第12話 ぶどう探し
この世界にも暦が存在する。
「暦」とは、日付や年、月、曜日などの時間の経過を示すためのものである。前世の暦には太陽暦、月齢暦、農暦などの種類があった。
ちなみにこの世界の暦は前世と大きく変わらなかった。唯一違うのは曜日という概念がないということだろう。
ちなみに今日は3069年7月25日である。
まさに夏といった季節である。
この世界にも四季が存在する。この点も前世とは変わらない。転生する時に神様が配慮してくれているのかもしれない。
この日、ニックはセシル、ルノワと共にローザ領南部のパースという街にいる。ここパースはぶどうの産地である。ぶどうは特に降水量の少ない乾燥した土地で栽培されるもので、ワインなどのぶどう酒の原料となる品種が栽培されている。
ニックは栽培している畑にやってきた。
一面にぶどうの木が拡がっている。
しばらくニックはその景色を眺める。その間にセシルとルノワが生産者に品種などを聞いて回っていた。
「ニック様、一通り聞いてまいりました。」
セシルとルノワが戻ってきた。
「うん、ご苦労さま。それでどうだった??」
「はい、どうやらここで育ててるぶどうは2種あるようで
どちらもワイン造りに適しているとのことです。」
「なるほどね…どちらもか…ちなみにどっちがどういう特徴があるかとか聞いてる?」
「それが…」
ルノワが黙り込む。
「ん?どうしたの?」
「実はどちらも見た目、味共に似ていて違いが分からないと…」
「えっ!そんなことある!?」
ニックは驚く。
「んー、どうにかしてわかる方法は…」
しばらくニックは考え込む。
少しすると口を開いたのはセシルであった。
「ニック様、商業スキルの出番ではないでしょうか。」
「商業スキル……あっ!鑑定か!すっかり忘れてたよ。」
セシルに言われるまで、ニックは全く気づいていなかった。自分のスキルに。
「でも、スキルってどうやって使うんだろ…使うの初めてだし…」
「ニック様、スキルは意志を持って唱えるだけで発動します。」
「唱えるだけね…じゃあやってみるよ……鑑定!」
するとニックの目の前にボードが現れる。
そこにはニックが鑑定したぶどうの木の情報が出てきた。
カルサ…黒ぶどう、甘酸っぱい
マータ…黒ぶどう、甘い
「なるほど…どうやらカルサとマータという種類があるみたい。カルサの方が甘酸っぱいみたいだからお酒に向いてるのかも!」
「なるほど、そこまで分かるのですね。とても便利ですね。にしてもカルサというぶどうは初めて聞きました。マータは聞いたことがありましたが…」
ルノワは興味津々である。
「では、ルノワさんこのカルサを軸にワインを作りましょう。セシル、このカルサというぶどうを集めてください。また生産者には品種の説明を!」
「承知しました。」
こうしてワイン造りの基礎的な部分であるぶどうを見つけることが出来た。
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