第一章:日常はミステリー

第3話:化学実験室薬品盗難事件

「来ないねー」

「来ないな」

今日も、俺たち「ミステリー・クラブ同好会」は活動をしていた。

「やっぱり、ポスターにインパクトが足りなかったんだよ。もう一度取り直す?」

「駄目だ!」

俺はきっぱりと言い張った。

「ほんとに誰も来ないね」

「まぁ、みんな部活動の時間だからな。こんなところに来る暇なんてないだろうな」

鴛谷と神崎は、本を読んでおり、俺たちの会話には参加しない。

「…あっ!そういえば!」

「どうした?」

「江崎!こんな噂を知っているか?」

「噂…?」

鴛谷と神崎も、本を読むのをやめ、耳を傾けた。


その噂の内容は、こうだ。


ある日、化学部部員が化学実験室に薬品を取りに来た。だが…

「あれ?」

そこに薬品はなかったという。

化学実験室中を探したが、どこにも見当たらない。おかしいと思った部員は、顧問の先生に伝えることにした。そして、生徒全員への聞き込み調査が始まった。


「あったな、聞き込み調査」

鴛谷が言った。

「うん、そうだね、話を続けるよ」


その結果、その部員が来る前に、化学実験室に来た人がいたという。彼は、学校内でも指折りの成績優秀者の一人である。彼も、化学部の一人で、薬品を取りに行くために化学実験室に来た。

だが、その時には、薬品はあったという。


「じゃぁ、そいつの証言が嘘で、そいつが犯人なんじゃないのか?」

「そう!そうだよ!それが噂になっているんだよ!」

「くだらん、実にくだらんことが噂になるんだなこの学校が」

「だからさ、その真相を確かめに行くんだよ!」

「めんどくさいな、やらなくていいだろ」

「あのー…すみません…」

そう言って手を挙げたのは、神崎である。

「ん?どうしたんだい神崎さん」

「たぶんなんですけど…その疑いがかけられてる人、私の友人です…」

ん?

「私、聞いたんですよね、その友人から、自分に変な噂が立ってるーって、だから…」

あれ?

「私、そんなの納得できません!私の友人は、そんなことをする人じゃありません!なので、その真相、ぜひ確かめてもらいたいんです!」

あ、

「そうか!そうか!神崎さんの友人だったのか!なら、神崎さんのためにも、協力してくれるよなぁ!江崎!苗字に崎が付く同士だろう!?」

「え…あ…うん…わかったよ…」

昔から、人の頼みを断るのは苦手であった。

「鴛谷は?鴛谷は行くのか?」

丸井は聞いた。

「はは!面白そうだから行ってやるよ」


…こうして、ミステリー・クラブ同好会の初の活動は、始まったのであった。

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ミステリー・クラブ ~日常はミステリー~ じんせいRTA @nue-1209

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