第42話 アルトリウスという偽名
つい先程、近くの川に芝刈に行ったところ……何故だか知らないけど人が流れてきたのだよ。うん、そしたらまさかの王様(元)だったって言うさ〜。
「いやどうしてっ!?どこを間違えたらそうなるんだよッ!」
叫ばずにはいられない。そもそも話を聞くにフツーにクーデターに巻き込まれてるじゃんかこの人……。
どう考えても生きてるってバレたらヤバいやつだし、せめてほとぼりが冷めるまで外の国にでも……。
「しかし困ったぞ。私の国だと言うのに、勝手に知らぬ男に奪われてしまうとはな。許せんな、すぐにでも取り返しに行かねば」
アルトリウスさんはそう言うとボロボロの体に鞭打って立ち上がろうとする。
「アホかアンタ!!待て待て落ち着け、あんたはさっきクーデターに巻き込まれてるんだぞ!?そんな感じなのに今行ったらもう間違いなく死ぬって!」
「──ふ、問題ない。あんな逆賊共如き、我が聖剣の錆にしてくれるわ」
「聖剣無いよ……現実見ようよ……」
「貴様の持っている聖剣があるだろう?貸せ。私が使ってやる」
「……あげませんよ?ってか人の聖剣って使えないでしょうが!?」
「───そうなのか?ううむ、ならばどうするべきだ!わからん!ふふ、自慢じゃあないが私はただ前から来たやつを叩き潰すのだけが取り柄と聖女には言われていてな。全くグィネヴィア!あやつが爆発に巻き込まれなければこんなことには……ううむ、そうと決まったらグィネヴィアを殴り飛ばさねばっ!」
あ、この人割と馬鹿だ。すぐにわかった。
「あの、落ち着いて、落ち着いてください。多分グィネヴィアさんはそのヴォーティガンとかいう人に洗脳されてしまっているんだと思いますよ?議会の人達や聖剣士も多分同じじゃないですか?」
「な、何いっ!そんな事ができるのか?!しかし私はなんとも無かったぞ?ははーん、さては貴様もそっち側の人間だな?私を欺こうったってそうはいかぬぞ?」
そういうなり拳を構え出すアルトリウス。もはや俺は呆れながらため息混じりに……。
「ほんとにそっち側だったら助けてないですって……」
そういった。
「な!確かにそうだな。すまぬな、私は昔から思い込みが激しくってな……にしても……はぁ、本当に私は王座を追放されたのだな。
───あーもーマジ無理!アタシが何したってのさ!」
そういったようだ。……ん?え?ん?
途中からナチュラルに口調が変化して、最終的にギャルになってしまったアルトリウスを見て、俺は顎が外れるかと思ってしまった。
◇◇◇
「はーないわ!有り体に言ってふざけてるわ!抗議よ抗議っ!勝手に私の王座を奪ったクソ野郎ども、全員軒並み裸にひん剥いて逆さ立ちさせて縄跳びさせてやるわー!!!」
……誰?どなた?さっきまでの王様は何処に?
「え、あ、あの?その……えっと、え?さ、さっきまでのアルトリウスさんと同一人物……でしょうか?」
「何を当たり前のことを聞いてるの貴方は。そもそもあたしはずっとこれよ?勿論素の話だけどね」
素があまりにも変わりすぎてて怖い。
「ちょっと?アタシの何処が怖いっての?こんな年相応の見た目の美少女はそこら辺探しても見つからないわよ?ふふん、むしろ感謝なさい?───アタシの素を知ってるのはゲイルと……グィネヴィアぐらいなのだから!」
そう言いながら、髪の毛を解いていくアルトリウス。その見た目はさっきまでの王様らしい感じから完全に変質し、ただの村の娘(お転婆じゃじゃ馬)な感じに変わっていた。
「あ、あの〜?アルトリウスさんは……」
「あーあんた、アルトリウスって呼ばないで?バレたら面倒だし……そうね、ヴィヴィアンって呼んで?私の本名だから」
そう言うと、さっきまでの金髪にいつの間にか水色の髪の毛が混じった女性は声高らかに答えた。
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