第7話 ギルド登録
「はい、冒険者ギルドです!……あ、えっと?冒険者登録……ですか?分かりましたではこちらにどうぞ!」
案外何も無かった。近くのギルドスタッフに聞いたところいつもこんな感じだとの事で。
……なーんだ、杞憂だったかぁ。あぶねぇあぶねぇ、いや破滅フラグが怖すぎて疑心暗鬼になってるな俺。
とりあえず冒険者登録を済ませるために俺はのんびりと近くの椅子に腰掛ける。
冒険者ギルドはゲームにおいて、クエストの受注と報酬の受け取り場所となっていた。
俺は入って右にあるクエストボードを眺める。あれはゲーム内ではあそこからクエストの紙を引っぱがしてカウンターに持っていき、クエストが始まるといった仕様だ。
で、今見ていると何人かの人間が紙を引っぱがしてちゃんとカウンターに持って行っていた。なんとも不思議な感じがするなぁ、と俺は思ったよ。いやね?なんと言うか現代っ子にはあれはすっごい変な光景に見えちゃうんだよね〜。
ほらあれじゃん?最初からカウンターでクエストを受けれるようにすればいいのに。とかさ思っちゃう訳よ。
まあ実際は多分もっと複雑な意図があるんだろうとは思うけどね、少なくともゲームでは説明無かったからなぁ。
そんなふうに眺めていると、俺を呼ぶ声がカウンターの方向からしたので、そちらに向かって歩いていく。
◇
「お待たせしましたー!えっと、【クウネル・ネルラ】さんですね。あ、少し待ってくださいね?腕を出して…………はいっ、少し痛いですよ〜?」
ギルドのお姉さんは茶髪の長い髪をかき分けながら俺の手をがっちりと掴んだ。そして俺の腕に尖ったナイフを押し当てる。
「いっ……」
「はぁい我慢ですよ〜我慢我慢!……はいよく出来ましたね〜〜」
当然ながら俺の腕から血が流れる。それをギルドのお姉さんは金属製のプレートの上に流し込んだ。そして暫くするとそのプレートが薄青く光を放ち、そして────。
「はいお待たせしましたー。これが貴方のギルドカードですよ?……」
手渡されたのは新品のギルドカードだった。まあそれに使うことは知識として知ってはいたけれど、それにしても普通に怖かった。優しい顔してナイフを押し当てて来るのってやっぱ怖いって。
「あ、ありがとうございます?……それでお金とかって……」
「ふふふ、そんなものは頂くわけないでしょう?ギルドに登録するお金がない人も居ますからね……」
ちなみに何故お金を取られないのかと言うと、シンプルに人手不足だったり、新人育成の意味があるからである。
あ、勿論成人が登録しようとするとお金かかるよ?ただ12歳未満の子供には無償で作ってくれるんだよね。便利だね。
「それでは、ネルラ様。ここからは果てしない冒険の物語が幕を開けることになりますが……ぜひ、挫け無いように、諦め無いように……楽しんで冒険者の日々をお過ごしくださいませ」
そう言うとギルドのお姉さんは微笑んでくれた。可愛い。地方のお姉さんでこの可愛さとか、やっぱりギルド職員だけビジュ良過ぎるんだよな。
ちなみに王都にいるギルド職員さんはもうヤバすぎるほど美人だ。美人過ぎて攻略ルートが無いことをみんなキレてたっけ?
何はともあれ俺は冒険者となった。そうなったらまずやる事は勿論─────換金だ。
◇
「おう坊主。換金してくんか?……どれどれ素材見せてみぃ?…………ほー?ゴーレムの核の欠片ねぇ?……案外しっかりとした材質だし、割れてからあんまり時間も経ってねぇ。……ほぉんコレ坊主がやったのか?」
「あ、い、いえ……兄弟達と皆で協力して倒したんです……僕一人じゃダメでしたから」
俺は流れるように嘘をついた。何となくだけどここで"自分がやりました"と言うとフラグが成立してしまう予感がしたからね。
筋骨隆々なおっさんは、ちょび髭を撫でながら少し考えたあと────。
「よぉし、坊主。こんくらいでどうだ?……なぁに少しだけサービスしといてやっから……兄弟達をしっかり養ってやれよ?」
そう言って快く換金をしてくれた。その笑顔に俺の良心が少しだけ痛んだ。なんかすんません。
◇
手に入ったのは麻の袋に詰められた銅貨10枚だった。
ちなみにこのゲームは円の代わりに【白銀貨】【金貨】【銀貨】【銅貨】で統一されている。まあよくあるファンタジー作品らしい設定だよね。
で俺が貰った銅貨とは……まあ1枚100円ぐらいかな?
で銀貨は1枚1000円、金貨は1枚10万円、白銀貨は1枚100万円だ。え?レートおかしくねって?いやまあリアル金貨だからそんぐらなんじゃね?知らんけど。
まあだから今回貰ったのは1000円と。
んー渋いっ。おまけで貰った分を合わせても1500円分と。……まあとりあえず今日明日の食料は買えるかな?多分。
俺は心もとない懐を触りながら買い物を始めるのだった。
◇
…………高かった。思ってたより高くてびびった。いや田舎の、郊外の町外れのお店まで巡ったけど……それでも高かった。
一応干し肉を5きれ買うことは出来た。あとは水を貯める瓶を買ったら全てお金が無くなったよ。まあゴーレムをまた倒せば良いだけですし、心配することはないか?……。
俺は本当にカラッカラになった懐を悲しく撫でながらダンジョンへと戻るのであった。ちなみに帰りは結構全速力でダッシュしたので割とすぐに着いたよ。
◇
ダンジョン内に戻ると、既にリポップしたゴーレム君がこちらを眺めていた。
俺はとりあえず買った干し肉をかじり道中で汲んだ水……まああんまり綺麗とは言い難いが、それを喉に流し込みながら食べる。
……ぅぅ、虚しさが勝つよこの味。塩味の効いていないビーフジャーキー……腹は殆ど膨れ無いけど……でもまあ?ないよりはましッ!
そう言いながら俺は硬い肉を必死に噛み切ることに全力を注ぐのであった。
◇◇
あの後食後の運動がてらにゴーレム君を一度ぶっ倒して、素材を回収し……そして寝床に横になる。
「とりあえず……今日餓死してしまうのは避けれたけど……はーあ。……怠惰とは暫くは程遠くなりそうだなぁ……卵焼き食べたい、たこ焼き食べたい……ぅぅ、想像するとまたお腹が減ってしまう……明日は二度寝しないようにしよう!……朝から動かないと金が足りないもんね……」
俺は悲しくなったので、何も考えないように……ゆっくりと目を閉じるのであった。
◇◇
次の日の朝、俺は目を覚ました。そして……隣に置いてある魔剣を見た。触った。魔剣だった。
────俺は二度寝した。
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