第5話 メンバー探し!

昼休みに色々あって、なぜか海理と姫里さんと共にアイドルを始めることになった私、楠木坂友弥は、ただいま教室で二人を待っている。


いや、なんでさ!急展開にも程があるよ!?

というか私、海理とは仲良いけど、姫里さんとそんなに話したことないよ。むしろなんで姫里さんはOKしたの?


姫里さんは、学業では学年トップの成績で、バイオリン専攻の先生から大絶賛される腕前をもつ秀才。父親は超有名楽団の指揮者で、母親は日本の中でも指折りのオペラ歌手という、音楽に愛された存在。基本誰にでも敬語で話す、麗しいお嬢様……


らしい。私も噂でしか聞いたことないけど。

だから、海理がそんな有名人と仲良しっていうのは驚いたなぁ。


っと。そんなことを考えていたら、廊下の方から二人分の足音が聞こえてきた。

あ、来たかな?


ガラッ!

大きな音を立てて扉を開けたのは、海理だった。そして、海理の隣には、苦い顔をした姫里さんが立っている。


「海理ちゃん…もうちょっと静かに開けてくださいませ」


「あっ、ごめんごめん!友弥、やっほー!」


文句を言う姫里さんと海理に手を振り、「テキトーに座ってー」と声をかける。


二人が私のそばの椅子に座った瞬間、海理が話し出した。


「あのねあのね、メンバーを探したいの!部活作るのってさ、四人以上いるじゃん?だから一人ずつ誰か連れてくればいけるんじゃね!?て思って!」


ん?もうちょっと丁寧に説明して?

そんな私のリクエストに応えるかのように、今日も絶好調の海理のマシンガントークにはぁ、と溜息をついて言った。


「あのですね。ハイドラに出るには学校の承認が必要でしょう?でも、部活ですらない活動なんて、理事長が認めてくれないと思うんです。だから、最低でもあと一人集めて、部活を作ろうという話になったんですね。でも、張り紙をしても来てくれるかどうかわからないから、いっそのこと、三人がそれぞれ知り合いを連れてくればいいのではないかと思いまして。で、今ここでその話をしたってことです」


あー、なるほどね。状況は理解した。

けどさ、


「私、この学校に知り合い居ないけど」


いや、同学年にはいるよ?けど、同学年でやってくれそうな人はいないというか、私と寮で同じ部屋の美優は外部受験するー!って言ってたからやる暇ないだろうな……だし、うちは共学とはいえ男子校舎・女子校舎って分かれてるから、男子とは接点がない。


つまり、詰み……?

なんて思ってたら。海理が満面の笑みで言った。


「大丈夫、友弥なら誰とでもすぐに仲良くなれるってー!」


簡単に言ってくれるなあ。

ん、ちょっと気になったんだけどさ、


「二人は誰かアテあるの?」


というのも、うちは数少ない音高だから、結構いろんな県から人が来てる。だから、部活に所属してないと縦の繋がりが作りにくいんだよね。


「あ、あたしは中学時代の後輩ちゃんに声かけるよー!」


と海理。すると、姫里さんも


「私もです。中学の時、同じ吹部だった子に声をかけようかなと思っています」


へー。


「ちなみにその子って何年なの?」


と私が聞くと、「二年ー!」「二年生です」と二人は答えた。


んー、二人とも二年生かー……なら、私は……


「グループの学年のバランスとかも考えると、一年生もいた方がいいだろうし、私一年生のとこに行ってくるわ」


うん、そうしよう。まだ残ってる人がいるかわかんないけどね。

私の言葉に姫里さんが頷く隣で、海理は立ち上がり、


「りょーかーい!なら、善は急げってことで、それぞれ行こう!OKしてもらえたら合流ってことで!」


と言い、あっという間に教室を出ていってしまった。


「え……ちょっと、どこで合流すんのさ……」


と私が呟くと、


「ほんと、そうですよね」


と姫里さんがくすくす笑いながら言った。なんか、少しずつ距離を縮められてるかな?まあとりあえず、


「私らも行こっか。合流はこの教室でいいでしょ、誰もいないし」


と私は言い、姫里さんと共に教室を出ていった。

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