第8話
温かいシャワーを全身で浴びながら、排水溝に流れていく血を見ていた。肌にこびりついていた凝固した血液も一緒に流れていく。
髪を乾かしながら、今後のことを考える。この家はいつまで安全なのだろうか?まだ、こうして電気も水も使用できているものの、いずれすべて止まってしまうに違いない。それに食糧の問題もある。食材はあっても無限に湧いてくるわけではない。調達することも考えないといけない。
最寄りのコンビニはどうなっているんだろう。明日あたり周辺のスーパーやコンビニの状況を把握しておく必要がある。避難先などあるのだろうか、そういえば、いまは使ってないラジオがあったはず。ひとまずはネットとそれで情報を得るしかない。部屋着に着替え、洗面所から出ようとすると、美咲が立っていた。
「私も入るね」
「う、うん」
どぎまぎしてしまう。まともに顔を合わせることさえも、ここ数年はなかった。高校にいかず、部屋から一歩も出なくなった妹、事情を聞いても話してもらえず、露骨に避けられているように感じて、会話をすることさえ諦めてしまった。俺自身もいまの会社で忙しく、構っている余裕さえない。たまに、本当にこれでよかったのかと、後悔することもあったけど、たとい過去に戻れたとしても結果は変わらなかっただろう。
「ごめん」
リビングのテーブルには、白米に野菜炒め、味噌汁と、ラップして保存してあった。二人分並べられている。俺と美咲の分だろう。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、コップに注ぐ。よく口をつけて飲んでは母に怒られていた。もう気にしなくてもいいのかと思うと、胸が締め付けられるような心持ちがする。
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