第28話 グローリア・レイ

「馬鹿なッ!──なぜこんな所にリヴァイアサンがいる!!」


 ゲイルはすぐにそれに気がついた。しかし残念な事に対抗する為の物を持ち合わせていなかった。

 いや持ち合わせてはいた。

 ──だが先程解放した際に全て出し切ってしまったのだ。

 故に自分には精々このガレオン船の飛行を手助けする程度の余力しか残っていない。


「ガウェイン卿!!もしくはシャルル卿でもいい!!あれをどかさないと────ッ!?なんだとこの反応は……!?」


 切羽詰まった状況に、さらに追い打ちをかけるが如く新たな魔物の魔力反応をゲイルは察知した。


 空から何百匹ものワイバーン、つまりは小型の竜種が襲いかかってきたのだ。


「ゲイル!こいつらは私が!───くそっ、聖剣解放後暫くはこの空間で聖剣解放が出来無いのがもどかしいッ!!焼き尽くせ焔よ!!聖炎を受けて消し炭となれ!!」


 すぐにガウェイン卿が反応して、それらを次々と撃ち落としていく。

 だがそれだけではなかった。


 リヴァイアサンの下から新たなクラーケンが現れ、船目掛けて再び触手を伸ばしてきたのだ。


「ッ!……あいつは私が!───風よ 水よ 炎よ 雷よ 氷よ 光よ 闇よ 毒よ 土よ 数多の力よ、我に手を貸したまえ!!」


 シャルルがすぐに魔法を放ち、足止めをしようとする。しかしシャルルはすぐに嫌そうな顔をする。


「最悪です、あの竜のせいで魔力が乱れて──ええい!ままよっ!」


 ゲイルはすぐに理解した。シャルルは全ての属性を使える女だ。しかしそれゆえ魔力操作にはかなり気を使わなくてはならない。

 だがあのリヴァイアサンの影響で魔力そのものが乱れきってしまっているのだろう。


 ──なぜここにいる、リヴァイアサン!!


 改めてゲイルはそう低く叫ぶのであった。


 ◇◇◇


 リヴァイアサン。それはゲーム【剣と魔法のイングリシア】において登場する魔物である。

 確かクエスト【水の竜】で登場するんだっけ?


 確かバミューダオクタグラム海域に生息し、そこを通りかかる船を沈めているみたいな話だったはず。

 一応プレイヤーはその場所に向かうことが出来なくもないのだがしかし。


 ──魔剣では太刀打ちできず、実質負けイベみたいな感じで流されていたはずだ。


 そもそも流れる海の中で戦うとか無理ゲーよ。しかも魔法に圧倒的な耐性を有していて、魔力を乱してくるおまけデバフ持ち。


 魔法プレイヤーは発狂してたし、魔剣士も皆海の中で戦えなくて死んでたっけ?


 まぁともかく、ソイツが目の前に現れた。


 いやどういうこと?

 とは思ったが、なぜだか分からないが別に負ける予感がしなかったのだ。


 俺はすぐに船から飛び上がり、ルクスに光を纏わせる。


 まずは目下のあの触手を処理しなければ。

 ルクスもすぐに対処しましょうと言ってくれた。

 ネルラくんも、まぁあまり乗り気では無かったが何とかこの場をくぐり抜けるために協力してくれるということらしい。


 俺はケイオスさんから供給される魔力をルクスの刀身に纏わせていく。

 してそれをさながらレーザーブレードのように引き伸ばして、触手目掛け振りまくる。


 空中だと言うのに、ネルラ君の肉体は驚く程思った通りの動きをしてくれる。


 ──1本

 ──2本

 ──3本!!


 次々と触手を切断していくルクス。クラーケンの触手ははっきり言ってぶっとい丸太のようなサイズと硬さをしていた。

 しかし光を纏わせたルクスを振ることで、あっという間に切り倒されて行く。


 その光景に少し驚きつつも、すぐに次の標的に狙いを定める。

 だがまだクラーケンは生きている。

 すぐに触手攻撃をしてくるだろう。


 だからクラーケンとリヴァイアサンの両方をまとめて倒す。


「───何をすれば倒せる?」


 多分だがルクスに光を纏わせた攻撃じゃリヴァイアサンには届かない。


 じゃああのセイクリッド・レイとかいう魔法を放つ?

 違うあれは一点突破に特化している。あれじゃあ下のクラーケンを倒せない。


 ……なら……?


 そんな俺に、ケイオスさんから使うべき魔法が届いた。


 そして俺は、それを放つ。




「───これは喝采を纏う祝詞なり。

 清純なる王冠は我らに道標を創るだろう。

 聖なる力よ、怨敵を討ち滅ぼす力を我に与え給え。──聖剣よ御心のままに



 ────神聖魔法・ グローリア───────」



 手の中に現れた光を俺は水面に叩きつける。水面の下、潜んでいたクラーケンはそれを受けてその肉体を瞬時に塵へと変える。


 そして着後にその光が手の中に槍の形として舞い戻ってくる。

 それを俺は手で掴むと…………回転させながら、リヴァイアサンの頭に狙いを定め───放つ。


「─────レイ!!!」


 俺の手を離れた光の槍は、あっという間にリヴァイアサンに死を贈りつけた。


 その日俺が使った魔法は、この世界に存在しないはずの魔法。

 すなわち、オリジナル魔法。


 神聖魔法グローリア・レイ

 それは光を手の中に回帰させて放つ神の投槍である。







 _________________________








 ちなみにこの魔法の元ネタは一応ありまして、というかその技そのまんま何ですけど……。


 ダンボール戦機に登場するエリュシオンっていうLBXの必殺ファンクションですね。

 そっちはグロリアスレイって言うんですけど、まぁかっこいいのでアニメとかで見て欲しいっすね。


 オーディンマークIIの時のもいいんですけど、エリュシオンの時の方がシンプルにいいと個人的に思ってます。


 以上ダンボール戦機世代の独り言でした。

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