第6話 嬉しい新加入
えーっと……ヤバい、どこだっけ……
あたしは、2年生の廊下で右往左往していた。
ひーみん、どこのクラスだっけ。4組もあると忘れるんだよ。こりゃ、ひーみんの部活に行った方が早いかなぁ……
ていうか、そうだよ!よく考えたら、ひーみんって部活入ってるじゃん!確かジャズバンド部。部活入ってんのに誘っていいのかなぁ?
「あー、どーしよー……」
とあたしが呟いていると。
「あっ、海理サン、お久しぶりっす。どうしたんすか?」
後ろからポンと肩を叩かれ、聞きなれた声がした。
もしかして……!
「ひーみん!」
そう、あたしの後ろに立っていたのはひーみんこと片岡瞳美ちゃんだった。ひーみんは中学時代、吹奏楽部であたしの後輩だったのだ。
「どーもひーみんです。どうしたんすか、2年生の廊下で」
ひーみんがあたしを不思議そうに見る。そりゃそうだ。普通、他学年の廊下には行かないだろうから。
「あのさ、ひーみん。あたし、ひーみんに用事があって来たんだよね」
改まって言うあたしを見て、ひーみんな少し背筋を伸ばして問う。
「はい、なんすか」
真面目な顔をするひーみんに、あたしはドキドキしながら言った。
「あのさ、ひーみん。あたしと一緒に、ハイドラに出ない?」
痛いほどの静寂、そして……
「ええっ!?」
ひーみんの心から驚いた声が、あたしたち以外誰もいない廊下に響き渡った。
とりあえずあたしはひーみんのクラスの教室で、ひーみんが落ち着くのを待った。
「で、いきなりどうしたんすか……」
やっとこさ落ち着いたひーみんが、少し疲れた顔で問うので、あたしは答えた。
「あたしね、ハイドラに出ようと思ってるんだ。月椿と友弥と一緒に」
月椿と友弥の名前を聞いた瞬間、ひーみんの目が見開かれた。
ん?なんかあった?
「つ、月椿って……まさかあの『ヴァイオリンの天使』姫里月椿先輩っすか?そんでもって、友弥って、あの女子人気の高い超イケメンギタリスト女子の楠木坂友弥先輩っすか!?」
なに、その変なあだ名……月椿、下級生には『ヴァイオリンの天使』なんて呼ばれてんだね。そしてイケメンと女子は反対の言葉じゃないの?
「うん、そうだけど……それがどうかした?」
とあたしが言うと、ひーみんはすごい勢いで話し出した。
「そりゃもう!あの2人は知らない人はいないって言われるくらい有名な人っすよ」
おー……
まあ、それはいいとして……
「でね。部活を作るのに4人以上必要でしょ?だから、それぞれ誰か1人ずつ連れてこようってことになって。それならあたしはひーみんを連れていきたいなって思ったんだ。ひーみんはあたしが知る中で誰よりも音楽が好きだから」
あたしの言葉を黙って聞くひーみん。
「まあ、ひーみんは部活があるから、断ってもらってもだいじょう」
大丈夫、と言いかけたあたしを遮り、ひーみんは言ってくれた。
「いいっすよ。アタシもアイドルとか楽しそうだなって思うし。部活は結構部員いるから、アタシ1人くらい抜けてもどうにかなるし。なにより、海理サンが誘ってくれて、その理由が、誰よりも音楽が好きだからっていうのが、サイコーに嬉しいっす!」
ひーみん……
「ありがとう、ひーみん!」
あたしが思い切り抱きつくと、「わわっ」と言いながらもあたしを抱きとめてくれるひーみん。
あたし、良い後輩を持ったな。
今更だけど、なんかそんなふうに思えた。
「よっしゃひーみん、月椿と友弥のところに行こう!」
そう言い、あたしはひーみんの手をとり、走り出した。
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