第4話 お金を稼ぎます。

ニックは屋敷にあるダイニングへと向かう。

夕食を食べながらローザ領の現状について話をしてくれるからだ。


今日の夕食はリットが帰ってきたということもあり、お肉料理や魚料理が並びご馳走である。

しかし、前世の料理と比べればレベルは落ちる。お肉、魚とも焼いただけの素朴なものである。


「2人とも帰って早々、暗い話をしてしまい申し訳ない…」


「リット、一体どのような状況なの?」


ミリアがリットに詳しく聞き始める。


「実は王都に滞在中、司法省の仕事と同時にローザ領の財務状況を精査していたのだが、かなりの赤字になりそうなのだよ…」


「理由は分かっているの?」


「うむ、原因は昨年閉山した鉱山の収益が無くなったからだ。如実に数字に表れている。」


「そうなのね…」


ミリアは落胆する。


「とにかく新たな産業を生み出す他ない。今年、来年とこのような状況が続けばこのローザ家、領は終わりだ…」


リットはそういうと天井を見上げる。


(かなり深刻だな…対策を練らないと転生してきた僕の人生も危うくなる…)


ニックはそう思い、自分も対応策を練ることにした。

そのためにも早く書斎に行き情報を収集しなければならない。

そのため急いで夕食を食べ終える。


「…父様、母様。お先に失礼します。」


「もう食べ終わったのか…」


「はい、今回の件、少し僕なりに考えてみたいと思いましたので…なにか思いついたら報告に来ます。」


「おぉ、そうか…たくましくなったな…」


「では失礼します。」


ニックは急いで書斎へと向かった。



______________________________


書斎に来たニックは急いでローザ領の資料をかき集めた。

資料によるとまずこのローザ領はサリスタ王国の東部に位置しており、北部に山地、南部西部は平野、東部は海に面している。領都シムはちょうど中央部に位置している。

山地には旧ローザ鉱山があったが閉山している。この鉱山がローザ領の一大産業であり、収入の多くを占めていた。

次に人口である。ローザ領全体で250万人、領都シムには110万人が住んでいる。


「資料を見たところ、平野に山地に海ってなかなか恵まれてるな…平野なら農業、山地なら林業、海なら漁業か…フルに活かせば新たな産業を3つ創り出せるか…これをローザ家が運営する商会で売買すれば…よし!これで行こう!」


ニックは急いで構想を紙にまとめる。

農業、林業、漁業に力を入れ、それを売買する商会の設立。

そして各物産にはブランドを付け、商品価値をさらに上げる。


「よし、父様に提案しよ!」


こうしてニックのこの世界での活動が本格始動することとなる。

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