第11話 修行開始
私達は、朝から練習場への道を歩いていた。
相変わらず天気は良いが......気まずい空気が流れている。
というより、キリエナがこっちを向いてくれない。
耳まで真っ赤になっている。
「まぁ......確かに、急に友達が家に泊まりに来たら困っちゃうよね、はは......」
「き、昨日の夜のことは忘れてください!」
「も、もちろん忘れるよ」
彼女が頬を膨らませながら言う。
昨日のことを随分と気にしているようだ。
まぁ、私も友達はほとんどいないから似たようなものだが......
とにかく、今は話を変えよう。
「きょ、今日はどんな練習をするの?」
「とりあえず、基礎的な攻撃魔法である炎魔法の調整を完璧にしましょうか。それと、対人演習に最も重要な防御魔法の習得を......」
「防御魔法~~~!?」
「.....もう見慣れましたよ、その反応も」
「ごめんごめん、やっぱり新しい魔法の話を聞くと興奮しちゃって.....でも、昨日読んだ魔導書には防御魔法なんて書かれてなかった気がするけど」
「防御魔法は魔法の基礎中の基礎ですからね。大体の人が子供の内に習得する魔法なので、わざわざ魔導書には書かれませんが......あれ? 私の部屋にあった歴史書とかには載ってますよ? もしかして......レイナさん、魔導書しか読んでないんですか?」
「うっ! だってしょうがないじゃん......魔法が気になり過ぎちゃって......」
「まぁ、それは別に構いませんが......常識を知らなすぎると面接でボロが出ちゃうので、後で読んでおいてくださいね!」
そんなことを話していると、練習場に到着した。
昨日よりも気温が高い。コートを着てこなくて正解だったな。
「さて、まずは復習ですね。『
私は手を前に構え、詠唱を行う。
速度を上げ、威力を中くらいに抑えることを意識しながら......
「〔
ボッ、っと炎が真っすぐ発射される。
速度を保ちながら20mくらい飛んだところで消えた。
よし狙い通りだ。
「すごいですね......威力と距離の調節、共に申し分ないです」
「お、やったー」
「これなら、他の魔法の練習に移っても問題はありませんが......それより、魔力の消費がほとんど無いことに驚きです。練習すればするほど、魔力効率は良くなっていくものですが......ここまで少ない人は見たことありません」
「やっぱり少ないんだ。昨日も何回魔法を使っても疲れなかったから......あっ」
「えっ? 何回も使ったんですか!?」
「......ツカッテナイヨ」
「誤魔化すのヘタクソですか?! ......まぁ、昨日のことはもういいですよ。何はともあれ、生命魔力を消費し過ぎて試験中に死んじゃうことは無さそうですね」
「確かに、それは困るな......」
キリエナに迷惑が掛かる上、魔法学校にも入学出来なくなってしまう。
どれくらい魔法を使ったら体に支障が出るのか、その辺も実験しておいた方が良さそうだな......
「それじゃあ、次は防御魔法の練習に移りましょうか。こっちは『
彼女が指を振ると、地面に文字がようなものが浮かび上がる。
カタカナの「ク」の真ん中に点がある、って感じだ。
......杖、使って欲しかったな。
「防御魔法は詠唱を必要としないので、この術印を覚えるだけで使うことはできます」
「なるほど......」
脳内で術印を描く。
その瞬間、大小様々な正三角形が綺麗に組み合わさった幾何学模様の透明な壁のようなものが現れた、が......
「なんか、イメージしたものよりも小さい......しかも、位置がズレた」
「そうなんです。使うこと自体は簡単なのですが、場所の指定や大きさの調節などが他の魔法に比べて難しいんです。それに、攻撃魔法との同時発動も基本になるので、その辺りも練習が必要になってきます」
「同時発動? 別の魔法をイメージしながら魔法を使うって、なんか無理そうだけど......」
「慣れです。術印のイメージから場所の指定、発生までを繰り返し練習すれば出来るようになりますよ。ほら」
彼女が手を開くと、小さな防御壁が現れる。
「おぉ......!!」
「『
別のことを考えながら、魔法を使う、か。
アニメや動画を見ながら作業をするような感じだろうか。
生存率を上げる方法である以上、なるべく早く習得したいところだ。
「基礎的な攻撃魔法の確認、防御魔法の反復練習、それと並行して、戦闘で役立つ攻撃魔法と無詠唱魔法の習得も行っていきましょうか」
「結構やること多いね。一週間で足りそう?」
「試験合格くらいなら何とかなると思いますが......かなり厳しい練習にはなるので、覚悟はしておいてくださいね?」
魔法の練習。
魔法の習得。
それなら、いくらでも頑張れる。
それは......元の世界では願っても手に入れられなかった、私が夢に見た人生そのものだ。
「いいね。望むところだ」
その日から、試験に向けた一週間の練習が始まった。
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