第3話 窮地
ニックはミリアと共に屋敷の外に出た。
ローザ家の屋敷は少し高台にあり、街を見下ろすことが出来る。
時刻はちょうど夕方であり、日が沈む様子が見える。
「今日もシムの街は綺麗ね。この時間のこの景色が好きなのよね…」
ミリアの発言からこの街の名前を知ることが出来た。どうやらこの街の名前はシムと言うらしい。
(後でこの街のことも書斎で調べなきゃな…)
そんなことを考えていると屋敷に向かって1台の馬車が向かってきている。周囲は多くの騎兵に囲まれ厳重な警備体制である。
「ようやく見えてきたわ!ニック!」
ミリアはとても嬉しそうに言う。
「母様、父様はどのくらい王都にいらっしゃったのですか?」
「滞在自体はひと月ほどよ。それに加えて移動に7日はかかるからひと月半というとこかしら?」
「移動に7日も…」
ニックは驚く。
前世と違い移動手段は限られる。主な交通手段は馬車である。
ニックはこの際ミリアにこの世界のことに聞くこととした。
しかし、いきなりあれこれ聞いてしまっては疑われる可能性がある。そこで父リットの仕事内容からこの世界について探りを入れることとした。
「母様、父様は今回王都に行かれてたのはどのようなお仕事だったのですか?」
「んー、確か終わった裁判の事務処理って言ってたわ。司法長官として書類に色々サインしたりしないといけないって…」
「そうなのですね…最近はなにか大きな事件とかありましたか?」
「そういえば、王都で魔法窃盗団による窃盗事件が起きたって言ってたわ!あとは魔獣の違法飼育といったところかしら…」
「色々物騒なのですね…教えて下さりありがとうございます。」
ニックはここでふたつの情報を手に入れた。ひとつは魔法が存在すること。そして魔獣がいることだ。
この2点が前世との大きな違いである。
このふたつについても後ほど書斎で情報収集したいところである。
そんなことを考えていると馬車が目の前までやってきていた。
父リットが帰ってきたのである。
「リットおかえりなさい!」
ミリアが笑顔で出迎える。
「あぁ、ただいま。ニックも目が覚めたようで安心したよ…」
初めて見るリットの姿はとても凛々しくイケおじな風貌であった。
そのリットは笑顔で馬車を降りてきた。しかし、少し顔が暗かった。
「父様、おかえりなさい。…少し顔が暗いですね。何かあったのですか?」
ニックは聞いてみる。
「実はこのローザ領に危機が迫っている。」
「えっ、危機!?」
「うむ、それもかなり深刻である。」
「一体その危機ってなんなのですか!?」
ニックはリットにせまる。
「このローザ家の財政が赤字なのだよ…」
なんとリットから発せられたのはローザ家の財政が赤字であると言うことだ。
「まぁ、詳しくは中で話す。2人とも中に入りなさい。」
そういうとリットは急いで屋敷に入っていく。ミリアもそれに続いて入っていった。
「えっ、転生していきなり危機が訪れたんだけど…とりあえず父様の話を聞いて、書斎で情報収集だな…」
今後の段取りを考えニックも屋敷へと入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。