第18話
順調に車を走らせていると次第に戸建てばかり目に入るようになる。そのほとんどが駐車場付きの一軒家で、ここら辺まで来ると車がないと不便なのだろう。たまにバス停も見かけるが、その間隔は遠く使い勝手はあまり良くなさそうだった。
そうして、ショッピングモール、建設予定地の広大な空き地に、農地も見かける。まさしく大阪の片田舎といった様子だった。
思い出したように通行人も認める。それは人なのか、ゾンビなのか、確かめようもないが、特に気に留めることなく、そのまま通り過ぎていった。もし、それがゾンビなのだとしたら、身体が腐り果てるまで歩き続けるのだろうか。そうなのだとしたら地獄のように思う。いや、そもそもゾンビに意識はあるのか、魂は、肉の塊が徘徊しているだけなのだとしたら、本人にとってそれはどうでもいいことなのかもしれない。
ヘッドライトをつける。休憩せず運転し続けていたため、そろそろ腰の痛みも限界を迎えそうだった。
「どこかに、ホテルとかあればいいんだけど」
メロも美咲も眠っているため、無意識に独り言になってしまう。
田舎のホテルといえばそういった目的のホテル以外に見たことがない。期待感に胸を膨らませる。音楽でも流したい気分だったが起こしてしまってもしょうがないので、ウィンドウを少し下げた。普段ではあまり聞くことのない、名も知らない虫の音、鳥の鳴き声、毎日聴いてたら嫌になってしまいそうだ。けれど、アスファルトとコンクリートに囲まれた街では珍しいものだった。
「最後に虫を見たのは、難波で見たゴキブリくらいだったな」
『愛と平和』というホテルを認めた。宗教施設かとも思ったが、ピンク色の看板に駐車場入り口の垂れ幕、そういった目的の元に作られたとしか考えようのないコンセプトの建物だった。
「そろそろ休憩にしよう」
駐車場に車を停める。一台黒のクラウンが止まっている。その横につけた。
「ついたの?」
メロは大きな欠伸をしながら背伸びをした。胸や剥き出しになった脇に目が移ってしまう。男の性といったもので興味がなくても、自動的に見てしまう。メロはわかっているのか、いないのか、気にしていない素ぶりで車を降りる。
「まだ、目的地まで遠いから、とりあえず休憩しようかなって思って、このホテルにした。とりあえず、ゾンビがいたら不味いから、道具だけ持っていくか」
俺はバットを構え、美咲は包丁、メロはトンカチを持っている。
「よく、トンカチなんてもってたね」
「元彼が現場だったから」
「なるほど、じゃあいこっか」
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