第16話 danger
☆
五条。
あの女は危険すぎる。
そしてその女もそうだが...斉藤。
アイツも危険すぎる。
私はそう思いながら五条を見る。
コイツはニコニコしながら私を見ていた。
「...アンタ何がしたいの」
「言いませんでしたっけ。私、貴方と同じぐらいに裕太郎先輩が好きなんですよって」
「...そう。...だけど残念。アンタなんかを先輩は好きにならない。何故ならアンタはかなり危険だから」
「私がどう危険ですか?具体的に」
「アンタは全てを敵に回している」
その言葉に五条は私を真顔で見る。
「...で?」という感じで笑顔になる。
そんな顔にイラッとする。
だけど落ち着いて考えたい。
「五条。アンタのその願いは叶わない。何故なら先輩は私のものだ」
「そうですかぁ。でも貴方の方がもっと叶わないと思います。私は犯罪者が受け入れられるとは思っていません」
「...」
五条はへらへらする。
すると背後から「気に食わないね」と言葉が聞こえた。
その声の主は大島透子だった。
私達を見てから「そこまで」と言った。
「野次馬が集まってきているからね。それ以上は私が3年生だし許さないよ」
「大島先輩...」
「...はーい」
そして五条はつまらなさそうな感じで人混みを見る。
「じゃあまた後で。裕太郎先輩」と笑顔になりながら、だ。
私はその姿を一瞥しながら大島先輩を見る。
大島先輩は肩を揺らしながら「やれやれ」と言う。
「裕太郎。それから...お初だね。幸さん。君の噂はかねがね」
「...そうですか」
「どうあれ。人をこの大きな場所で犯罪者呼ばわりは良くない。...彼女にはそれなりに叱責が必要だね」
「...そうですね。透子先輩」
そんな感じで先輩が返事をする。
私はその姿を見ながら目線を大島先輩に向ける。
何故この場所に?、という感じで目線で聞く。
すると大島先輩は「まあ色々ね」と言いながら「だけどもっともな用事は君に会いに来た。...幸さん」と言う。
「何故私ですか?」
「...簡単に言うと私達の部活に入らないかね。君」
「...勧誘ですか」
「勧誘じゃない。...君と裕太郎の関係をもっと詳しく知りたい。その為に近くに置いておきたい」
「言い方があまり気にいらないんですが」
「これでも私は君に優しくしている」
「そもそもあの部活は...様々な問題を抱えている生徒しか集まってない」と笑顔になる大島先輩。
私は「...」となりながら大島先輩を見る。
そして私は先輩を見る。
先輩は大島先輩に聞いた。
「環境を知りたいんですか?幸ちゃんの」
「そうだね。一言で言うとそんな感じだね。私が幸さんのお姉ちゃんになりたい」
「...」
「...大島先輩は弟を失っている」
「...知っているよ。ガンだったって」
「そうだな」
私はその大島先輩の言葉が気に入らないが。
先輩の傍に居る事が出来るなら。
そう思いながら「なら部活に入ります」と答えた。
すると大島先輩は「うむ」と言った。
笑顔で私を見る。
「不都合が有るかもだけど。宜しくね」
「...はい」
そして私は大島先輩と握手した。
すると先輩が「まあそれだけじゃないですよね」と大島先輩を見る。
私は「?」を浮かべながら先輩を見る。
先輩は「...幸ちゃんを守りたいんですよね」と言う。
「...何故ですか?」
「君は裕太郎の知り合いだ。そして君は裕太郎が好きな人だ。だからこそ私は君を守りたいと思ってね」
「...」
私にそう言いながら大島先輩は私の肩を叩く。
その姿を見ながら私は「...」となる。
すると先輩が「...お前も悪い事をしてないとは言えない」と切り出した。
そんな言葉に私は先輩を見る。
「だけど...それは一旦置いてから。全てをリセットする為に動こう」
「...ですか」
「そういう事もあるね。...私は気になっているから。君達の関係もそうだが...」
そしてチャイムが鳴ってしまった。
私はそのチャイムの音を聞きながら教室に戻る。
それから私は椅子に腰かけてから外を見た。
何か...違う気分に感じられた。
☆
放課後になった。
私は部活を終えてからそのまま家に帰る。
それからベッドにダイブした。
あくまで聞いた噂によるが。
幸が...部活を始めたらしい。
「...」
私はベッドに沈み込んでいる身体をゆっくり起こした。
それからゆっくりと座っていると電話が。
その相手は...お父さんだった。
私はその事に「もしもし?」と電話する。
『幸奈。例の件だけど』
「...うん。離婚届出すんだよね」
『そうだな。...全て役所に提出した。これから家を探す』
「...うん」
『...迷惑を掛けているな』
「私が悪いよ。お父さんは何も...悪くない」
そう言いながら私は学習椅子に手をかける。
それから私はその椅子に腰掛けた。
そして反応を待って居ると『パートナーとしても生きてはいけるから。何かあったらまた色々と相談して決めればいいから』とお父さんは話した。
私は頷く。
『アイツが。お前の母親が悪いんだとは思うけど』
「...お父さんは甘いよ。そんな訳ない」
『ああ。だけど俺はそう思う。だがそれでも。もうちょっとお前をまともに育ててやれればな』
「...有難う。お父さん」
人生が終わる訳では無い。
そう思いながら私は話を聞く。
そして私は今日会った事を全て話した。
するとお父さんは『そうなのか』と言っていた。
『...お前も頑張れ』
「うん。有難う」
そして私は電話を切る。
それから私は...学習机を撫でる。
この学習机と椅子は。
恩師のお子さんの子供だった時のものだ。
「...頑張らないとな」
そう思いながら私は。
幸と裕太郎の事を思って外を見ていた。
そして...過去の因縁を考える。
どうにか決着をつけなければ...ならない。
早めに。
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