第44話 破滅シナリオはゆっくりと

 ひとつここまでで分かったことがあった。

 破滅フラグに関してだ。


 多分俺は最初の最初で破滅フラグを、それも特大の破滅フラグを踏んでしまっていたのだと。

 あぁ、皆まで言うな。要するところロブタという転生者を止められなかった時点で、特大の破滅フラグを踏んでしまっていたのだと言うことさね。


 ──最もなんとなくなのだが……この破滅フラグは……フラグな気がするんだが、気のせいだよね?


『 ───ネルラ君は相変わらず勘が良いわねぇ。そうよ、貴方がロブタと言う破滅フラグをスルーした時点でこの世界は遅かれ早かれ破滅するのよ。だってあのロブタという少年が手にしてしまったのはの魔剣なのよ?本来全てを破壊するための鍵として生み出された世界終末ワールドエンド用の女神様を、その真価を引き出せない奴が握ってるんだもの』


 そう言うと、ネルラの中でふわふわとしていたケイオスは呆れるように目を瞬かせた。


『 まー自業自得よね。本来貰うはずだったものを貰わなかった人も、貰うべきじゃなかった物を横取りした愚者も。総じて世界は破滅に向かう伏線となってしまっている───まぁこの子ネルラだけは守ってあげるけどね。お姉さんはだからね☆』


 そう、これは既に決まってしまった破滅シナリオをどうにかして阻止する物語でもあるのだ。

 破滅の刻はゆっくりと世界に広まっていく。


 アダマントウィッチによる世界同時爆発事故など生ぬるい、そう言えるほどの圧倒的な破滅シナリオが……ゆっくりと幕開けるのであった。



 ◇◇◇◇


 壮大な破滅フラグが幕開けていることなどあんまり考えたくなかったネルラは、ひとまず自分達の拠点を作ることにしたのであった。


「よぉし!ネルラと言ったな少年!!あそこのお城に拠点を構えるぞ!」


 昨日のあれから再び王様ロールを始めたヴィヴィアン。しかしそれをやめなさい!とネルラは必死に説得し、さらに目立つことをしないように注意したあと何とか文句を垂れるヴィヴィアンを引っ張って木の上に陣取ることにしたのであった。



「なんで木の上に?」

「普通に危ないからです。少なくとも周囲を常に見渡せるようにしておかないと、色々と危険が危ないので」

「危険が危ないのね、分かったわ!……じゃあ早速火を焚いて……」

「話聞いてた?ってか待って?木の上で火を焚くのはシンプルに馬鹿だろうがぁ?!普通に燃えるわ!あんた人殺ししたいんか?!ってかあんた炎を使うの禁止な!」


 既にやばそうな雰囲気が漂う中、ネルラは一人さっさとこの人を投げ飛ばして帰りたい。そんな気分になっていた。


「わ、私だって火の恐ろしさぐらい知ってるわよ!」

「ほんとに?」

「───私王様だったのよ?それぐらいしって……るわ!」


 なんで小学生でも知ってそうなことを躊躇った?

 というかコイツが王様で良くこの国破綻してなかった…………まさかゲームに聖剣の国の人が出てこない理由って既に破滅してたからとかそういうオチじゃねぇだろうな?!


 ありそうだなぁ……。しみじみそう思わずにはいられないネルラであった。




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