第11話 ローザワイン
翌日、ニックはセシルとともに屋敷を出た。
ローザ商会の事務所に向かうためだ。
事務所はセシルが屋敷近くの元酒場を見つけてくれた。
セシルによると既に机など商会運営に必要なものは昨日までに運び込んでいるという。また、事務員を5名ほど採用しているそうだ。さらに早朝、リットよりセシルをニック専属の執事にすると言われている。その為、ニックはセシルをローザ商会の事務長に任命した。
これにより、組織は無事完成した。
事務所は屋敷より歩いて5分ほどであった。
建物は5階建てで地下室もある。酒場と聞いていたが、どうやら宿も兼ねていたようだ。
「立派な事務所だね…」
「はい、ローザ商会は国1番の商会になるというニック様の夢を叶えるため、今後の規模拡大も見据えてこの物件にしております。」
「おぉ、なるほど…」
そう言われると少しプレッシャーも感じる。
しかし、国の管理下に置かれないようにするためにはローザ商会の存在価値を高めなければならない。
ニックは事務所の中に入る。
すると1人の男性が待っていた。
セシルが紹介してくれる。
「こちらは本日お呼びしました、酒職人のルノワさんです。」
「シムの街で酒職人をしております。ルノワです。よろしくお願い致します。」
ルノワは丁寧に挨拶する。
「ルノワさん!ローザ商会商会長のニック・フォン・ローザです。今日は来て下さりありがとうございます。」
ニックは歓迎する。
「では、商会長室でお話をしましょう。」
セシルに促され、3階にある商会長室に向かった。
商会長室は立派な装飾品など飾られていた。
商談用のスペースも準備され、高級感のあるソファが置かれている。
ニックはルノワをソファに座るようにいい、ニックは対面に座った。
「本日、ルノワさんを呼んだのはこのローザ商会で新事業を始めるからです。」
「新事業ですか…私は酒造りしかできません。…つまり酒ということでしょうか?」
「はい、その通りです。このローザ商会の新事業第1弾は酒です。少なくとも5種類のお酒を作りたいと思ってます。」
「5種類ですか…いきなり5種類というのもなかなか難しいと思います。お酒造りは時間がかかりますので。」
ルノワの言う通りである。例えばワインであれば、ぶどうを原料とした醸造酒である。元々、貴重な食料として保存されていたぶどうが自然につぶれ、その果汁がやがて発酵し、アルコールを含む液体となったの始まりである。その為、ワインであれば発酵させるため時間がかかる。
「ルノワさんのご指摘はごもっともです。ですが秘策があります。」
「秘策…ですか?」
「はい、魔法を使います。」
「魔法!!」
ルノワはニックの提案に驚く。
「実は調べたところ、魔法にはモノを発酵させる魔法があるのはご存知でしょうか?」
「はい、知っていますが魔法を使えるものがいなければ…」
「実は私が魔法を使えます。」
「えっ!そうなのですか!?」
ルノワは驚く。上位スキルである魔法スキルを持っているからである。
「なのでまずは魔法を使用し、お酒を作ります。自然発酵で作れるまで凌ぐ考えです。」
「なるほど…それなら可能かと…」
ルノワは納得する。
「では、ルノワさんそのような形でお願いします。まずはワインから作りましょう。名付けてローザワイン!まずは素材集めからスタートです!」
こうして、新たな事業はスタートした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。