第24話 気持ち
俺の部屋に新たに保坂さんの作品が増えた。
俺の現代文のノートを一枚勝手にちぎり、そしてそれを、細かく複雑に折って、俺が机に向かって絵を描いているところを再現をした紙の造形作品。
その完成度の高さに、勝手にノートをちぎられたことなどちっぽけに思えた。
改めて見ても何がどうなっているのかさっぱりわからない。たぶん、広げて折り目を見てもわからないだろう。
でも……。
机の上。
爪楊枝だけで建てられたお城と、絵を描く時の俺を一枚の紙だけで造形した作品。
見ているだけで嬉しさが込み上がってくる。
この気持ちはきっと、保坂さんから貰ったから、こんなにも嬉しいと思ってしまうんだ。
「スペース、空けておかないとな」
いつになるかわからないけど、俺がムキムキになった姿を紙でまた作ってくれると言ってくれた。しかも等身大。
そのためにも置けるスペースは確保しておかないと。
一応、机の横にスペースがあるので、そこに置こうとは思ってる。
いつしか俺の部屋が保坂さんの作品たちに占領されそうだな。
でも、それはそれで悪くない。むしろウェルカム。
だって、好きな人から貰う物は何でも嬉しいじゃん。
「……好きな人か……」
思えば、いつから保坂さんのこと気になり始めたんだろう。
初めて話しかけられた時?
初めて裸を見せた時?
初めて保坂さんのマイクロビキニ姿を見た時?
それとも、初めて抱きつかれた時……? でもあれは吊り橋効果を確かめるものだったからな。あと色仕掛け……。
まんまとハマったわけだ。
いつの間にか、俺は保坂さんのことが気になり始めていた。
これが好きという気持ちなんだろうな。
保坂さんが俺以外の裸を見たことがあるかのようなことを言った時、胸がざわざわした。
締め付けられるような、息苦しさを覚えた。
知らない男の裸を見る保坂さんを想像するだけで、胸が痛かった。
嫉妬、というやつなんだろう。
と言っても、保坂さんは俺のこと何とも思ってなさそうだしな。
恋をしてみたいと言って、その対象が俺になってるけど、そこに好きという感情は込められてないように思える。
たぶん、告白したら付き合えるんだろうけど……それは相思相愛ではなく、俺が一方的に好きなだけ。
それ、悲しくない?
というか、保坂さんを振り向かせるのって、もしかして絵を描くことより難しい?
「…………」
あ、そう言えば。
色々と思考していた時、ふと気づく。
保坂さんが俺のために作ってくれる予定の等身大の俺。置くスペースは確保したけど、問題はどうやって持って帰るか。
等身大だから大きいのはもちろんのこと、紙で出来ているから慎重に運ばないと壊れてしまう恐れがある。まず雨の日は持って帰れない。
「うーん……」
ホームセンターで台車買うか。
あとは倒れないようにするためのロープがいるな。できれば細いやつがいいか。
「まぁ、とりあえず天気予報は要チェックだな」
運んでる途中で雨が降ったら洒落にならない。何としても完全な状態で持ち帰りたいからな。
だって、保坂さんが俺のために作ってくれるんだから。
明日にでもホームセンターに寄って台車見てみるか。
明日の放課後の予定が決まったところで、ベッドに横になる。
リモコンで部屋の照明を消し、そっと目を閉じる。
そして気づいた時には意識は夢の中へと落ちていった。
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