第19話 五つの剣と国

 ケイオスさんが語り出したのは、この世界の国とそこにまつわる剣についてだった。


 ◇◇◇


 この国イングリシアはイングリシア大陸として存在する、【魔剣】と魔法の国である。


 そしてその隣にある海を跨いだ国が【聖剣】と神聖魔法の国である【ホルグレイシア】国。


 さらにそのホルグレイシアから海を跨いで進んだ先にあるのが、【魂剣】と気功術の国【ヒノモト】


 さらにそのヒノモトからかなり離れた場所にあるのが、【機剣】と機械工学の国【ノーザンリーズ】


 そしてそれらを全て見下ろす天空の島。人々とは相容れぬ神人が住まう土地。【神剣】と神域魔法の国【オリエンテ】


 これらがこの世界の概要である。

 五つの国と、五つの大陸。そして五つの剣と五つの特殊能力。


 ◇◇◇


「魔剣に、聖剣……魂剣こんけんに機剣、そして神剣……。そんなにこの世界には剣があるのか!?」


 俺はただびっくりするしか無かった。何故なら今言った魔剣以外の全ては……一度たりともゲーム内に登場した事がなかったからである。と言うかゲーム内でなんで他の国について説明が無かったんだよコレ!?明らか重要そうな案件じゃん!


「……ちなみにですが……」


 そう言うとケイオスが口を開き、それぞれの剣の特徴も交えて教えてくれた。


「まず魔剣、こちらは多分貴方様ならよくご存知かと思いますが……」


「ああ、あれだろ?……魔神の依代であり、魔物を殺すのに適した剣……って奴だよな?」


「……違います。まず魔神の依代では無くて、。次に魔物を殺すのに適したでは無く、です。そしてもう一つ……


 ?!???!?……えぇ?!どういう事ですか?


「ネルラ様、魔剣はその性質上ずっとエネルギーを放出していますよね?……それっていうのはつまり、無駄に蛇口を開けっ放しのタンクのような物な訳ですよ?……」


「なるほど、つまり無駄が多いから弱い……って事か?」


「そういう事です」


 ケイオスさんは頷く。

 と言うかゲームに出てこない情報多すぎやしませんかね?


「……じゃ、じゃあ聖剣ってのは?」


「聖剣は聖なる神の祝詞を宿した剣で、その特徴は……となっています。さらに特筆すべき点は……」


「点は……?」


を有している点ですね。その代わり人間に対しては全くダメージを与えられませんが。あと聖剣は基本的納刀しっぱなしですね」


 ……一撃必殺という言葉に俺は少しだけうずうずしたが、まあ黙って聞くことにした。


「次に魂剣。こちらはヒノモトという国で使用される片刃の剣……まあ俗に言う刀と言うやつです。こちらは魔物や神の魂を宿した剣であり、その特徴は……であると言う戦い方ですね。つまりこの国の人は基本自分の素手で殴りますね」


 ……剣士って何でしたっけ?


「そして機剣……こちらは、機構剣と呼ばれ、世界のシステムを冠する剣の事を指します。基本的にシステムを操る都合上、超越的な力を有しており、それ故に使うのに何ヶ月もかかるだけではなく、使う際にも何人もの承認が必要な面倒くさい剣です」


 システム……?それって果たして本当に剣ですか?


「最後に、神剣。コレは一言で言うならばです。これに選ばれた瞬間、その人は人ではなくなり……そして世界を天から眺める絶対なる神のひとりになります。……ちなみにここ1000年ほど一人もその国に行けた試しがないです」


 ◇◇◇


「そして私はと言いまして、が融合したものなのですよ……本当にって顔をしていますね?ではお見せいたしましょう」


 そういうとケイオスさんは自分の体を剣に変えた。


 黒く、そして白く。銀色と金色が捻れて結びつき、黒と赤の線が走っている。

 大きさは普通のブロードソードと何ら変わりないが、しかしその見た目といい色々とやばいとしか言えない見た目だった。


「ちなみに私を抜こうとすると、死にますよ?」


「……それはどうしてですか?」


「体ができてないからよ。……元々私は人に手渡されるものじゃないのよ?それを……貴方というイレギュラー……365柱の女神全てを無視した貴方という存在が面白そうだからという理由でただ私があなたの傍にいようと思ったからに他ならないわ。つまりあなたは運が良かったのよ? 」


 そういうと、魔剣の姿から戻って綺麗なお姉さん(シスターと言われても違いないと言えるそれ)になったケイオスさん。

 たゆんと揺れるそれを俺に押し当てながら、にっこりと笑う。

 なお俺はその谷間に溺れかけていた。


「……なるほど、こっちはやっとわかったけど……」


 どうにか谷間から逃れながら、俺はずっと俺を見てにっこり笑うルクスを見た。


「……こっちがよく分からないんだが?」


「私は私ですよ」


 なるほどわかんない。なんというかなんでそんなに好意を向けられているのかもさっぱりわかんない!


「あらぁ?知らないの?……じゃあ本人の口から喋って貰いましょうか?」


 そういうとルクスにケイオスが目配せをした。


「分かりました!私と主様のなりそめ、そして恋の道をゆっくりと説明いたしますね!」


 ◇◇◇◇◇


 ……聞き終えた俺は、ただ一言。


「君のおかげだったのか……俺の体がすぐに治っていたのは……」


 ただ、重すぎる愛情と共に……彼女に無意識に助けられていたことを知った。


「そうですよ!私がずっと支えてきたんですから!これからもずっとずっーと!支えていきますからね!愛しの愛しの主様!」







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