第14話

 散乱しているガラスの破片を踏み締める。まだ電気は通っているため、冷房が効いており、汗が冷えて少し身震いをした。周囲にはゾンビ、人間ともにいないようだが、念の為、レジ裏やバックヤード、棚の間など、隠れていないか確認していく。それでも誰か隠れていてもおかしくはなかったが無人だった。店内は荒れてはいるものの、まだ一部の食料は残っている。持ってきていたエコバッグに、カップ麺などの消費期限の長いものから順番に放り込んでいく。


「お兄ちゃん、これも持って帰っていい?」


「いいよ」


 美咲はばつが悪そうにポテトチップスやスナック菓子を詰めていく。


 エコバックが2袋分一杯になったところで、ほとんどの食料は取り尽くしてしまった。当分は足りるかもしれないけど、もう少し栄養のあるものも欲しい。美咲も同じ考えに至っていたのか、一緒のタイミングで目が合った。


「ちょっといったところにスーパーもあるから、そっちも寄ってみるか」


 エコバックは全部で3つ持ってきている。残りの袋は野菜などの生鮮食品を中心に持って帰りたい。


「危ないから、ゆっくりでいいよ」


 自動ドアから慎重に外へ出た。額を覆う汗をTシャツの裾で拭う。ここ数年で一番汗をかいているかもしれない。


 自転車に跨り漕ぎ始める。通り過ぎていく風が気持ちいい。相変わらず通行人と出会わない。みんなどこに行ってしまったのか、まだ律儀に部屋に篭り続けているのだろうか?それとも、もう全員ゾンビになってしまって、こんな大阪市内でも端の方ではなく、難波や梅田、天王寺などの中心部に向かって大移動したのかもしれない。


 そんなことを考えているとスーパーに辿り着いた。乗り捨ててある乗用車が複数あり、そこかしこからゾンビの呻き声が聞こえる。スーパーは2階建てになっていて、2階は駐車場、1階部分が店舗スペースになっている。入り口は開きっぱなしになっており、いつでも侵入できるようになっていた。


「いくしかないか」


「そうだね」


「武器とエコバックだけ持っていこう。あとは、自転車に置いておいて、いざとなったら逃げるしかない」



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