第40話 バタフライエフェクト

 ズドォォォォンン!!

 とても大きな、大きな爆発音が広々とした空の元に響き渡った。


 木々が少し軋み、揺れた音に驚いて魔物が慌てふためいていた。

 とはいえ別に誰かが魔法を放ったとか、そういう話じゃなかった。

 では一体何が?それはまあ、当事者というか被害者一号に聞いてみて欲しいかな。


 ◇◇◇



 やあ。俺だよ、ネルラだよ。

 なんか襲ってきた変なやつをボッコボコにした後、死体処理をゲイルさんに任せて散歩していたところ、目の前が急に光って爆発したよふざけんな。


 爆発する直前に、目の前にいた奴の見た目からおそらく何処かの誰かさんが【アダマントウィッチ】を間違えた方法で倒したことぐらいは原作知識のある俺にはすぐにわかったぜ。


 いや誰だよォマジでぇ……。

 ──アダマントウィッチはを受けると、転移からの即起爆とかいうクソムーブをかましてくる魔物なのだ。

 なので物理のみで倒す必要があるってのに……。


 まぁひょっとしたら新人冒険者とかが間違えて魔法で仕留めちゃったのカナ?……んな訳あるか。

 言っておくが、このアダマントウィッチは。


 と言う三拍子揃った魔物だ。

 並大抵の冒険者の攻撃でなんぞ傷一つつかないっての。それこそ主人公にとっては雑魚だけど、今のこの世界で倒せるとしたら────、


 それこそ聖剣士さんとか、あとは…………あー。


 そこまで言ってから、俺はふと納得した。

 なるほどなるほど、今回のこの爆発の原因は間違いなく────。


「あんのロブタのヤロゥゥウ!!!ふっっざけんな!お前原作知識あるはずだろうがぁぁ!!!なんでこの魔物を魔剣で斬り倒した!!?まさかとは思うけど、アイツ原作知識ほぼ無い?いやいや転生者だぞ?少なくともこの魔物を…………ん?待てよ、そういえばって……で行動してなかったか……?」


 俺の額を、だらだらと汗が流れた。嫌な予感がする。


 ◇◇◇


 ネルラの嫌な予感は実に正しかった。

 ロブタはそこにいた群れていた全てのアダマントウィッチを魔剣解放により仕留めたのだ。仕留めてしまったのだ。


 そして当然ながらアダマントウィッチは世界各地に転移し、起爆した。

 その数実に100体ほど。


 この日全世界で同時的に爆破事故が発生していた。

 ある国では、議会の真ん中で。

 ある国では国王が座ろうとした椅子の上で。

 ある国では天候を調整する道具の中に。

 ある国では優しい子供の眼前で。

 ある国では貴族の乗った馬車の中で。

 ある国とある国の会合の真っ只中で。

 伝説の魔獣の目の前で。

 そしてとある邪神の目の前で。


 綺麗に、爆発した。目の前にいたそれがどれだけか弱い子供であっても、怒らしてはならぬ魔獣であっても。

 破壊の神であっても。容赦なく爆発に巻き込んでしまったのだ。


 当事者であるロブタは知らなかったが、その日の爆破事故は色々な国に深い悔恨を残したのだ。


 こうして、ロブタの何も考えない無鉄砲かつ無知識から起こした最悪な厄災は…まぁ凄まじいものであったのだ。


「やったぜ!アダマントウィッチとか雑魚だった!数が多くてびっくりしたけど、上手く倒せて良かった!やっぱり魔剣は最強だな!!」



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