第2話 虐げたかった須らくへの愛②

 「まったく、餓狼殿も気が短い。せっかくの誉れ高き仕事であるというのに、もう行ってしまわれるとは。酒と女に溺れ過ぎてはいないか、心配になる程の耽溺振りだ。英雄色を好むというが、些かやりすぎではないか?まあ、私も酒が進む。同じようなものか。。。私は慈悲の大貴公、名を遊びという。勝者の真様が、慈悲とは心の余裕、紙の余白のようなものだとして名付けて下さった。遊び、良いではないか。心がピョンピョンしてくる。おっと失礼。夫失礼。それはそうと、早く嫁が欲しいものだ。私ももう40になる。子供も欲しい。知的であれば多少見目が悪くても良いのだが、なかなかこれといった女が現れんのだ。夫失礼。愚痴になってしまったな。ともかく、我々はあの敗者の真の者どもに勝った。後は奴が全てを諦めるまで隔離しておけば良いだけだ。偽りの箱庭に。奴らの清貧の魔手に脅かされることはもうないのだ。毎日が祭りだ。実に愉快である。では、これから、わたし遊びが戦争当時の報告書と聴文を基に、語り継がれるであろう偉大な功績を書いていこう。最高のカーニバルを。。。」


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紀元前13000年、縄文時代。



ある村があった。


「今日も沢山、あけびや山リンゴが取れたで~。村の皆で分けて食べるで~。」


「良かったけんどもよ、山向こうの村の友達達が言ってたんだけんど、最近この辺りに暴れ猪が出るっていうらしいんだんだ。気を付けなきゃいけないっぺ。」


「そんなの、あけび分けてあげて抱き合えば落ち着くべ、平気平気!」


「そうなんだけんど、なーんかおら、こう心がざわわするだ。なんなんだろうな~」



その頃、まだ世界には魚食や肉食、種子を食べる慣習が無かった。また、恐怖も無かった。



しかし、



「しゅろろろろろろろッ!!!!」




人の、動物の、植物の、生けとし生けるモノ達の心に黒い蛇が巻き付いた。

この瞬間、恐怖と、大罪である殺す事、八つの枢要罪である暴食が生まれた。



そして、

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