第9話 囲い
☆
アイツ。
幸ちゃんの家に行ったのは...何かを得られれば良いのだが、と思った。
しかし残念ながら全てが手遅れであった。
俺はその事を考えながら歩いていると植木さんが「得られたものがありました」と切り出した。
俺は目線を前から植木さんに移す。
「...何が得られたの?」
「...あの子は。...幸さんは確かに幸奈さんを恨んでいますけど。だけど0ではない。絶望が1ではあるけどマイナス1ではない」
「つまり端的に言うと仲を取り返せると?」
「今の状況は全く良くないかもですがそうですね。そう言えると思います」
俺は考えながら自販機に行き着く。
それから「何か飲む?」と植木さんに聞いてみる。
すると植木さんは「何か買いましょうか」と返事をしてくれた。
「何を飲む?奢るけど」
「その必要は無いですよ。...これ」
「...ああ。スタンプ集めているの?」
「そうですね。無料ドリンクチケットが2枚あります」
「...俺の分は良いよ。...自分で買うから」
「いえ。今回は奢らせて下さい」
そう頑なに言うので俺は仕方が無く「じゃあお願いします」と言った。
そして俺はスポドレを貰い。
彼女はブラックコーヒーを飲んだ。
俺達はそのままベンチに腰掛けながら溜息を吐く。
「...幸さんと幸奈さんは元は仲が良かったんです」
「...だろうな」
「...因みにですが私も幼い時に彼女達と遊んでいました」
「そうだったんだな。...何時しか遊ばなくなったと?」
「きっかけは彼女である幸奈さんの浮気です」
「...そうだったんだな」
「だけどそれは知らなかったよ」と俺は彼女に言う。
すると彼女は「でしょうね。...そういうものです」と答える。
それから植木さんは俺を見ながら柔和になる。
「私、貴方が好きですけど」
「...あ、ああ」
「だけど今はそんな狙っている訳じゃないですから。...あくまで問題解決が先です」
「...そうだな。...今の状況は幸ちゃんがいつか幸奈を殺すだろうな」
「その最悪の事態だけは避けたいので」
「...そうだな」
そして俺はスポドレを飲む。
それから息を吐き出してから曇り空を見る。
正直、本当にうざったい空だな。
流石は制服の交換時期だが。
「...私、昔から遊んでいましたから。だから仲を取り返したいんです」
「...分かる。...気持ちは。...だけど俺にとっても彼女は恨みの対象だからな。...時間がかかるぞ多分」
「...それは確かにですね」
俺は7月の空を見上げる。
それからカラスの鳴く声を聞く。
もう少ししたら夕暮れだが。
だけどまだまだだな。
「...そうだ。...中間テスト対策は大丈夫ですか?」
「耳の痛い話だ。...まあ大丈夫だけど...だけど複雑だからな」
「...そうですね。でもテストは大切です。今は浮気の事は忘れましょうかね」
そんな会話をしながら俺達はテスト対策のやり取りをする。
そうしていると日暮れになった。
俺達は慌てて家に帰る。
そして翌日になった。
☆
「おはよう」
「...何だ」
「...うん。聞いたかな。...実は家を出たって」
「そうだな。お前すれ違ったろ」
そう言いながら俺は幸奈を見る。
幸奈は「...そっか」と苦笑していた。
俺は「...忘れてないからな。恨みは。...だけどそれとお前の家庭環境というか自らの妹に殺されかけるのは話が別だ。...取り敢えず逃げろ」と言う。
「...そうだね。恩師の家に一応、泊らせてもらっている」
「...そうか」
「...」
「...どうした」
「私が間違っているんだよね?」
「...これまでの事はお前が間違っている。...調子に乗り過ぎたな。そして今の状態もお前が引き起こした。反省はしてもらいたい」
芽美と一緒に幸奈を見る。
幸奈は「...だね」と言いながらそのまま「じゃあ」と踵を返して席に戻って行った。
クラスメイトは冷めた顔で幸奈を見ていたがそのまま俺との話が終わったのを見計らって目線を元に戻した。
芽美が言う。
「...反省して居れば良いけど」
「...そうだな」
「聞いた限り、複雑みたいだし反省はすると思うけど」
「滅茶苦茶に複雑みたいだ。...お前の言う通りだよ」
「...まあ自らで招いた事だけど。...正直殺されるのは違うと思うからね」
「そうだな」
そして芽美は俺を見てから肩を竦めて牛乳を飲む。
俺はその姿を見ながら授業時間を迎える。
それから俺は授業を受けた。
その次の時間だが...、と思っていると。
幸奈が女子に絡まれていた。
そして4人組の悪そうな奴らに絡まれる。
俺は「?」を浮かべて観察する。
☆
金銭を要求されている。
私はそう思いながら遠目にお姉ちゃん基い幸奈を見ていた。
どうも浮気の事を掲げられて脅されている様だ。
私は溜息交じりで事の流れを見ていた。
「ねえ。アンタ浮気しているんでしょ?バレたくなかったら3万円くれない?」
「そーそー。大げさに言いふらされたく無かったら」
「...」
ネット上でも暴露してやる的な感じになっている。
私は「それをされると困るな」と思いながら声を掛けようとした時。
先輩が声を掛けた。
「すまない。...その子に用事がある」という感じで。
「山郷くん。邪魔しないで」
「...邪魔はしてない。マジに用事がある」
「コイツを助けるの?アンタ」
「...助けてない」
「...じゃあ邪魔しないで」
あの女子達と先輩は知り合いなのか?
そう思いながら観察をしていると「...脅すのは間違っているぞ」と言いながらそのまま幸奈の手を握る。
そして女子の中から引っ張り出した。
「...裕太郎?」
「勘違いはするな。お前を助けた訳じゃないからな」
「...うん」
女子達はつまらなそうな感じで肩を竦めて解散した。
それを見た先輩は幸奈を解放する。
それから「じゃあ。職員室に用事があるから」と去って行く。
幸奈は「...」となったまま教室に戻る。
「ああ。そうだった。私も職員室に用事があるんだった」
そう言いながら私も陰に身を潜ませていたがそれを止めてからそのまま歩いてから職員室まで行く。
そしてプリントを届けた。
それから戻って行こうとした時。
「...幸...」
と声がした。
顔を上げるとそこに幸奈が居た。
何をしているのかコイツは。
そう思いながら私はその姿を見つめる。
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