第5話 今日は今までにしなかったことをしましょう
「君の瞳に乾杯。」
「カサブランカ?相ノ木はいつも急に変なことを言い出すよね。」
おっと陸の可愛さとその星屑を散りばめたかのような美しい瞳に対して無意識に乾杯してしまっていたらしい。
「陸よ、一々そいつに構ってやらなくてもいいんだぞ?」
対面に座るアホの紫音が淡々といい放つ。
「紫音のバカさ加減にはいつも完敗しているよ。」
「相ノ木よ貴様、白昼堂々酔っ払ってでもいるのか?」
「紫音ほど自分に酔ってはいないさ。」
俺らはとりあえず駆けつけ一杯の皮肉の応酬を飲み干す。
「あはははでも、成人したらこの3人で飲んでみたいね!」
「相ノ木はリーレミックのように中毒になるのがオチだろうな。」
「酒とバラの日々か…アルコール中毒の怖さを如実に物語っているよな。」
「映画って教訓染みた作品も多いから知っているとオイタをしないで済みそうだよね。」
「アベンジャーズを見たからといってヒーローになろうとは思わないけどな。」
「もう相ノ木はまたひねくれたことを…」
と、いったように今日も今日とていつものだらだろとした日々を…
「元気にしてたか皆の衆ー!!」
ガラガラガッシャーンと立て付けの悪いドアを勢いよく開けて入ってきたのは
「あっみっちゃん先輩。」
「みっちゃん先輩久しぶりですー!」
「みっ、光希先輩!ご無沙汰しています!」
「おー相ノ木に陸に紫音!元気そうでなによりだ!」
ダイナミック入室をしてきたのは一つ先輩の幡代光希、一応この映画研究会の部長にしてたまに現れるレアキャラだ。
「ははは!ところで私は何しにここに来たのだったかな!」
そして自由奔放の権現のような人である。
因みに3人ともこの人に半ば強引に入部させられた。
「みっちゃん先輩、サボってばっかいないでたまには部長らしいことをしてくださいよ!」
「ハッハッハッ!今まで存在すら曖昧だったこの部活においてマキャベリのようなリーダーシップを取る必要もないだろう?」
「狐のような狡猾さだけではバランスが悪いと思いますが…」
考えてみればこの傍若無人さは人の上に立つ人間らしいと言えるかもしれない。
「おっ、そうだ思い出したぞ!喜べこの映画研究会は部活として認定され部費がおりるようになったぞ!」
「「「えーー!!」」」
中々足並みの揃わない三人の息が初めて合った瞬間であった。
「ほら9月に撮った自主制作映画があっただろう?あれの評価が中々よくてな!因みにエキストラで参加した生徒も全員幽霊部員として籍だけ入れさせたから今や書面上では我が映画研究部は総勢16人の中堅部活といっても差し支えない!」
寝耳に水が過ぎる!
「やったね!みんなこれで部室にスクリーンやプロジェクターをセットできるよ!」
「ふっ…確かに映研を名乗っておいてそれがないのもおかしなことだったからなさすが光希先輩だ!」
「これまで映研というより雑談部だったもんな…」
染々と夢のホームシアター生活に心を踊らす俺達を横目に不敵に笑うみっちゃん先輩。
「さて、久しぶりに私が来たのだ今日は今までにしなかったことをしようじゃないか!」
「「「いえ大丈夫です。」」」
珍しいな1日で二回も俺達の声が揃うとは。
「みっちゃん先輩の提案ではじめたことがいい方向になったことなんて一度もないですよ…」
「陸のいうとおりです先輩!なんですか?今度は"ティファニーで朝食を"みたいに動物のお面でも万引きしにでも行くつもりですか?」
陸と俺が反論し紫音はデカイ図体を縮こまらせて震えている。…というか痙攣している。
「な、なんだお前らそんなに夏休みのことを根に持っているのか?」
いつか話すと思うが今年の夏休みは先輩の思い付きのせいで地獄を味わったのだ。思い出しただけで頭痛がしてきた。
「夏休みどころかみっちゃん先輩が来ると毎回ロクなことにならないじゃないですか…」
「なぜだ?この前やった絶対絶命必殺かくれんぼもスリルがあって楽しかっただろう?」
頼むから、かくれんぼに絶体絶命と必殺がついてる時点でおかしいと思ってほしいものだ。
「あれ本当に死ぬかと思ったんですからね!陸なんて気絶してましたよ!!」
「ぐぅおおおおおッッ!」
ヤバい紫音が発狂しだした。
「何ってみっちゃん先輩はいつも高みの見物に徹しているじゃないですか!ずるいですよ!」
「部長らしくていいだろう?」
「ううっ…もうシュールストレミングサルミアッキ鍋はいやだよう…」
「み、光希先輩のためにならぼ、僕はいくらでも…」
陸と紫音も限界が近いらしい
「せ、先輩今日のところはみんなのSAN値が限界なので…」
「えー折角新しいデスゲームを考えてきたというのに…。」
一応顔だけは整っている美女がしょんぼりした顔でこちらを見てくるが今回ばかりは知ったことじゃない!命に関わる!
「デスゲームなんか考案するな!!それに今日は今までにしなかったことをするんでしょう?それなら今回は穏やかにいきましょうよ?」
今日も恒例のタイトル回収をしっかり終え下校のチャイムが鳴り響いた。
そして、そんなにことは関係ないというようにみっちゃん先輩考案の新感覚デスゲームはしっかり行われ俺達三人の心には深いトラウマが刻まれたのであった。
つづく
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