第16話 danger


五条。

あの女は危険すぎる。

そしてその女もそうだが...斉藤。

アイツも危険すぎる。

私はそう思いながら五条を見る。

コイツはニコニコしながら私を見ていた。


「...アンタ何がしたいの」

「言いませんでしたっけ。私、貴方と同じぐらいに裕太郎先輩が好きなんですよって」

「...そう。...だけど残念。アンタなんかを先輩は好きにならない。何故ならアンタはかなり危険だから」

「私がどう危険ですか?具体的に」

「アンタは全てを敵に回している」


その言葉に五条は私を真顔で見る。

「...で?」という感じで笑顔になる。

そんな顔にイラッとする。

だけど落ち着いて考えたい。


「五条。アンタのその願いは叶わない。何故なら先輩は私のものだ」

「そうですかぁ。でも貴方の方がもっと叶わないと思います。私は犯罪者が受け入れられるとは思っていません」

「...」


五条はへらへらする。

すると背後から「気に食わないね」と言葉が聞こえた。

その声の主は大島透子だった。

私達を見てから「そこまで」と言った。


「野次馬が集まってきているからね。それ以上は私が3年生だし許さないよ」

「大島先輩...」

「...はーい」


そして五条はつまらなさそうな感じで人混みを見る。

「じゃあまた後で。裕太郎先輩」と笑顔になりながら、だ。

私はその姿を一瞥しながら大島先輩を見る。

大島先輩は肩を揺らしながら「やれやれ」と言う。


「裕太郎。それから...お初だね。幸さん。君の噂はかねがね」

「...そうですか」

「どうあれ。人をこの大きな場所で犯罪者呼ばわりは良くない。...彼女にはそれなりに叱責が必要だね」

「...そうですね。透子先輩」


そんな感じで先輩が返事をする。

私はその姿を見ながら目線を大島先輩に向ける。

何故この場所に?、という感じで目線で聞く。

すると大島先輩は「まあ色々ね」と言いながら「だけどもっともな用事は君に会いに来た。...幸さん」と言う。


「何故私ですか?」

「...簡単に言うと私達の部活に入らないかね。君」

「...勧誘ですか」

「勧誘じゃない。...君と裕太郎の関係をもっと詳しく知りたい。その為に近くに置いておきたい」

「言い方があまり気にいらないんですが」

「これでも私は君に優しくしている」


「そもそもあの部活は...様々な問題を抱えている生徒しか集まってない」と笑顔になる大島先輩。

私は「...」となりながら大島先輩を見る。

そして私は先輩を見る。

先輩は大島先輩に聞いた。


「環境を知りたいんですか?幸ちゃんの」

「そうだね。一言で言うとそんな感じだね。私が幸さんのお姉ちゃんになりたい」

「...」

「...大島先輩は弟を失っている」

「...知っているよ。ガンだったって」

「そうだな」


私はその大島先輩の言葉が気に入らないが。

先輩の傍に居る事が出来るなら。

そう思いながら「なら部活に入ります」と答えた。

すると大島先輩は「うむ」と言った。

笑顔で私を見る。


「不都合が有るかもだけど。宜しくね」

「...はい」


そして私は大島先輩と握手した。

すると先輩が「まあそれだけじゃないですよね」と大島先輩を見る。

私は「?」を浮かべながら先輩を見る。

先輩は「...幸ちゃんを守りたいんですよね」と言う。


「...何故ですか?」

「君は裕太郎の知り合いだ。そして君は裕太郎が好きな人だ。だからこそ私は君を守りたいと思ってね」

「...」


私にそう言いながら大島先輩は私の肩を叩く。

その姿を見ながら私は「...」となる。

すると先輩が「...お前も悪い事をしてないとは言えない」と切り出した。

そんな言葉に私は先輩を見る。


「だけど...それは一旦置いてから。全てをリセットする為に動こう」

「...ですか」

「そういう事もあるね。...私は気になっているから。君達の関係もそうだが...」


そしてチャイムが鳴ってしまった。

私はそのチャイムの音を聞きながら教室に戻る。

それから私は椅子に腰かけてから外を見た。

何か...違う気分に感じられた。



放課後になった。

私は部活を終えてからそのまま家に帰る。

それからベッドにダイブした。

あくまで聞いた噂によるが。

幸が...部活を始めたらしい。


「...」


私はベッドに沈み込んでいる身体をゆっくり起こした。

それからゆっくりと座っていると電話が。

その相手は...お父さんだった。

私はその事に「もしもし?」と電話する。


『幸奈。例の件だけど』

「...うん。離婚届出すんだよね」

『そうだな。...全て役所に提出した。これから家を探す』

「...うん」

『...迷惑を掛けているな』

「私が悪いよ。お父さんは何も...悪くない」


そう言いながら私は学習椅子に手をかける。

それから私はその椅子に腰掛けた。

そして反応を待って居ると『パートナーとしても生きてはいけるから。何かあったらまた色々と相談して決めればいいから』とお父さんは話した。

私は頷く。


『アイツが。お前の母親が悪いんだとは思うけど』

「...お父さんは甘いよ。そんな訳ない」

『ああ。だけど俺はそう思う。だがそれでも。もうちょっとお前をまともに育ててやれればな』

「...有難う。お父さん」


人生が終わる訳では無い。

そう思いながら私は話を聞く。

そして私は今日会った事を全て話した。

するとお父さんは『そうなのか』と言っていた。


『...お前も頑張れ』

「うん。有難う」


そして私は電話を切る。

それから私は...学習机を撫でる。

この学習机と椅子は。

恩師のお子さんの子供だった時のものだ。


「...頑張らないとな」


そう思いながら私は。

幸と裕太郎の事を思って外を見ていた。

そして...過去の因縁を考える。

どうにか決着をつけなければ...ならない。

早めに。

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