ダイダルダルの木

舞寺文樹

ダイダルダルの木

 ズザー、ズザーと、ものすごい音を立てて雨が降っています。一面灰色の世界は本当に殺風景に見えました。御天道様はもう二週間ばかり顔を見せないものですから、すっかり人間たちは気鬱となってしまっていました。

「こりゃまた生乾きだねえ。ちょいと臭いのがまんしてな」

「母さん。こんなもん一日着てたら鼻ひんまがっちまうよ」

と、こんな具合なわけなのです。

 この時期御天道様の代替え役として抜擢されたのは、美しい紫のアジサイの花たちでした。灰色の世界に咲き乱れる、美しいアジサイはちょっぴり人間たちの生活に明るさを与えるのでした。

 そんな、紫の美しいアジサイの茎の根元の方から、それはそれは愉快なお歌が聴こえてくるのです。

「俺らの季節がやってきた。梅雨の季節がやってきた。煎餅湿気るし、海も大時気。ナメクジ、デンデン、万々歳」

 

 ナメクジ甲とナメクジ乙は家に帰る途中に、こんな話をするのでした。

「人間ってのは大変雨にはよわいねえ」

「そうだな、最近これっぽっちも人間を見ていないよ」

甲と乙はルンルンと家に帰ります。雨だとどちらも気分が良いようです。

「そーいえば街の美術館でフェルメール展やってるらしいんだよ」

「えぇ、こんな梅雨の時期に。こりゃあ絵が湿気らないか心配だねえ」

「きっと、真珠の耳飾りの少女も、牛乳を注ぐ女も、窓辺で手紙を読む女も、こんな雨空じゃすこぶる気分が悪いだろうねえ」

 と、そんな話をしていたら、ぴかーっと辺り一面明るくなったのです。御天道様が2週間ぶりにお顔を見せたのです。

「こりゃまいったね」

とナメクジ甲が言います。

「こりゃまいった」

とナメクジ乙も言います。

 

 人間たちは、死んだトンボを見つけたありんぼたちのように、家の戸から外へ出てきます。

「今朝の洗濯物、今しかないわよ!ほら!手伝いなさいよ!」

次々と竿に服がかけられ、運動会の万国旗のようになりました。ざわーざわーと稲の葉が擦れ合うその音に合わせて、洗濯物たちが踊り始めます。それはそれは、本当に愉快なものでした。

 しかし、その音もリズムも段々と激しくなりました。

「こりゃあまた人間たちはまいるね」

そうナメクジ乙が言います。

「こりゃあ、洗濯物干したのが帰って癪になるだろうねえ」

そうナメクジ甲も返します。

 

 ツンツンと、背中を何かが叩くのでふりかえりました。しかしそこには誰もいません。次は頭にツンと一つ何かが突いたので、空の方を見上げました。するといつのまに、さっきまで顔を覗かせていた御天道様はもうどこにもいませんでした。そして無数の水滴がポツポツと落ちてくるのでした。

「ちょっとー!また雨よー!洗濯物取り込むの手伝って!いいから一回ゲームやめなさいってば!」

案の定、癪に触っている様子です。

 

 ナメクジ甲と乙はまた、ルンルンと家に向かって歩きはじめました。

「なあ。あの遠くに見える、一本抜きんでた大木が見えるかい?」

ナメクジ甲がそう言うもんですから、ナメクジ乙もそちらをまじまじと見つめます。

「あのダイダルダルの木のことかい?」

「あぁ、そうだよ。ダイダルダルの木、君も知ってるのか」

「君のお父さんのお父さんが死んだところだろ?」

 ここから見えるエウダイ山の山頂にはダイダルダルの木と呼ばれる大木が遥か高くまで伸びています。ダイダルダルの木はいつも風のリズムに乗せて鼻歌を歌います。

「おれ、てっぺんにある金色のエフティヒアをこの目で見たいんだ。じいちゃんがが見れなかったあれさ」

ナメクジ甲がそう言います。ナメクジ甲の視線はあのエウダイ山のダイダルダルの木の方を向いていましたが、彼が見ているのはそれよりも遥かに遠くの何…かなような気がしました。

 

 ダイダルダルの木は鼻歌をやめました。そしてこっちを向いて少し悲しい顔をしました。小鳥たちが心配そうに周りを飛び回りますが、ダイダルダルの木の美しい鼻歌はからっきしその日から聴こえなくなりました。

「最近妙に静かだねえ」

ナメクジ乙はナメクジ甲にそう問います。

「ああ、本当に静かだねえ」

ナメクジ甲もそう答えます。

「君は、本当にあの木に登る気かい?」

ナメクジ乙はナメクジ甲にそう問います。

「ああ、登るさ」

ナメクジ甲はそう答えます。

 ナメクジ甲は、心に大きな何かをぶら下げながら、そしてそれに邪魔されたように口をゆっくりと開きました。

「おれ、明後日行くから。明日が君との会う最後の日かもしれない。だから、なんでも2人でしたいことを明日しようじゃないか。例えば、前から気になってたデンデンムシの娘に会いに行くとか、人間のキッチンに忍び込んで、こぼれたパン粉の一粒や二粒食らうのだってなかなかの至高じゃないか?」

前々から考えていたような、単調な言葉にナメクジ乙は苦笑した。

「君は君の父さんの父さんと同じってことなんだな」

そうナメクジ乙は言ってナメクジ甲に近寄った。

「君はあの金色のエフティヒアを見るんだろ?あの父さんの父さんが見れなかったエフティヒアを見るためにあの木に登るんだろ?」

「ああ、そうだよ」

「なら、生きて帰ってくるんだろ?君の言い方じゃ、いかにも死ぬみたいじゃないか」

ナメクジ乙はさらに続けます。

「もし明日が最後だなんて言うなら、僕はずっとお経を唱えるよ。君がちゃんと成仏するようにね。日蓮上人はさぞかし驚くだろうねえ。ナメクジが成仏しようと南無妙法蓮経だなんて唱えるんだからね」

ナメクジ甲は、沈黙してしまいました。そして、ナメクジ乙は笑いました。

「おいおい、そんなにへこたれるなって。ナメクジがだんまりしてたらカシューナッツと間違えられて酔っ払いに食われちまうよ」

「そんなに僕のことを馬鹿にして楽しいのかい?」

「いいや、違うさ。君が最初から死ぬ気なら行くなってことさ。もし本当に金色のエフティヒアを見て生きて帰るって言うなら。俺もついていくよ」

ナメクジ甲はゆっくり顔を上げてナメクジ乙を見ました。そのナメクジ甲の表情は見たことのないキノコを見つけた時みたいな表情でした。

 

 ナメクジ甲は地図を広げて、顔をしかめます。

「どうしたんだい。なんともまあ神妙な顔になってるよ」

ナメクジ乙がそう言うと、ナメクジ甲はクネクネと触覚を動かして、地図からナメクジ乙に視線を移します。

「どうも困った。あの通りに出るまでには、どの道が良いのか、僕には全く見当がつかないんだよ」

ナメクジ甲はどうやらどちらの道をゆくべきかを迷っているらしいのです。

ナメクジ乙は提案します。

「なら、あの隙間風の勝手口から家の中に入って、台所のシンクの脇をチョイチョイと抜けるのはどうだろう」

しかし、ナメクジ甲の顔は晴れません。

「あの家のご主人はどうも短気でね、常に憤怒という噂だよ」

「それは参ったな」

「ほら、あの裏の田んぼのイナゴ二郎、最近見ないだろ」

「あぁ、あの家の次男ちゃん?」

「あぁ、そうだ。あの二郎は、あの主人の世話になったらしくてね、甘からい佃煮にされて食われたという噂だよ」

 しばし沈黙が続きます。

「で、でも、僕たちは流石に食べないだろ」

ナメクジ乙はそう言いますが、ナメクジ甲は依然として、 下を向いたままです。

「人間ってのはな、俺たちが塩かけられると跡形もなく消えちまうことを知ってる唯一の生物だぜ。全く厄介な奴らだよ」

 ナメクジ乙はすっかり自信を無くしたような声でこんな提案をします。

「なら、家の脇の塀をつたっていくのはどうだい」

「あそこはカラスのギャングが多いと聞くよ」

 八方塞がりです。あのダイダルダルの木はあてしなく遠いのです。

 

 ナメクジの学校の護身術の授業の教科書をナメクジ乙は引っ張り出してきて、一時間ほど睨めっこをしていました。カラスというのは動体視力というのがとてもいいらしい。そんなことを言い始めたのはそれから時計の長針がぐるりと三六〇度回転してからのとこでした。さらにそこから九〇度長針が進むと、人間はおじさんが一番危険で気が荒い。しかし、おじさんの動体視力はカラスよりも随分と低いということもわかった。

「やっぱり裏の主人の隙を見てキッチンのところからすり抜けるのが正解な気がするよ」

ナメクジ乙はそう切り出しますがナメクジ甲はどうも顔が晴れません。モアイな顔を膨れっ面にしたような、苦虫を噛み潰したような表情をしています。

「俺たちの欠点は何かわかるか?」

 ナメクジ甲はそう尋ねます。

 「俺たちには殻がない?」

そうナメクジ乙は答えます。するとナメクジ甲は目を瞑りゆっくりと首を横にふります。

「あのな、カタツムリには殻があるかもしれないよ。けれどね、あんな殻は飾りに過ぎないんだよ」

「そんなことカタツムリに聞かれたらただじゃ置かれないだろうけどね」

「いや、確かにありんぼやらカマキリやらには意味はあるかもしれないよ。けれどね俺たちの相手ってのはね、あのイナゴ二郎をいとも簡単に佃煮にしてしまうような化け物だぜ」

「たしかに、殻があっても無くても、踏み潰されちまったら元も子もないな」

「正解はな、足が遅すぎるってことさ」

ナメクジ乙も確かにと首肯します。

 

 二匹で出た結論は明日の出発は自殺しにいくようなもの。しっかりもっと調査してから出発するべきだとしました。

 翌日、二匹は紫陽花の木に登ります。

「珍しいね、ナメクジがここまで来るなんて」

 出会い頭にカタツムリたけしがいいます。

「俺たち、あのダイダルダルの木に登ろうと思ってね」

「あのダイダルダルの木? なんだ、紫陽花の木で練習だなんて、無理があるだろ」

 カタツムリタケシはそう言い冷笑します。

「ちがうさ、あの向かいの家の主人がいるだろ、あの家のキッチンを通り抜けなきゃいけないんだ、だからあの主人が仕事に出かける時間を調べておこうと思ってね」

 なるほど、とカタツムリタケシは納得しましたが、やはりまだ本気には思っていないようで、二匹はモヤモヤとするのでした。

 一日の張り込み調査で判明したのは、主人は朝七時に家を出て、午後一時には帰宅するらしいということです。

「主人は随分と労働時間が短いみたいだね」

 ナメクジ甲は顔をしかめます。

「あぁ、あの主人はもう定年退職をしていると聞くよ」

「なるほど、シルバー人材派遣センターってことか」

「そうみたいだな」

 これは厄介なことになったと、2匹はまた困ってしまいました。

 というのもナメクジというのは一分間に一〇センチメートルしか進めないのです。つまり、一時間で六〇センチ、主人が家を空けている六時間の間で三六〇センチ、つまり三メートルと六〇センチしか進めないのです。キッチンの勝手口からシンク台を通り、冷蔵庫の脇を抜けて、換気口までは四メートルあるらしく、なかなかに厳しいことがわかりました。

「なあ、あの主人、土日は休みみたいだな」

「あぁ、そうみたいだな」

「なら金曜日にいくってのはどうだい?」

 ナメクジ甲はナメクジ乙にそう提案します。

「なんで金曜日なんだい?」

「金曜日なら主人はたいそう気分がいいだろうね。もしかしたら呑みの場に顔を出すかもしれないし、はたまた晩酌用の日本酒を街の酒屋まで買いに行くかもしれないよ」

「いやいや、もしそれで何も無く帰ってきたらどうするんだい」

「金曜日なんだ、気分がいいに決まってる。俺たちを見つけたとて塩をかけて殺してしまえなんて思わないさ」

「それは随分とギャンブルに出たもんだね」

「だってもうそうするしかないじゃないか……」

 

 

「なあ、今日でいいんだな?」

「あぁ、今日しかないよ」

 ナメクジ甲はそう言います。朝六時四五分ナメクジ甲と乙は勝手口の脇のところの鉢植えに登っていました。茎が延びできたアサガオがゆらゆらと初夏の朝風にみを委ねます。けれども、ナメクジ甲と乙の気持ちはもうゆらゆらと動きません。あのエウダイ山のダイダルダルの木に登るのです。そしてあのてっぺんからエフティヒアを見たいのです。

 主人は今頃玄関で靴べらをそっと靴に差し込んで、それからつま先を靴の中にスッと滑りこまして、そして踵を靴べらにそわしたところでした。

 その頃には勝手口の網戸の破れたところまで二匹は辿り着いていました。

「もう主人が忘れ物でもしていない限りキッチンには戻ってこない。もう入ろうか」

ナメクジ甲はそう乙に言います。

「あぁ、そうだな行こう」

二匹はとうとうそのキッチンに突入したのでした。

「まずはコンロのところまで登るぞ」

「床は危ないからな、そうしよう」

二匹は急いで勝手口の隙間からコンロへ登り始めます。ピカピカに磨かれたステンレスのキッチンに二本の真っ直ぐな線が描かれてゆきます。

 

 それからどれくらいの時間が経った頃でしょうか。ナメクジ二匹がコンロを過ぎ、作業台も過ぎ、シンクに差し掛かった時でした。軽トラの勇ましいエンジン音が近づいてくるのです。

「なあ、帰って来たんじゃないのか?」

 ナメクジ乙はどうやら気付いたようです。

「い、いや、まさか。だってまだ二メートルと少ししか進んでないよ」

 ナメクジ甲はどうか主人の帰宅ではないこと信じてそう言いますが、どうやらそれは間違いのようで、その軽トラは所定の位置に停車し、そして一歩また一歩と玄関の方へ進んでいきます。

「だいたいなんだよエウダイ山って、なんなんだよダイダルダルの木って、なんなんだよエフティヒアって」

ナメクジ乙はもう我慢の限界のようでナメクジ甲に捲し立て始めました。 

「だいたいお前の父さんの父さんもおかしいんだよ、あんな山のあんな木のてっぺんから何が見えるって言うんだよ。なあ、俺もついて行くとか言ったよ。少しは気になったよ。でも、死ぬんだったら今日も紫陽花の木下でのんびりうたた寝する方がいいじゃないか!だいたいさ、お前だって……」

 玄関の戸があき、主人が靴を脱ぎ始めたところでナメクジ乙は諦めたのかその口を閉じました。もうナメクジ甲は完全にナメクジ乙の捲し立ての餌食となって、ぽっかりと口を開けてアワアワと触覚を動かすだけなのでした。

 主人がキッチンの方へ進んできます。

「もうおしまいだな俺たち」

 カシューナッツ状態だったナメクジ甲がそう言います。

「辞世の句でも詠むか」

 ナメクジ乙ももう諦めてしまっているみたいです。

 ドアが空き、もう殆ど髪の毛も残っていないビールっパラの主人が現れます。両手には大量の酒と肉。ナメクジにはわかりませんが、今日は主人の有給休暇の日なのでした。

「よし、今日は午前中から呑むぞ」

 主人はそう独り言を呟き、お肉とビールを冷蔵庫にしまうのでした。まだ、彼らの存在には気づいていないようです。

「まずは朝飯の洗い物を片付けちまうか」

 主人は綿のシャツの袖をめいいっぱい捲り上げ、スポンジを握ります。そしてシンクに目をやると二匹のナメクジが震えているのでした。

「おいおい、イナゴの次はナメクジかあ、ったく困るねえ田舎の家は。虫にナメクジに、手が負えないよ」

 主人はそんなことをぐちぐち言いながら塩に手を伸ばすのでした。

 

「なあ、バレたよな絶対に」

「あぁ、バレたなこれは、」

「なあ、あの主人が持ってるのって……」

「あぁ、塩だな……」

 

 二匹はブルブルと震えながら身を寄せ合い、今までの思い出を振り返り、そしてありがとうを伝え、そしてとうとう死に行くという雰囲気になりました。なんだかもうここまで来るとナメクジ甲も乙も開き直り、笑みすら溢れます。

「なあ、あのナメクジ丙のやつ俺たちが塩で溶けて死んだって知ったらどうなるんだろうな」

「おそらく笑うだろうね。食われるわけでも無く干からびるわけでも無く、溶けるんだからね」

「だよな、死亡届に『被食死』でも『干死』でもなく、『溶死』って書かれるんだからな、役所のナメクジも思わず吹き出して、家に帰ったあとの話の肴になるだろうね」

 

 不思議と塩をかけられても痛くはありませんでした。ただただその小さくなって行く体を二匹は見届けるのでした。

「なあ、お前そんなに小さかったっけ」

 ナメクジ乙はそう言います。

「君こそ僕より小さくなっているじゃないか」

 ナメクジ甲もそう返します。

「力が入らないな」

「うん、もうこのシンクの壁に掴まるのは限界だね。もうあの水の張った茶碗に飛び込むのはどうだろうね。」

「あれが俺たちの水盃ってことにしようじゃないか」

 

「うわ、何しやがる。俺の茶碗が汚れちまう」

 主人は慌ててその茶碗をひっくり返し、蛇口を捻って彼らを排水溝に流してしまいました。

 もちろんナメクジの彼らは何が起こったのかさっぱりわかっていません。真っ暗なトンネルをただただ進むだけです。お互いの姿も見えないし、このまま死んでしまうのかもわかりません。けれどもナメクジ甲もナメクジ乙ももうエウダイ山のダイダルダルの木に登ってエフティヒアを見ることはもう無理だということは確信していたみたいです。

 

 後日談によりますとどうやら彼らは白い点がだんだんと大きくなって行くのを見たと言います。そしてそよ風の吹かれる草原へ行き、遠くではドンっドンっと何かが轟いていたとも話します。とりあえず彼らは助かったようですが、エウダイ山のダイダルダルの木からエフティヒアを見ることは叶わなかったようで、けれどももう二度と見ようとも思わないそうです。

 けれど彼らの事はナメクジの学術界隈で一目置かれ、ナメクジの学校の護身術の教科書に塩で攻撃されたら水に飛び込みなさいと追加されたのでした。

 

 ちなみに、主人というのは一年前に都会から引っ越してきて家庭菜園を始めたのでした。そこには不思議な木が生えています。その木にはスイカが実るのです。なぜかってそれは単純な事なのです。主人は家庭菜園がうまくいきませんでした。なのでもう放置しているらしいのです。歪な畝から生えてきたスイカは思うがままに蔓をのばし、しまいには柚子の木に巻きついてどんどんと上に登っていったのです。

 つまり、それらしいのです。ナメクジの界隈のエウダイ山というのは、その歪な畝なのです。

 つまり、それらしいのです。ナメクジ界隈のダイダルダルの木とは、スイカの実る柚子の木なのです。

 ではエフティヒアとはなんでしょう。登り切ったという達成感でしょうか。それとも優越感でしょうか。それともそこから花火でも見えるのでしょうか。

 それはいつかナメクジがそのエウダイ山のダイダルダル木に登り切った時に聞いてみることにしましょう。

 もし登り切ったナメクジが誕生すれば、またこのお話に続きがあると言うわけです。

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ダイダルダルの木 舞寺文樹 @maidera

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