第10話 新事業

ニックが提案したのはローザ商会を国1番の商会にすることであった。

国1番の商会を運営するとなれば国も手を出しにくくなるからだ。


「確かに…その案は妙案かもしれん。ローザ商会の運営はお前に任せているから、ニックの好きにするといい。トランプを考案し、これだけの利益を出しているお前なら一番になれるかもしれない…」


リットはこの案を承諾してくれた。


「父様、ありがとうございます。これは次期当主としてこのローザ家に残りたいという僕の気持ちが強いということをお忘れなきようお願い致します。」


「おぉ、そこまで考えていたのか…ほんとによい息子を持ったものだ…」


こうしてニックはローザ商会を国1番の商会にするミッションができた。


ニックは自室に戻る。


「国1番の商会にするまでの時間はあまり残されていないよな…スキルが国に伝わればすぐに王都に招聘させられる可能性もあるか…となればまずはローザ商会を無視できないレベルまで成長させなきゃな…」


国1番の商会になるのにはどうしても時間がかかってしまう。ならばせめて無視できない、ニックでなければ運営できないという状態にすることが最善策である。


「となればインパクトを残さなきゃな…娯楽品はトランプで当分の間はいける。例えば貴族が喜ぶようなものとかがいいのかな…うーん、貴族と言えば華やかなパーティー…ん!そうだ!お酒だ!」


ニックが閃いたのはなんとお酒であった。

貴族や王族となると頻繁にパーティーが開かれる。その場で嗜むお酒を作るのである。

貴族が使うことでローザ商会の名は急速に高まる。ニックの名前を売れ、ローザ商会=ニックという印象を作り出すことができると考えた。


「よし、新事業は決まった。まずは事務所を決めなきゃな…セシルは物件を見つけてくれたかな…」


そう呟いていると、セシルが部屋を尋ねてきた。

とてもナイスタイミングである。


「ニック様、無事物件を探してまいりました。」


「セシル、ありがとう。ちなみにどんな建物なの?」


「はい、屋敷からほど近い場所の元酒場になります。建物も綺麗でして…」


「ん!酒場!!」


ニックは酒場という言葉に運命を感じる。

まさかの新事業にピッタリの場所だからだ。


「ちなみにその酒場には酒樽とかもあったりする??」


「はい、そのまま残っておりますが…」


「うん!最高!もうその物件で決まり!明日から早速そこを商会として使おうと思う!」


「はっ、かしこまりました。早速準備に取り掛かります。」


セシルは部屋を出ようとする。


「あっ!ちょっと待って!明日、酒職人を呼んで欲しい。新事業に必要な人たちだから!」


「もう新事業まで…承知しました。」


こうして明日から新事業、国1番の商会への道のりが始まる。

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