第7話 求める人材
海理ちゃんに置いていかれ、楠木坂さんと別れたあと。
私は、図書室に向かっていました。何故かって言うと。
私が探している子……2年生の一条月夜ちゃんは、だいたい図書室にいるから。
私は、中学校では吹奏楽部でクラリネットをしていたんですよね。さすがに吹奏楽部にヴァイオリンはなかったので。せっかくだから管楽器をやってみようと思って、クラリネットに入ったんです。そんな私が2年生になった時に入ってきたのが月夜ちゃんでした。
月夜ちゃんは小学生の頃からクラリネットをやっているらしくて、入った時から凄く上手でした。先輩よりも上手いから、みんなは生意気だなんて言っていたけど、私は月夜ちゃんに教わるのが大好きでした。というよりかは、月夜ちゃんが大好きでした。月夜ちゃんも私と同じ、音楽に人生を捧げる覚悟を持つ人だから。
そんな月夜ちゃんなら、海理ちゃんの求める人物像にピッタリだと思うし、なにより私が月夜ちゃんとアイドルをやりたいと思ったから、月夜ちゃんを誘うことにしました。
っと……そんなことを考えていたら、いつの間にか図書室に着きました。中にいる人の迷惑にならないよう、そっと扉を開けると。
奥にある机に腰掛けて本を読んでいる少女がいました。そう、彼女こそ、私の探している月夜ちゃんです。人が入ってきたことにも気付かず、熱心に本を読んでいます。
というか、机に座っちゃいけませんよ……椅子に座りましょうね。
「月夜ちゃん、こんにちは」
私が声をかけると、「うわっ」と声を上げ、飛び上がった月夜ちゃん。あ、ごめんなさい……
そして月夜ちゃんは私の方を向くと、すっと机から降りて言いました。
「お久しぶりです、月椿先輩。どうしたんですか」
「お久しぶりです、月夜ちゃん。今日は私、月夜ちゃんに話があってきたんです。今、お暇ですか?」
私が言うと、月夜ちゃんは「あ、ちょっと待ってください」と言い、本を本棚に戻しに行きました。
そして私の所へ戻ってくると、「暇になりました。どうぞ」と言いました。
「お言葉に甘えて、お話ししますね。月夜ちゃん、確か月夜ちゃんは部活やってないですよね。私たちと一緒に新しく部活をしてみませんか?」
と私は言います。すると、「別にいいですけど…何の部活なんですか?」と言った月夜ちゃん。
なんだか、説明するのが少し恥ずかしいですけど……
「アイドル、です。月夜ちゃん、私たちと一緒に、ハイドラに出てくれませんか?」
と私が言うと。月夜ちゃんは、目をパチパチさせて、「え?」と言いました。
「アイドルです」
と私がもう一度言うと。
「え……マジか……月椿先輩が……!?」
となにやら呟いていましたが、私の方を向き、言いました。
「誰に誘われたんですか!?」
と言いました。
うーん、誘われた前提……ま、誘われたんですけど。
「お友達の、矢島海理ちゃんです」
と私が言うと、「矢島海理……あとで色々言ってやる……」なんてボソボソ言っていました。乱暴なことをしたらダメですよ?
「月椿先輩」
突然、月夜ちゃんが言いました。
びっくりした私が「え?あ、乱暴なことはダメですよ?」
と言うと、「そうじゃなくて」と言い、月夜ちゃんは大きく息を吸いました。そして、私を見て、
「私も、やります。他でもない月椿先輩が誘ってくれたから。全然アイドルって柄じゃないけど、それでもいいんだったらやります」
と言ってくれました。
え?今の、聞き間違いじゃないですよね?やってくれるって言いましたよね?
「月夜ちゃん……!ありがとうございます!嬉しいです!」
私が月夜ちゃんに抱きつきながら言うと、月夜ちゃんは少し困った顔をしていましたが。
「とりあえず、海理ちゃんのところに行きましょう!話はそれからです」
私はそう言い、月夜ちゃんの手をそっと握って歩き出しました。
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