第10話 社会的に死んでも良いと思います

「何。幸奈」


私は幸奈を見つめる。

幸奈は「...」となりながら私を見る。

またか。

声を掛けてそんな感じだから私はイライラするのだ。

何の為に声を掛けたか知らないが。


「早くして。何の用事」

「...私の事、今でも憎い?」

「それはそうでしょうね。...憎いよ。少なくとも法律が無かったら殺してると思う」

「...私達、もう元に戻らないよね」


その言葉に私は静かに幸奈を見る。

そして「...」となってから考え込む。

それから顔を幸奈に向ける。

そうしてから「アンタが全てを裏切ったんだから。...お金があろうがなかろうが」と言ってから怒る。


「私達は...これでも本気でアンタを救おうとした」

「...」

「それを全てぶっ壊したのはアンタ。...だから私は未来永劫、アンタを許さないし許す気は無い」

「...そうだよね。ハハハ」


そう言いながら幸奈は「じゃあ」と言ってから去って行く。

私はその背中を見ながら「...」となる。

実の所、幸奈と幸奈の父親は詐欺られた。

小金持ちだったそうだが。


それも幸奈の母親に、だ。

浮気性で多額の金銭を盗まれたそうだ。

そして貧乏になった所で...出会ったのが私達だった。

だが結局。

娘も娘か、とは思ったが。


「...ああ。腹立たしい」


そんな事を呟きながら私は教室に戻る。

そしてイライラしながら授業を受けていく。

正直。

自分がどうしたいのか全く分からない。



私は小金持ちだった。

不動産の関係で、であるが。

だけど母親が裏切り全ての金銭を奪われた。

そして私達は父親と共に...幸に出会った。

だけど私も母親の血が流れてしまった。


私が浮気したのには理由がある。

それは...お金が欲しかったのではない。

こうやって浮気して裕太郎に構ってほしかったのかもしれない。

だけどそれが最悪な方面に向かった。


正直、私は浮気をしてから...裕太郎に構ってほしかったのかもしれない。

人一番に甘えたかったのかもしれない。


そう。


これは単なる自業自得だ。

今の現状は。

えげつない現状は。


「...」


私は教室で孤立していた。

先程の恫喝の光景もあって、だ。

私は委縮していた。

それから私はゆっくり立ち上がる。


「...帰ろう」


放課後になったので私は帰る事にした。

それから私はゆっくり教室を後にしていると「オイ」と声がした。

背後を見ると何故か裕太郎が居た。

私を見ながら「どうだったんだ。さっきの」と聞いてくる。


「さっきのって...見ていたの?」

「...偶然だがな。...どうだったんだ」

「...いつも通りだよ」

「そうか」

「大丈夫だよ。裕太郎。私が悪いから」


そして私は帰宅しようとした。

すると裕太郎が「待てって。まだ話は終わってない」と言う。

私は「?」と思いながら裕太郎を見る。

裕太郎は考え込む仕草をしてから言ってくる。


「お前、お金持ちだったのか」

「...ああ。聞いちゃったんだ」

「アイツに聞いた。...お前母親も浮気性だったのか」

「同じ血が流れている。結局、屑は屑って事だよ」

「...そうだな。...だったらもういい加減に断ち切れ。お前」

「...そうだね。この悪い鎖は断ち切った方が良いね」


「だけどどうしたら良いか分からないしね」と言う。

すると「お前を助ける気はさらっさらに無いけど。...今回はお前自身が行動を変えるべきだ。...そして反省心を見せな」と言ってくる裕太郎。

私は裕太郎を見てみる。


「1%でも可能性があるならもがけ」

「...裕太郎...」

「俺は可能性が無いにせよもがく必要があると思う。1%でも変える事が出来るかもしれない」

「私は同じ血が流れているから無理だと思うけど。...だけどまあそう言うなら」


私はそう思いながら裕太郎を見る。

裕太郎は「...そうだな」と言いながら返事をした。

その姿に少しだけ軽くなった気がした。

何がかは分からないが。


「裕太郎。少しだけパワーが貰えた」

「...俺はあくまで助言しただけだ。パワーもクソも無い」

「私は...頑張るよ」

「少なくとも俺は応援して無いけど。...助言はしたからな。お前がどうするかはお前次第だ。少なくとも」


そして裕太郎は去って行く。

私はその姿を見つめてからそのまま考えた。

それから私は踵を返して帰る事にする。

そうして下駄箱まで来ると...ローファーの中に手紙が。


「...?」


開いてみるとそこには(ネットにお前の情報をバラまいてやるよ)と脅す様な文章が綴られていた。

私はゾッとしながら周りを見るが。

周りには人が居ない。

気配もない。

誰なのだろうかこれを入れたの。


「...でもそうはさせない。...幸に被害が及ぶのは...良くない気がする」


そう呟きながら私は手紙を通学鞄に入れた。

そして顔を上げる。

それからそのまま帰宅する。

今日は...茶道部に行く気はならなかったからお休みにした。



「裕太郎先輩」

「...君は誰だ?」


俺は歩いて部室に向かっていると茶髪のゆるふわな女子に出会った。

茶髪の日本人女子。

1年生だ。

顔立ちは猛烈な美少女である。


「私、五条四葉(ごじょうよつば)って言います。裕太郎先輩が好きな人です」

「...そうか。...は?」

「...突然ですが先輩。幸奈さんと幸さん。ウザくないですか?社会的に生きていて良いと思います?」

「...!」


俺はその笑顔を忘れない。

そして俺は五条を見る。

五条に聞いてみた。

「それは...どういう意味だ」と。

すると五条は「言葉通りの意味ですが。死んでもらって良いと思います」と言いながらニコニコした。


何かが動き始めた気がした。

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