キャラクターが勝手に動く現象を作る

三丈 夕六

例を交えて言語化

 みなさんこんにちは三丈と申します。


 本話は先日X(Twitter)上で作家の榊一郎先生が語られていた内容を元に自分としても言語化したいので書いた物になります。


 常々自分でも感じていたことが綺麗に腹落ちしましたので。また、現在自分の使っている方法も交えます。独自解釈が入る所はご容赦下さい。また、説明をする為に断定形を使う場合がありますが、あくまで僕の解釈だということは念頭に置いて下さい。

※榊先生のポストは非常に参考になるのでぜひ見てみて下さい!



 ではここからはいつもの口調で。



【1、勝手に動く現象の正体】


 まず、創作をしているとよく聞く話題「キャラクターが勝手に動く」現象について。


 これが発生する条件は下記になる。


 キャラクターの行動原理vsストーリー(プロット)


 キャラクターの行動理念とストーリー、プロット……いわゆる状況がぶつかった時、キャラクターが動くのだ。これを説明する為に例を書こう。説明用にシンプルな物を。



 例

 キャラクター【名前:ロイ 性別:男 年齢:25歳】


 設定

 ファンタジー異世界に生まれた男性。両親は他界し、妹と2人暮らしをしている。妹が幸せになることを願っている。


 行動原理

 1、妹の為であれば手を汚すこともいとわない。

 2、妹の嫌がることは絶対にしない。


 はい。このキャラクターの中心にいるのは「妹」となるね。彼に以下の状況をぶつけてみよう。


 状況

 妹と一緒に街へ行った帰り道、盗賊に襲われる。抵抗して何とか小屋に立てこもる。外の盗賊から妹を差し出せば主人公ロイの命は助けてやると言われる。

 ※今回は盗賊が嘘を言っている可能性を除外します。


 こういった状況の時、ロイの行動原理から考えると、次の行動のうち、行動するのはどれだろう?


 A.妹を残して窓から逃げる。

 B.妹と一緒に窓から逃げる。

 C.扉を開けて妹を差し出す。


 この中からロイはA、Cを選ぶだろうか? きっと選ばないと思う。これは彼の行動原理に逆らう行動になってしまうからだ。


 しかし、作者が用意したストーリーはAとする。そうすると、キャラクターがAの行動を起こす動機が持てなくなる。


 つまり、作者が用意したストーリーとキャラクターの行動原理に相違が起こった時、キャラクターがストーリー通りに動くことを拒否して、別の行動を取る。これがキャラが勝手に動く現象の正体なのだ。


 これが何度も起こることによって、ストーリーから逸脱してキャラクターが動くという訳。



 でも、そんなこと起こらないぞ? という人がいるとかと思う。こんな指摘を受けたことはないだろうか?



 ・キャラクターがフワフワしている

 ・キャラクターに一貫性がない

 ・キャラクターが何がしたいのか分からない。

 ・キャラクターがストーリーに動かされている(操り人形に見える)



 こういった指摘は、勝手に動き出す前の段階。行動原理が明確化できていないから起こる現象。では次に行動原理を明確化する良い方法があるので紹介しよう。



【2、行動原理の作り方】


 みなさんもキャラクターの設定を固めることはあると思う。どんな人生を送って来たのか、何ができて何ができないのか……etc。


 そこから、そのキャラクターの独自ルールをいくつか上げる。これは、行動制限方式(〜しない)の方が状況を作った時に書きやすい。


 ↑の例であるロイの行動理念をもう一度ルール化しよう。



 1.ロイは、妹を絶対に見捨てない。なぜなら妹が何より大切だから。

 2.ロイは、妹を絶対に裏切らない。なぜなら妹に生きる希望を見出しているから。

 3.ロイは、妹の為ならどんな状況でも諦めない。なぜなら妹を生かすことが最優先だから。

 4.ロイは、最後の最後まで妹と生き残る方法を考える。なぜなら、妹と生きていきたいから。



 はい。4つほどルールを定めてみました。これでかなり行動に制限がされたと思います。※最後が「〜ない」方式じゃないのは許して(汗


 ↑はゲーム、ゴードオブウォーで使われる「クレイトスルール」という物を参考にしている。これは、ゲームを複数のメンバーで作る為、主人公クレイトスのキャラクターを統一する目的で定められた物だ。


 また、日本の漫画作品、メイドインアビスのボンドルドにも採用されている。どちらもこのルールに関するインタビューは面白いので、ぜひ調べてみて欲しい。


 なぜルール式にするかと言うと、行動の制約が付けやすいから。設定を何度も何度も読み返して書き続けても、そのキャラクターの芯の部分を掴みきれないこともある。それをルール式にすることで明確にするのさ。


 さて、これでロイの取る行動にルールが加わり、行動が制限される。制限された結果、主人公が取り得る選択肢が行動の一貫性に繋がる。行動制限=行動原理と言っても言いだろう。


 これができるようになればキャラクターが作者の思い通りにならなくなる。これでだいぶ人間味を帯びて来た。


 え? じゃあストーリーがめちゃくちゃになるだろうって? 安心して下さい、そこの対策も伝えるよ。



【3、勝手に動くようになった後は?】


 さて、ルールは決まった。キャラクターが作者の言うことを聞いてくれなくなった。そんな時はどうするか?


 それは「状況の方を変える」だ。


 これはストーリー自体を変えることもあるし、ストーリーはそのままに、キャラクターが動けるようにしてやる方法もある。


 じゃあ、再びロイ君にストーリーをぶつけてみよう。


 ストーリー

 逃げのびて村に帰ったロイ。彼はある日、自分に魔法の才能があることを知る。そして、勇者として魔王討伐の旅に出る。


 ちょっといきなりな設定を追加したけど許して。説明の為だからね……。


 はい、それでは考えてみて。ここでロイのルールをもう一度見てみよう。



 1.ロイは、妹を絶対に見捨てない。なぜなら妹が何より大切だから。

 2.ロイは、妹を絶対に裏切らない。なぜなら妹に生きる希望を見出しているから。

 3.ロイは、妹の為ならどんな状況でも諦めない。なぜなら妹を生かすことが最優先だから。

 4.ロイは、最後の最後まで妹と生き残る方法を考える。なぜなら、妹と生きていきたいから。


 上のルールで妹を残して行くってロイが許すと思う?きっと命も惜しいだろうし「妹と村でひっそり暮らすぞ!」となる。だけど、それだと貴方のやりたい魔王討伐のストーリーにならないとする。


 それじゃあどうするかと言うと、以下の状況を追加してやればいい。


 A.魔王軍の進撃は周辺の街を襲った。このまま行くと妹のいる村も襲われるかもしれない。


 B.村には面倒見の良い村長家族がおり、彼らに預ければ妹は暮らしていける。


 他にもこんな状況↓

 C.世界中にばら撒かれた呪いによって妹が倒れてしまう。呪いを解く為には魔王を倒す必要がある。


 A &B、C &B、もしくはABC全部。これらの状況を追加してやればロイ君も旅に出られるんじゃなかろうか? これを無理矢理ロイ君ルールを無視して動かすと、読者にとってキャラクターは操り人形に見えてしまうというわけ。


 この状況追加は突然出すとご都合主義になったりするので、前話からチラチラ説明を入れたり、設定自体に追加したりする方がいいだろう。




 最後にまとめると


 ・キャラクターが勝手に動く現象の正体はストーリー展開がキャラクターの行動原理に違反し、キャラが展開を拒否した現象。


 ・行動原理=行動制限。これがない場合は、キャラクターの独自ルールを決めると良い。


 ・キャラクターをストーリー展開に向かわせたい場合は、キャラを動かすのではなく、状況を調整して、キャラクターがストーリー展開に向けて動きやすいようにしてやる。


 ということで今回はここまで。もし少しでもお役に立てれば幸いです。



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それでは良き創作ライフを。

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