2 さらわれた
青空に白煙を上げて祝砲が鳴る。
吉祥と占いで出た、春の佳き日だ。
いっとうきらびやかな
その
国境では東の大国、
花嫁の一隊は、行程の中ほどで砂漠に差し掛かった。
心配することはない。水も食料も十分に装備している。
ただ、空からの賊に関しては油断していた。
晴れていた空が突然、一転したのだ。
夕暮れより辺りは暗くなり、びゅうと強い風が吹いてきて、次に
それも、子供の
バラバラと氷の塊は砂地に散らばった。それは騎馬の足元に絡まり、固まる。いちばん先に馬が動けなくなった。次は人。まともに
「
侍女頭が、馬車から飛び出した。
あとに侍女たちも続いた。
オユンも馬車から駆け出て、
「
そこで本をうっちゃって、乙女の
「オユン!」
乙女は
しん、と辺りが急に静まり返った。
オユンは
不吉な、ゆらりとした影——。
そう思えたのは、黒雲のような毛皮帽子、黒い
(魔物——)
「――迎えに来た」
男の声が、頭の中に響いた。
オユンは、その背に
「約束だ」
男が右手を伸ばしてきた。
「――去れ!
オユンは抜いた懐剣を自分の胸元にひく。勢いをつけて、黒ずくめ男の
きん。
すさまじい反発にあい、うしろへすっ飛ばされる。はずが、男の右手がオユンの左手首を
「
オユンは、出せる限りの声で叫んだ。
「
男がオユンを引き寄せた。男の銀の髪が、オユンの肩に落ちてくる。
「おまえが
そうして、オユンを乱暴に振り向かせ覆いかぶさった。
その目、その
とたん、
「こういう場合、
男は、ドヤ顔だった。
オユンの
——何、言ってるの!
わたしは侍女だ!
その声は声にならなかった。
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