第46話 三者三様

 近くの小屋の中から途方もなく激しい音がして、暫くするとフラフラとした少年とツヤツヤしたふたりの女性が出てきた。

 げっそりとした少年にはもはや何も言うまい。


 少なくともこの現状について誰も何ひとつとして二人の女性を擁護することは出来ないだろう。

 と言うか時代が時代ならば事案だぞこれ。


 そんなこんなでげっそりとしたネルラ少年はそのまま小屋の近くの木の上で辺りを観察することにしたのであった。


 ◇


 最近なんつーかついてないなぁ、とふと思うことが増えたような気がする。

 特に女難がかなり悪いと思うのは気の所為だろうか?んなわけないどう考えても自分のと言うか、ネルラが持つ女難が酷すぎるって言わせて欲しい。


 既に身体中をまさぐられ、色々と屈辱を味わった後だからこそこう言える。


 "あまりにも虚しい"


 いやさ?普通ご褒美だろって言いたい人の話もよくわかる。だがな?あれなのよ。

 ご褒美って度が過ぎると毒なのよ。


「ネルラ様……ご安心ください!貴方様の肉体も当然ですが少しづつ良くなってます!具体的に言うならば、硬さと太さと感度を……」

「上げなくてよろしい。とりあえずそこは強化しなくていいので!」

「?硬さと太さ、それは必要だと私は思いますっ!」


 変に律儀なルクスなのである。


 ◇◇


 一方その頃、アルトリウスが去った王城は巨大なスライムのようなものに飲み込まれていた。

 何が起きているのかと言うと。


「やはり、私の考えに皆、賛同してくれたのですね!ひとつになること、それを!!」


 巨大なスライムの中では、ヴォーティガンによる民衆と騎士たちの洗脳が行われていた。

 最も洗脳をしている理由はただ一つ……からである。


「はい仰せのままに」


 騎士たちが次々とそんな言葉を唱え始めるのを見て、グィネヴィアはにっこりと微笑んだ。


「やはり力こそパワーなのですね。洗脳とはすなわちパワーによる意識の侵食っ!素晴らしく脳筋的なことだと思いませんか?ランスロット?」

「……俺はただ、この国の為に。裏切り者と蔑まれても構わない。そしてグィネヴィア、君は少し脳筋を隠した方が良いぞ。聖女が脳筋なのは流石に色々と不味い」

「あら、それは失礼。しかし部下からの報告によりますと、どうやらゲイルは逃げてしまったようですね」

「ふん、ゲイル程度すぐさま粛清出来ます。それよりも気がかりなのは……」

「えぇ、あの少年の事ね。私と同じ聖域を作れたというあの少年……」

「────もし、あの少年が我々に刃向かってきた場合あまり良い結果にならないと思ってしまうのですが」


 そういうとランスロット卿は静かに彼方を見た。


「ヴォーティガン様の宿願を叶えるために。許せよアルトリウス、お前は少し愚かすぎた」

「王様にしては馬鹿でしたからね。そのおかげで裏で様々な計画を立案でき、さらに実行まですぐに行えたのはそれこそ王様々ではありますけれどもね」


 そういうと静かにランスロットの目に手を当てるグィネヴィア。そして───


。眠りなさい?永遠に」


 糸が切れたように倒れ込むランスロット。それを抱き抱えながら、グィネヴィア……いや、グィネヴィア・モルガンはにんまりと笑みを浮かべた。


「ふふふ、助かりましたよ。ヴォーティガン。あなたの無謀な戦略のおかげで、私は早々にこの国を奪い取れたのですから」


 それは正しく悪女そのものである。


 ヴォーティガンとモルガン。二人の全く異なる思想を持った反逆者が異なる計画を同時に推し進めていたのである。


「……やっべぇな……ありゃ……」


 そしてここにももう一人。ヴォーティガンとモルガンの計画とは別に、国盗りをしようとしていた男がいた。


 その者の名は人呼んで、破滅の魔法使い。


 王様があまりにも頼りなかったが故に、3つもの反逆者が産まれてしまった聖剣の国。果たしてどうなってしまうのだろうか?


 少なくとも、この国の民たちからしたらたまったものでは無いことぐらいは誰だってわかるという話だ。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る