秋猫シュガーの思い付き短編

秋猫シュガー

第1話・命令形の君

歩く街並み、行きかう人々、何度も歩いているせいか行違う人を見ると名前は知らないが知っている顔つきの人とかにすれ違う。

「でね、今日のテストいい点でね」

世界は広いと言われてはいるが、そんな感じは一切しなく、ただただ小さく感じる。

ネットではすごいことをしている奴もいる。

そんな奴を見て、俺は仕事して、お金貰って、生きている。

「あ、そういえば新しい商品入荷するんだった。コンビニ寄ろ!」

すごいことなんてしていないと思う。

自分がそう思っているだけかもしれないが、そう思ってしまうほどに失敗する。

けれどもたんたんと生きていく。

「プ・リ・ン!プ・リ・ン!」

まあ、それが一番楽でいいのかもしれない。

そんなことを思いつつ、隣を見る。

隣の彼女は今日のことを楽しそうに話している。

どうして彼女はこんな俺の隣にいるのだろう。

「そりゃ、あんたが彼氏だからでしょ」

この世界は分からないことだらけだ。

「あった!夏限定プリン!」

隣の彼女が何かを要求している、コンビニのケーキかプリンとかだろう。

「プリンって言ってたんだけど……聞いてないな。オイ」

さて、どれどれ……。

「コレコレ」

彼女が指差していたのは想定通りプリン。しかも、値段がその中でも高いやつ。

「限定品なんだから仕方ないでしょ」

遠慮のかけらもない、だがそれもいつも通り、俺は彼女の言うことに従う。

なぜ彼女の指示を聞いているのだったか、もう何年こうしていたかも覚えていない。多分五年は経ってない、はず。

「六年目よ、まったくもう」

何故か思っていることを当ててくる彼女。六年目らしい。

コンビニを出てまた歩き出す。

空を見ると夕焼けがきれいに輝いていた。

「明日は晴れそうね、明日は休みだし、どこか行こうよ」

大体のオレンジ色の空は建物に隠れているが……。

家に着く。彼女手も洗わずにソファーにくつろごうとするので、リビングへのルートを先に前に出て体で封鎖。「チェッ」初めは怒ってケンカしたっけ。今じゃもう抵抗すると押し倒されることがわかっているので、彼女はあきらめて手を洗いに行く。

ちなみに押し倒されるのは俺である。

「なんで押し倒されるのよ、もう少し筋肉つけなさいよ」

手を洗い、ソファーにくつろぐ彼女、次にいう言葉は分かっている。そう「茶を出せ」だ。

「なんで変なことだけ覚えているのよ……」

ほら見ろ、こっちは事前にキッチン待機してんだ。……勝った。

「そんなことで勝ち誇っちゃって、悲しくないの?……あ、泣いた」

ジト目で見ている彼女にお茶を渡し、一緒に飲む。

麦茶のいい味がする。

味の表現は苦手だ。

だって、人によって好き嫌い分かれる食べ物の味の表現を言ったって、第三者からしたら全く違うかもしれない。

だからそんなに細かいことは言わないようにしている。

「夕飯ってもう出来てるんだっけ、食べよ食べよ」

まあ、そんなこんなで彼女の言われたことを着々とこなしていき、夜は終わる。

ベットに横になり隣で一緒に横になってる彼女を見る。

「な、なによ……?」

そういえば、彼女に会ったのもこんな夜だったかな。

「そうね、私が人生いやになって夜の校舎から落ちようとしたらあんたが助けたのよね、どうしてあんた、あんなとこにいたのよ?」

本当に昔のことだからあいまいだな。

「覚えておきなさいよ」

もう夜の二時か、寝よ。

「そうね、ふぁぁ……」

明日も彼女の指示に従う日々。まぁ、なんでか苦にならないからいいけど。

そんなこと考えていたら睡魔がやってきた。

明日も、忙しくなる……ぞ……。

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秋猫シュガーの思い付き短編 秋猫シュガー @sikiaki22

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