻撃にも防御にも支障をきたす。


 どこからか鬨の声が上がり、魔物たちが次々と突っ込んでくる。左手に構えた大刀でゴブリン数匹を切り捨て、ジョゼフの襟をつかんで後退する。キャメロンもいつもより動きが鈍いものの、やはり数匹の魔物を倒し、じりじりと下がってきた。敵をにらみながら俺にささやく。

「どうしようか?」

「後ろの祭壇を登ろう。俺がジョゼフを背負って先に行くから、その間、敵をくい止めてくれ。上に上がったら魔法で援護するから、おまえも登って来い」

 キャメロンは「了解」と答えると再び敵に向き合った。


 俺は急いで気を失ったままのジョゼフを担ぎ上げ、祭壇の側壁を登り始める。高さが十メートルほどもあるが、足がかりになる窪みがそこここにあり、比較的登りやすい。ジョゼフの体重が軽いこともあって、時々飛んでくる遠距離攻撃を避けながら何とか登り切った。

 祭壇の上は開けた広場になっていて、中央部に常設型の魔方陣が彫りつけてあった。下手に踏み込んで発動するとどうなるかわからないので、魔方陣の外にジョゼフを寝かせ、祭壇のふちに戻って魔法による援護を開始した。


 俺の放った炎弾が次々と敵に直撃する。当たった魔物は絶叫を上げ、瞬く間に燃え尽きていく。俺の炎弾は威力が大きいのだ。魔力消費が激しいのと発動モーションに時間がかかる上、コントロールに難があるので、実戦ではめったに使わないが、相手がひしめいているこういう場面ではうってつけだ。 

 足止めが効き始めると、キャメロンはきびすを返し、祭壇の側壁を身軽に登り出した。初撃以外は特に傷を負わなかったようで、あっという間に頂上に達した。


 キャメロンが登り切ったところで、俺は祭壇のふち沿いに魔法で簡易結界を張った。これで登ってくる敵と遠距離からの物理攻撃は防ぐことができる。

 もっとも俺の魔力量ではそれほど長くはもたない。そして、結界が途切れた時には敵がなだれ込んで来るのは必至である。破滅は時間の問題だ。

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