第26話 一部完

「メロは見てないのか?動物のゾンビ」


「うちも見てないな」


 酔っぱらってたときはあんなに饒舌だったのに。


「お兄ちゃん」


 美咲の右手がそっと太ももに置かれた。なんとなく理由を聞くのは憚れて、無言のまま運転を続けていた。


「2人ともめっちゃ仲いいよね。連れにも兄妹いたけど、そこまでベタベタしてなかったし」


「そう?私とお兄ちゃんはこれが普通だよ」


「ふーん、変わってるね」


「そうかな、私たちからしたら兄妹なのに仲が悪い方が変だよ」


「おっ看板みっけ」


 俺は前方を指さした。そこには立て看板があり、写真で見ていたものと全く同じものだった。


「あの矢印を目指していけばよさそうだね」


 舗装されていないあぜ道にハンドルをきる。かなり揺れが酷い。タイヤがパンクしたらどうしようかと、ヒヤヒヤしながら慎重に進む。田んぼを抜けると山が見えてくる。ふもとまでいけば、車一台がギリギリ通れるくらいの山道が続いている。


「ここを通るのか」


「……みたいだね」


「見たがってた動物のゾンビも見れるかもね。熊とか鹿とか」


「縁起でもないことを言うなよ」


 エンジンが大きな音を立てる。かなり急斜面で、横は崖のようになっている。落ちればひとたまりもない。


 どうにかして進んでいくうちに、塀が見える。かなり高く、簡単によじ登れそうにない。有刺鉄線まであって、かなり物々しい雰囲気だった。


「ここで合ってるんだよね」


 近づいていくにつれて、緊張した空気が流れる。いまから行くところは、もしかしたら、自衛隊ではなく、別のやばい奴のアジトかもしれない。そろそろ出入口付近まで来たときに、迷彩服を着て、自動小銃を持った人を見つけた。


「そこで止まれ!」


 指示された通りに車を停め、エンジンを切る。ドアを開けて車から降りた。


「看板を見てきました。敵意はありません」


 初めて本物の銃を向けられたものの何故か恐怖心をあまり感じない。メロや美咲は俺の背後に隠れている。


「わかった。車の中を点検する。中に入るのはそのあとだ。あと、嚙まれたものはいないな」


「はい、全員感染していません」


「よし。おい、誰か女性を呼んできてくれ。念のため、確認させてもらうぞ」


「わかりました」


 門の奥には複数の人の気配を感じる。そして、テントや農業をしているのか、農作業をしている人さえもいた。この施設の中には長期的に生活できる環境があるらしい。万が一を想像していたが杞憂に終わったようだった。


「ねぇ、うちとあんたの関係ってみんなにどう説明した方がいいかな?」


「えっそれってどういう」


「助けてもらったお礼になんでもするって約束させられたとか。実際にそういうこともあったしね」


 俺はさっきあった自衛隊員に身体を確認されながら、メロの言葉を考えていた。どうやら、落ち着く暇を与えてはくれないらしい。ガチャのこともある。ここで生活しているだけでは、ゾンビを殺すことはできない。クリスタルが集まらなければ、ガチャを引けない。もしかしたら、このゾンビに溢れた世界を解決するためのアイテムもあるかもしれないのに、ただ悠々自適に暮らしていくだけではだめそうだ。




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ゾンビを狩ってガチャを引く!?社畜の俺が生き延びるためのサバイバル戦略 UFOのソース味 @kanisan

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