第15話 五条VS幸

「五条さん...が接触して来たんでしょう?」

「...そうだな。良く分かったな?」

「そうね。まあ見ていたから。五条さんと何かあったの」

「五条は相変わらずだけど。それよりももっとヤバいのは昨日話した事だな」

「...あれだね。斉藤って人だよね」


そんな会話をしながら俺達は階段を登って行く。

それから俺達は俺の教室の前に来た。

すると植木さんは俺を見てくる。

そして真剣な眼差しになる。


「斉藤くんはどうしたいって?」

「...アイツに接触して復縁したいだけらしい」

「...裏がありそうだね」

「そうだな。俺は...アイツに。アイツっていうか幸奈が正念場を迎えていると思う。...彼女の行動次第では話が変わってくる」

「そうだね。私もそう思う」


そして俺は植木さんを見る。

植木さんは「幸奈さんは?」と聞いてくる。

俺は「アイツは今、部活だ」と答えた。

それから俺は植木さんに対して肩をすくめる。


「大会なんだと」

「茶道部にも大会があるんだね」

「...そうだな。良く分からんが」


植木さんは窓から外を見る。

それから「じゃあそろそろ行くね」と俺に向く。

俺はその言葉に「ああ」と返事をした。

そして見送ってから歩いて教室に入ると。


「裕太郎」


と声がした。

顔を上げるとそこに芽美が居る。

芽美は「あの子は」と聞いてくる。

俺は「部活だ」と答える。


「...知り合いに...その斉藤って男子の扱い方法を聞いた。その斉藤って奴と一対一で話をした方が良いって結論になった」

「...ああ。わざわざ話してくれたんだな」

「そうだね。...一応、相談した。信頼出来る人に」

「...俺としてはアイツに課せられた使命だと思っている」

「そっか」


芽美は俺を見ながら「確かにね」と返事をする。

それからクラスメイト達が俺達を見ているのに気が付いた。

「大変だな。山郷」という感じで言ってくる。

俺は「ああ」と返事をした。


「...だけどもう何もしない。アイツが背負ったものだから」

「まあそうだな」

「彼女が悪いしな」

「それが大人への一歩だな」


俺はそう会話をするクラスメイトを見ながら居ると「先輩」と声がした。

背後を見るとそこに幸ちゃんが居た。

俺を見ながら「アイツ。斉藤って五条の近所なんですね」と言ってくる。


「そうだな。そう言っていた」

「...頭おかしいですよ。奴って」

「...そうか」

「五条も大概ですけど...いやまあとにかく斉藤と五条は危ないですから」


そう言いながら俺を見てくる幸。

俺はその言葉に「まあ確かにな」と返事をする。

すると幸ちゃんは「斉藤の件ですが。結構前から...お姉ちゃんに付き纏っています」と言いながら俺を見る。

その言葉に俺は「...それはマジか」と返事をする。


「はい。お姉ちゃんと同じ...卒業写真がありました」

「マジか。最大におかしいな」

「...それでですね。私は斉藤を許せません。どうしても許せない」

「...ああ」

「だからいっその事...いたぶってやろうかと」


「それは止めた方が良い」


それを言ったのは俺じゃない。

芽美だった。

俺達を見ながら「そんな事をしてもどうにもならない」と言う。

そして芽美は幸ちゃんを見る。


「...幸さん。...私、貴方のお姉さんと話した」

「飯田さんですかね。...そうなんですか?」

「うん。...彼女は前と違う。...少しだけでも信頼しても良いんじゃないと思う」

「...」


俺達は芽美を見る。

それから芽美は「貴方は信頼してないんだよね。お姉さんを」と聞いてくる。

幸ちゃんは「そうですね。いや。個人的な怒りがあります」と答えた。

芽美は考え込む仕草をする。


「彼女の問題だから。...少しだけにしておいた方が良い。斉藤の件は」

「...飯田さん...」

「私達はそう思う」

「...」


芽美は静かに幸ちゃんを見据える。

それから幸ちゃんの返事を待つ。

幸ちゃんは「...そうですね」と返事をした。

そして顔を上げる。


「...まあこのままにしておきます。様子を見るっていうか」

「それが一番だと思う」

「...俺もそう思った」

「...良いですかね?先輩」

「...ああ」


そして俺は芽美を見る。

それからあっという間にチャイムが鳴った。

何も知らない幸奈は教室に来る。

俺はその様子を見ながら「...」となりつつ観察をしていた。



「裕太郎先輩」

「...またお前か。五条」

「またお前ってのは酷いですね。...考え直しました?」

「直すもクソも無い。俺は関わらない」

「そうですかー」

「...五条。お前が何を企んでいるか知らないけど。止めろ」


トイレに行った帰りに五条に会った。

五条はニコニコしながら俺を見ている。

俺はその姿を不気味に感じながらも強く「...もう止めろ」と言う。

五条は「止めません」と笑顔で否定した。


「私は敵を認識しています」

「何でお前をそんなに駆り立てるんだ。...何がお前を」

「気持ち悪いんですよ。一言で言うと」

「...」


俺はその言葉を聞きながら「なら斉藤は」と言う。

すると五条は「斉藤さんは優しいですから」と首を振る。

その言葉に俺は「意味が分からない」と否定をした。


「お前が何を言っているか分からない」

「私の中の差ですよ。裕太郎先輩」

「...」


俺は五条を見る。

そうしていると「何をしている」と声がした。

顔を上げて背後を見る。

そこに...幸ちゃんが死神の顔で立っていた。


「...幸ちゃん...」

「...五条。アンタもう近付かないで」

「?...貴方にそんな事を言われる権利は無いですよ?現に犯罪者に」

「...」


五条は満面の笑顔で幸ちゃんを見る。

幸ちゃんは「...」となりながら五条を見ていた。

眉を顰めながら心から怒る感じで。

というかアルコールランプが燃え上がる感じで、だ。

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