第24話 神聖魔法

 魔法というものがある。

 ゲーム【剣と魔法のイングリシア】はタイトル通り魔法も重要なワードとして存在している。


 魔法は基本的に魔物や人間にダメージを与える為の技だ。

 だが正直なところ、魔物に大して魔法を打ってもあんまり効果が無い。

 例えば【デススクリームゾン】と呼ばれる魔法がある。

 属性【死】を持つ稀有な魔法で、死を纏った朱色の竜巻を生み出して攻撃するのだ。

 だがこの魔法、ゲーム内では伝説の魔法とか言われていたが、実際はクソザコナメクジである。


 なぜなら魔物は【死】の属性ダメージを受けても死ぬ訳じゃないからだ。

【死】が効くのは人間だけ。そう、魔物を倒すのがメインのゲームなのに何故か人にしか効果がない魔法なのだ。

 そして悲しいかな、その魔法はレベル99……つまりカンストの時に手に入る魔法なのだ。

 ──そりゃ魔法でプレイしてた人がブチギレるわけだ。


 他にも、これは有志の人が調べた事らしいが魔物に魔法を撃つとだいたい50%ほど威力が低下しているということらしい。

 なんで?と俺も当時思った。


 ちなみ開発者曰く『 魔法は人を殺す為の物!魔物を倒したければちゃんと魔剣使ってね!』だとさ。


 ◇◇◇


 そして俺がこのゲイルさんに聞かされたのは、についてだった。


 神聖魔法は、曰く魔法なのだとか。

 魔物に対しては、即死もしくは瀕死に簡単に出来るのだが……人に向けて放つと全く効果が無いと。


 ちなみ話の途中に俺に試しに撃ってみてもらったんだが、確かにダメージは無かった。


「この魔法があるからか、我々の国は人に弱くてね。なので祖先はなるべく人から離れるために離れた場所に国を作ったと言い伝えられている」


 なるほど。

「そして神聖魔法は、聖剣を神として崇めることで使えるようになるんだ。そこが特徴かな」


 祈る対象は聖剣なのか。


「まぁちなみに、聖剣についても話しておこうかな」


 ◇◇◇◇


 聖剣、それはだという。


 鞘の中に普段しまっており、そこに魔力を充填して置くのだとか。

 そして必要に応じて、聖剣を引き抜き、その中に溜まった魔力を解き放つのだと。


 その効果は絶大であり、切り札となり得るのだと。


 だがその代わり普段使いの性能は無いに等しく、それ故に聖剣使いは神聖魔法を用いて普段の魔物狩りをするのだと。


「私の聖剣はちなみにチャージ期間は3ヶ月となっている。その代わり馬鹿みたいな風を起こせるんだ。まあ普段は使わないんだがね」


 ゲイルさんはそういうと、にっこりと笑う。


「それで、神聖魔法はどうやって使うんですか?」


「ふむ、君に神聖魔法の適性があることはすぐにわかったが、何の属性なのだろうな。まあそれを確かめるためにも一度こう唱えてくれないか?」


 そういうと、ゲイルさんは俺にとある呪文を唱えさせた。


 ◇◇◇◇


「まずは、剣を神として祈って見てくれ」


 こうだろうか?俺はとりあえず自分の聖剣ケイオスさんに祈りを捧げてみる。

 すると、体の奥底から何かの魔力が溢れて来るのが分かった。


「そう、いい感じだ!……次は、神様として崇める聖剣に祈るんだ。──自分に道筋を教えてくださいと、ね」


 俺はすぐにケイオスに祈りを増やす。


 道筋を教えてくれ、そう言おうとして……

 道筋?違うよね、


 ───すぐに俺はケイオスさんの顔が浮かんでくる。

 ……光が見えた。光の先に冒涜的な光景が広がっている。


 光はまるで悪魔の囁きのように俺の前に浮き沈みする。

 灯火が揺らめく。魂を光が包み込む。


 そんな安心出来る光に俺は堕ちて行く。


【神はいつだって貴方の傍にあるのよ?だからほら、目を開けて私を受け入れなさい?】


 そんな声がした。何かを囁かれた。


 だから俺はゆっくりと目を開けて、それをただ


 ◇◇◇◇


「──【神聖魔法】〈セイクリッド・レイ〉────」


 その時、俺は上を向いていて良かった。そう思った。


 手の先から自分の体と同じぐらいのサイズの光の束が放射されたのだ。

 そしてそれは、船の上層部を……消し飛ばした。


 ───後には、ただ唖然とするゲイルさんの姿があるだけだった。


 俺は震える声で、つぶやく。


「───お、俺……なんかやっちゃいました」



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