第13話 あ、死ぬかも
目を覚ましたら魔剣が無くなって……。
「……たりしないよねぇ知ってた!」
俺は目を覚ます。すると当然目の前には寝る前に見た魔剣が二つあった。
「はーついに嫌がらせもここまで来たか〜!……じゃねぇよ!ふざけんな!?」
先に言っておくが、魔剣は基本一人一つだ。というか主人公が魔剣を四本持てる理由ですら、魂が四つあるから……っていう話だしな……。
それを踏まえると……いや、待てよ?
そこまで考えてから俺はふと気がつく。
「俺二つ魂があるじゃん」
という事に。まあ要はネルラ君に転生した俺と、俺の中にあるネルラ君本来の魂というね。なーるほど、なるほどぉ?
訳の分からない現象に、ひとまず納得は出来た。
ので俺は魔剣を同時に掴むと、曇天のした……今にも崩れそうな空の下をダッシュして埋めに行く事にした。
ぬかるんだ粘土質の道は、舗装されておらず……それ故に俺は泥だらけになる事を覚悟で魔剣を捨てに行ったのだが。
──案外汚れなかったんだよねー、不思議な話なんですがね?
◇
「うへー帰ろー帰ろーあんなヤツ怖いって……」
埋めようと思っていた場所に魔犬がいた。ので俺は引き返してダンジョンに戻ろうとする。
やー怖いよあれ。なんか頭二つあるじゃん。と言うか俺、犬が怖いんだよね。昔噛みつかれてからトラウマが……うぐぐぐ思い出しただけで腕が痛く……。
だがダンジョンに戻ろうとすると、何やら人の気配を感じたので……俺はひとまず木の影に身を潜める。
何となく隠れた方がいい気がしたんだよね。
「……大魔法使い様っ!……こっちであっているのですか?」
「……あっている、はず。多分」
「た、多分って?!……調べてからにしましょうよぉ……ねえ?」
二人組の女の子が話をしている。片方は傘を持った黒髪の女の子と……もう片方は……長帽子の魔法使い?
近くで見ればひょっとしたら知ってるキャラかもしれない……とは思ったが……。
「──ルフ様ってば!!もー早く帰りましょうよォって!……こんな辺鄙な場所に魔剣士様なんているわけないですからぁ!!」
ふーん魔剣士を探してるんだ。魔剣……魔剣……。
俺は目の前に回転している魔剣と、地面と半分融合しかけている岩みたいな魔剣を見る。
……うん何か不味そう。もしかしてこれ……破滅フラグの前兆では?
俺はそう考えた途端、魔剣をさっさと手放す為にゆっくりとその場を立ち去ろうとして……。
「───あ?!」
滑った。ぬかるんだ粘土質の土は、俺の体を簡単に転倒させれるようだ。
だが流石はネルラ君。一瞬の内にバランスを取り戻して、直ぐさま立ち上がることが出来た。
「ふへ、危ねぇ怪我するとこ───」
だが……魔法使い達にはその音が聞こえてしまっていたらしい。
「?!誰っ!……まさか魔物っ!」
「下がっていて、ユイ!……雨の日にここまで接近してくるとは……多分こいつは賢い!」
え、いやあのー?
俺は慌てて弁明しようと飛び出そうとして、手に魔剣を持っていることを思い出した。
……まずい。魔剣を早急に捨てなければ……魔剣士だと思われる。
かと言って何もしなければ俺はあの魔法使いの攻撃の的にされてしまうかもしれない。知れないじゃなくてガチだよアレ?!
俺が呑気に魔剣を───とか考えている前に、魔法使いが杖を構え、魔法を唱え始める声が聞こえてきた。
「『 雷の化身、雷槍の権化よ……我が身我が名【リアン・ルフ】の何おいて命ずる。……我らが怨敵を……』」
まずい、色んな意味でまずい。……クソッタレ……しくった!!
俺はひとまず説明をする為に魔剣を……いやもう魔法が放たれるじゃんかよぉ!?少しは躊躇してくれって魔法使いさんよ!?
俺は必死に考える。考えた末、魔剣を空の彼方にほおり投げるという判断をした。
それが間違いか正しいのかは、俺には分からない。
「?!何か飛んでいきましたよ!?……せ、先生っ?!」
「魔剣?いや魔剣をほおり投げる奴が居るわけない。……あれはブラフだよ、ユイ……下がって……『
投げて飛び出そうとしてした俺に、雷が降り注ぐ。
「え────」
直前に俺は彼らの前に飛び出して誤解を解いてもらおうとする。しかし既に杖から放たれた雷魔法は……俺の肉体を綺麗に貫いた。
あ゙……やば、死──────
俺の意識はそこで深い闇の中に消えていった。
◇◇◇◇
「────不味いかも?!……ぁあ、まずいっ!」
「せ、先生……っ?!今、今のってただの男の子で……」
「黙って!……あぁ不味い不味い不味い不味いっ!!!」
私は慌ててその少年に駆け寄る。
「う、ひいっ!……か、身体が黒焦げ……」
「言わないでっ!嘘、嘘嘘っ!」
どうしよう、どうすれば?!不味い!?
私は焦っていた。先程魔物だと思って魔法を打ち込んだらまさかのただの男の子だった。
しかも魔力も無い、ただの本当に無害な一般人だ。
それに高位の魔法を打ち込んでしまった。おそらく即死……回復魔法でも蘇生は出来ないだろう。
どうする、どうすれば!
「あ、……」
「せ、先生っ?!」
「ぁ……あ、雨だったから……雷雨だったから、雷が落ちて……運悪く男の子が打たれてしまった!……そう言う事にしよう、そうだよね!ねぇ!ユイ!!」
「───は、はいっ!そ、そうです!私達の前で雷に打たれた少年がいた。それだけです!!私たちは何もしていません!」
私達は焦っていた。慌てていた。もしこの事が冒険者ギルドにバレてしまったら自分の大魔法使いという肩書きが没収される可能性もある事態だった。
そして慌てて焦っていたから、気が付かなかった。
「う……、ぅぅ……ん……」
目の前の少年がまだ生きているという事に。
◇◇◇
────アレ?、俺は死んだのか?
声が反響する。俺はどうやら何かの魔法を受けて死んだ……のか?
だが死後の世界にしては妙に現実的な気分だな?
「─────わ……た、…………ん、守ります……け、……い」
「頼……だ、……コレ……ひ、……つ……」
誰かが近くで喋って居るのだろうか?俺は疑問に思いながら、思いっきり持ち上げる。
──ん?口の中に何か……これは土?泥?
俺は埋められたのか?え、誰がなんのためにっ?
というか待ってくれ生き埋めとかシンプル怖い……だからさっきから暗いのかよ?!
俺は手元に掘るものが無いかと手探りで探すと……あった。
どうやら普段から持っていた剣を一緒に埋めてくれたようだ。
……俺は微かな動かせるスペースを利用して、思いっきりてこの原理で体を浮かせる。
すると────、
ボコォ!という音を立てて俺の視界に光が差し込んだ。
やっぱネルラ君の肉体バケモンだろ、体に乗せられた土を思いっきり持ち上げれたんだぜ?
「よぉし!無事に出れ……て……よか……」
「「─────────ひ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」
そしたら目の前で女の人が二人、抱き合いながら震えていた。
「………………え?」
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