二〇二四年二月二一日
昼勤務の後に、と珍しい人からお誘いがあった。
自分たちはショッピングモール入り口にて待ち合わせ、徒歩圏内にある彼の推しカフェに向かった。
カフェではゆうこうという長崎県産柑橘を使用したサイダーをご馳走になった。彼に合わせてコーヒーを注文することも選択肢だったが、あえてガイドに備えたリサーチ費用を出してもらった。事情を話すと、彼は喜んで自分の経験談に耳を傾けてくれた。
当時自分は彼の仕事を深く理解していなかった。腹の底では戯言だと嘲笑されていたとしても、相槌を絶やさず聞いてくれたことが心底嬉しかった。どの枠でもない瀬谷知美として見てくれたことがこれほど心身が軽くなるものだと知らなかった。
一時間はあっという間に過ぎ、炭酸で全身の血流が巡りやすくなったように感じた。
帰り際、私の耳に爆弾が入ってきた。
「恋愛として好きなんですよね」
告白されたこと自体、滅多にないことだった。しかも、彼は最も真剣な告げ方だった。言葉に対する疑いも多少あったが、この心身の自分に対して少しでも好意を持っているということの方がはるかに驚くべきことだった。
自分は正直に、混乱していることを伝えた。彼は交際についてしっかり考えてほしい、返事を待つと応えてくれた。
結果として交際が始まるのだが、自分がショッピングモールの女になり切れないという確信が深まるだけだった。
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