第8話 3つの交差


私が相談した保健室の遠野夢子先生だが。

彼女は以前、お世話になった先生の奥さんだった。

というか結構お世話になっている先生の。

私はその先生という味方を獲得しながら家に帰って来た。


それから私は部屋の前に立つ。

それは...当然だが幸の部屋の前だ。

そしてノックをしようとした時。


「何」


と声がしてきた。

見れば丁度トイレから幸が出て来ている感じだった。

そうかトイレだったのか。

そう思いながら私は少しだけ迷いながら「話がある」と向く。


「...話?何を?私は貴方と話す事は何もない」

「...だけど私はある。...貴方と話す事が」

「何?直ぐに終わらせてくれる?」

「...私は...この家を出て行く」


その言葉に幸は「?」となってから寄り掛かっていた壁から離れる。

それから「それは何故?またいきなりに有難い話だね」と言う。

私は「...この家に居ても私と貴方との確執は多分収まらない。だったら私は家を出て行く。そして...私は...」となる。


「...」

「...丁度、支えてくれる人が見つかった。離れ離れになっても」

「...そう。勝手にすれば。出て行ってせいせいする」

「...そうね」


そして私は荷物を纏めようとする。

すると幸が「アンタの事を信頼していた」と切り出した。

それから私を見てから「まあ今は何も無いけど」と肩を竦めて嘲笑う。

私はその言葉に「...」となりながら部屋に入った。



幸奈が出て行くそうだ。

まあこうなった限りは彼女には遂行していただきたい。

私はそう思いながら「せいせいした」と言いながら天井を見上げる。

それから家のドアが開く音がする。

そしてそのまま幸奈は出て行く。


しかし行く当ても無いのにどこに行くつもりか。

そう思いながらも私は「知ったこっちゃ無いけど」と寝転ぶ。

そして外を見ていると今度は何故か見知った顔が現れた。


「...先輩?...それに...」


すれ違う感じだっただろうけど現れた。

私は驚きながら起き上がる。

それから下に降りた。

そしてドアを開けると...そこに先輩と植木さんが居た。


「...よお」

「...先輩と植木さん?...何の用事ですか」

「そこでアイツにすれ違ったが。...お前何かしたのか」

「...何もしてないですよ。勝手に出て行っただけ」

「...」


そして私は「...入ります?」と聞く。

すると先輩は「いや。ここで良い」と言った。

私は「?」を浮かべて先輩を見る。

すると複雑そうな顔の先輩に代わって植木さんが切り出した。


「...幸さん。私は彼に全て話した」

「そうなんですね」

「...それで私は考えた。貴方は...幸奈さんとどうありたいのか知りたいって」

「私は出て行ってもらってせいせいしています」

「...だけどお前と幸奈が出会ったのは...」

「確かにですね。...私が幸奈に救われたからですよ」


「ですがそれが何です?私はあの女は敵だって思います」と私は言う。

すると先輩は「俺のあくまでの考えだが」と話した。

それから「俺な。あくまでお前には笑っていてほしい」と言う。


「だけどそれをするなら幸奈にもどうにか反省してほしいって思うんだ」

「...甘っちょろいですよ。先輩。あの女は敵ですよ。あくまで害悪です。真面目に」

「...だけどお前の本心はそう思っているのか」

「思ってますね。まあ多少は。1%ぐらいは期待したかもですが」

「...もう止めた方が良いと思ってな。お前のその薬を混ぜるの」


先輩はそう言いながら私を見る。

私は「まあ薬はもう盛りませんよ」と答える。

「ですが」という言葉も含めて、だ。


「私はあの女との仲はもう戻りませんしね」

「...幸ちゃん...」

「私は存分に裏切られましたからね。...あくまで。本当にイライラして仕方が無い。私は絶対に許さない。まあ逃げる幸奈もいい加減にしろって思いますけど」

「...」


植木さんが私に向いた。

それから「幸さん。...私は幸奈さんと貴方の仲を私と彼とで修復しようと思う」と言いながら私を見てくる。

私は「...何でですか?必要ですかそれ?」とイラッとして言う。

植木さんは「貴方は元の関係に戻りたくないですか?ギスギスした今って嫌じゃ無いですか?」と言ってくる。


「...」

「俺はその意見には賛同も否定もしないが。彼女は知り合いだ。彼女がやるって言ったから少しだけ協力しようと思う」

「...全く。頭おかしいですね。先輩をこんな風に...見損ないましたよ。植木さん」

「...私はどっちでも構わない。だけど...私は貴方にも昔のあの日。幸奈さんにも仮にも恩義がある。後からだけど山郷くんにも恩義がある」

「...」


私は額に手を添えながら「それってもしかして貴方の彼氏が取られた時の話ですか」と言う。

その言葉に先輩は「は?!初耳だぞ!」となる。

私は(話してなかったのか)と思いながら目線を植木さんに向ける。


「浮気されたんだよ。...丁度、同じ様に彼氏を取られた」

「...そうだったんだな」

「そうですね。...まあ中学校時代の話ですが」

「...それで植木さんと昔から付き合いがあったと?」

「そうだね。だから風邪薬とか販売していたけど」


そう言いながら植木さんは俯く。

私はその姿を見てから「...」となる。

すると植木さんは「だからこそ」と顔を上げた。


「...私は今こそ恩義を返す時だって思う。...今の過ちは正すべきだと思います」

「...」


私は溜息を吐きながら「まあほどほどに」と言いながら2人を見る。

それから私達は少しだけ話してから別れた。

そして私は額に手を添えた。

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