第17話 青い光はスキル解放
いったん昼ご飯を食べに神殿へ戻った。レルシャの持つ立派な魔法杖を見て、ウーウダリが心底おどろく。
「レルシャさま? その杖はどうされましたか? たしか、ホプリンを買うのにお金をすべて使ったとおっしゃっておられませんでしたか?」
「うん。これは……ひろったんだ」
ある意味、まちがってはいない。最初はただの木の根だったのだから。
しかし、ウーウダリは不審の目だ。
「まさか、盗んだ……あ、いや、そんなこと、なさるわけがありませんよね。育ちのよい貴族のご子息なのですから。それに、このあたりで武器を売っているのは雑貨屋のキースティングスだけですが、そんな見事な道具はあつかっていないでしょう」
「えっと……ほんとは村外れのディーンさんがくれたんだ」
そう言っておくほうがまだしもほんとっぽい。遺跡めぐりに反対されると困るので、解放遺跡から持ってきたことはナイショにしておく。
じっと見つめられると嘘がバレた気がして落ちつかない。が、ウーウダリは納得してくれた。
「なるほど。それにしても、レヴィラディーンさんがよく杖なんてくれましたね。あの人、すごく強い戦士だけど、都会でイヤなめにあったのか、無愛想なんですよね。村人にもほとんど口をきいてくれなくて」
「そうなの? むこうから話しかけてきて、めちゃくちゃ親切に戦闘指南してくれたけど」
「めずらしいこともあるもんですね。よほど気に入られたに違いありません」
「そうなんだ。また来なさいって言ってくれたよ」
「よかったですね」
信じてくれたようでよかった。
「昼から、また出かけるね。ぼく」
「毎日、どこへ行っておられるんですか?」
「う? うん……」
一難去ってまた一難。ウーウダリ、するどい。
「村のなかを見てまわってるんだ」
「そろそろ見飽きてくるのではありませんか? 田舎ですからね」
「そんなことないよ?」
「なら、いいのですが」
危なかった。なんとかごまかした。ウサギ肉とソラマメのシチューを食べたあと、レルシャは外へとびだした。
「ふう。ウーウさんにバレるかと思った」
「外で魔法の練習でもしてると言えばよいのではないか?」
「スピカの言うとおりだね」
さて、次の遺跡は神殿の近くにある。午後からでも二つ行けるだろう。たしか、この二つには試練はないはずだ。攻撃魔法もおぼえたし、武器も手に入れた。これでスキルも強化できれば、もう言うことはない。
「あれ? でも、ぼくのスキルって発見だから、これ以上強くなっても、効果は変わらないんじゃないの?」
それとも今は扉が見えてない遺跡の入口も見えるようになるのだろうか? まあ、たしかにそれもいい。
神殿の近くには雑貨屋がある。今日もその前は素通りだ。だが、店主のほうはハッとした目で、レルシャの杖を見る。
「おいおい。坊主。こりゃあ、いい杖だな。どこで手に入れた?」
「ディーンさんにもらったんだよ」と、ここでも嘘をつく。
「ふうん? あいつは剣士だから、杖は持ってないはずだけどな。まあいいさ。その杖、ゆずっちゃくれないか?」
「ダメだよ」
「そこをなんとか。銀貨二十枚出そう」
「ダメ」
「ぬう……じゃあ、銀貨三十枚だ!」
「お金はいらないよ。大切な武器だから売るつもりはないんだ」
「都会に持ってけば、えらく高く売れるはずなんだがなぁ。なんなら、儲けの半分渡してもいいから。それで新しい武器を買えばいい。な?」
「イヤだ」
ふっきって行きたいのだが、困ったことに、目的の遺跡は雑貨屋の裏にあるのだ。レルシャが歩き去ろうとすると、キースティングスは立ちあがって店から出てくる。マズイ。これでは遺跡へ行くところを見られてしまう。
しかたないので、ここはあとまわしだ。もう一つをさきにするしかない。
レルシャはニャルニャを抱きあげると、坂道を思いきりかけおりる。キースティングスは小太りだから、途中でフウフウ言って追ってこなくなった。
「もう。イヤんなるなぁ。売るつもりないって言ってるのに」
「金儲けしか考えておらぬのだろう」
これだと店主がいるあいだはあの遺跡に近づけない。夜か、キースティングスが街へ買い出しに行っているときしかチャンスはないと思った。
もう一つの遺跡は坂道をおりたところにある森のなかだ。あたりを見まわしても誰もいない。急いで樹間にとびこんだ。
「あった。あった。祠だ」
ごちんまりした森だ。森というより、密生した木立ちと言ったほうがいい。そのまんなかあたりに遺跡があった。最初に入った祠と同じていどの大きさだ。
レルシャは誰も追いかけてこないのを確認すると、扉に手をあてた。やっぱり、赤い点滅はない。数字も頭に浮かばないので、無条件に入れる。そして、祠じたいが放つ光は青い。
「青はスキル強化なんだね? スピカ」
「その場合が多い。なかにはもっとめずらしいものが隠されていることもあるぞよ」
バトルがないなら問題はない。片手で押すと扉はひらいた。魔法杖がつっかえたが、はうようにして、なんとか入れた。本日二つめの解放遺跡だ。
「えっと……あれ? 入口せまかったのに、やけに広くない?」
「
「なー」
子ども一人がやっと入れるほどの小さな小さな建物だったのに、目の前には迷宮がひろがっている。
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