第47話 その光は渾沌の属性を孕む

「それで、私はあんまり戦力にならないけど問題ないかな?」


 ゲイルの言葉に、俺は嘘でしょう流石に。と返した。

 だがゲイルは苦笑いして、それから。


「事実だよ事実。今の私は聖剣のリキャスト期間なのだから、必然的に必殺の一撃は打てない。加えてさっきまでの戦闘で魔力を使い果たしてしまってね。残念ながら暫くは役に立ちそうにない」


「?魔力は時間経過で回復するのでは?」


「それがさぁ。私はどうにも魔力回復が遅くてねぇ……もーやになっちゃうよ。せっかくかっこいいとこ見せるチャンスだと思ってたのにさぁ」


 そう言って肩を竦めたゲイル。その仕草の節々からは、確かに無理だよ〜と言わんばかりののんびりとした空気が漂っていた。


「……となると、アルトリウス様は戦えますか?と言うか戦えないと困るんですけど」

「無理ね。聖剣が無いもの」


 あんまりにも早くに返ってきたものだからびっくりしてしまった。えぇ?


「せ、聖剣がなくても流石に戦闘ぐらいは出来るような……」

「だから無理。私は聖剣がないと戦えないの。これはそういうによるものよ。"汝は聖剣のみを武器とし、それだけを振るうことでのみ戦いを行える"こういう誓約をだいぶ昔にしたのよ。まぁだからアンタ、頑張ってね」


 そう言って笑顔で肩をぽん、と叩く。

 アルトリウスもといヴィヴィアンの言葉に俺は改めて、速攻この国から出てやろうか?と思ってしまったのである。


「……ゲイルさん……武器を使った普通の戦闘ぐらいはできますか?と言うか出来てくださいね?!そうしないと僕の仕事が多すぎて手が足りませんから!」


「ンー、まぁやれるだけはやってみるさ少年。ちなみに自慢じゃあ無いが私の聖風魔法は魔物にしかほぼ効かないし、人にはそよ風ぐらいの火力しか出ないから。あと私聖剣がないと出力が大分下がってしまっててさ。だから正直普通に殴り合いとかでも負けるとと思うけど。頑張ってね!ネルラくーん!!」


 なるほどつまり全て自分任せと。

 そう言いたくなるような表情の女性陣二人を見ながら、俺は諦めた表情をした。


 まぁなんとかなる……のか?


 ◇◇◇◇



「……何とかなったわ」


 現在、王都を奪還する為に拠点を作る必要があったので近くの山賊の拠点を襲撃したのだが……。

 あまりにも脆かった。


 大の大人が軽く殴っただけで吹き飛び、さらには神聖魔法のビームが当たる度に何十人も吹き飛んで気絶していたし……。


 あれ?神聖魔法……人にもがっつり効いてるくね?


 そう、なぜだか知らないが神聖魔法セイクリッド・レイや、グローリア・レイを人に向けて放ったところふつーにぶっ飛んで気絶してしまっていた。


『 そりゃあそうよ、ネルラ。だって私の神聖魔法は……から。光のダメージは魔物に、闇のダメージは人に特効を持ってるのよ。そして私の属性は渾沌。つまりふたつの属性が混ざったものだから効くのよ。……(まぁ星の属性のダメージも入ってると思うけど)』


 成程。なんか行けるような気がする!


 そんな風に思考を停止させた方が気が楽なように感じたので、俺はしばらく思考を停止させることにした。

 まぁつまりあれだろう?前から来るやつら全員セイクリッド・レイぶち込めば死ぬ。ってことでしょ?楽勝!!







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