第二章 終わらせない世界
それでも
第13話 因縁の相手
「正直言ってアンタがやった事はどれだけ謝罪しても許せない」
「...そうだね」
「でも裕太郎はそれでもどうにかしようとしている。お人好しだよ」
「...」
「アンタの事なんか放って置けば良いのにね」
「...そうだね」
私は何も言えず目の前のお茶を見る。
ペットボトルに入っているお茶を、だ。
お茶は...濁っている。
私の気持ちの様に。
「...だけど私は最近はアンタの行動を見て考え直している」
「え?」
「...アンタは必死にもがいているみたいだから。現実世界の嫌な事に」
「もがいている訳じゃ無いよ。私は最低な人間だから」
「その最低な人間は反省しようとしているんじゃないの」
「...反省っていうか。...贖罪っていうか」
家族も全ても裏切った。
その分、私は。
そう思いながら空を見上げる。
そうしているとペットボトルを栓を閉める音がした。
見ると飯田さんが飲み物をビニールに入れていた。
「...まあどう動こうがアンタの勝手だけど。...だけど1つ言わせてもらうと。...アンタは必死に頑張っていると思う」
「...私が頑張っている?そんな事無いよ。...ただの贖罪だから。反省も兼ねた」
「それを頑張っていると言うと思うけど」
「...飯田さん...」
「今の行動をしっかりしていけば。いつかは実る。...実力が」
「...アハハ。本当に良い人だね。貴方」
「良い人って訳じゃ無いけど。ただ当たり前の事を言っている。努力は実る。それだけ。アンタも頑張りな」と飯田さんは言ってからそのまま妹さんを呼ぶ。
その時に妹さんが駆け寄って来た。
それから「これあげる」と柔和になる。
「...これ...キャラメル?」
「そう。きゃらめる。あげる」
「...そっか。有難うね」
私はキャラメルを一個受け取ってから2人を見送る。
それからキャラメルを食べる。
不思議なものだな。
ただそれだけだったのに。
何だかパワーを分けてもらった感覚だ。
「...こんなに変わるものなんだ」
そう思いながら私は立ち上がってから「よし」と意気込む。
それから私は目の前を見据える。
どう動くべきか。
そう思いながら居ると「幸奈」と声がした。
私は「!」となりながら背後を見る。
「...やっぱりここだった」
「...ど、どうしたの?幸...」
「離婚するって聞いた?」
「...聞いた。私達の親が離婚して家から私達は出て行く」
「...まあこの全てアンタのせいだけど。...話をしないと話が進まないかって思ったから来たけど」
「...それはどういう?」
「私がアンタに睡眠薬とか風邪薬を混ぜたのは謝る。それは悪いと思ったから。だから全て謝る」と言う。
それから幸は頭を下げた。
そして顔を上げる。
「だけどそれ以外は全部アンタが悪い。...だから私は怒りしか無いけど。...いつまでもこれじゃ変わらないと思ったから。...アンタに聞く。アンタは変わりたいの?」
「...幸...」
「...ここまでなったんだよ。変わってよ。もういい加減」
「...そうだね。私は...反省していると思う。...だからそれを抱えて。これから先も生きようと思う。...もう裏切ったりしない」
「...それは本当に信用しても良いの」
「私には信頼はもう無い。だけど...信頼してくれとしか言いようがない」
「分かった。だけど今度裏切ったらマジに絶縁だから」
私はその言葉を聞きながら「...うん」と返事をする。
そして私は幸を見る。
幸は「...分かった。話は出来たから帰る」と言う。
それから踵を返した。
私はその姿を見ながら風を感じる。
「...幸奈」
「...はい」
「...アンタがもがいている姿を見てから私は何だか一歩進めた気がしたから」
そしてそのまま幸は去って行く。
私も少しだけ時間を置いて帰る事にした。
そうか信頼というのは。
こういうのを言うのかも。
そう思いながら。
☆
私は家に帰って来ると家の前に誰か居た。
制服姿の男が居た。
その顔を見るとかなりのイケメン。
身長も高く短髪。
クォーターの様な顔立ちをしており別の高校の制服を着ている。
誰かを探している様だったが。
私を見てから「もしかして君、義妹さん?」と言ってくる。
怪訝な顔をしながら私は「...?」となる。
「あ。ゴメンね。俺、斉藤。斉藤信彦(さいとうのぶひこ)っていうんだ」
「はあ。その斉藤さんが何の用ですか」
「いや。幸奈さんに復縁を申し込みたくて」
「...貴方はもしかして幸奈の浮気相手ですか」
「...そう言われるとちょっと困るけど」
「アンタが幸奈の...」
みるみる身体が怒りに震え始める。
それから「今は幸奈は居ませんよ。貴方のせいもあって全て壊れましたから」と笑顔で答える。
そして私は斉藤を無視してから門の中に入ろうとした。
すると「まあ待って」と門を押さえられた。
「...幸奈さん...どうかしたの?」
「...幸奈は居ません」
「...じゃあ何処に?」
「それを言いますか?言いませんよ。警察呼びますよ」
すると斉藤は「...」となってから門を手放した。
それから両手を挙げてから「警察を呼ぶのは止めてほしいな。俺はただ復縁を迫っているだけだから」と笑顔になる。
だけど私は笑顔にならない。
ありとあらゆるモノを奪って行ったコイツを許す気にならなかった。
そして当然復縁も絶対に許さない。
斉藤信彦。
名前を覚えた。
許さない。
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