第2話:ミステリー・クラブの活動
ミステリー・クラブ。正式名称ミステリー・クラブ同好会。俺はミステリーのトリックを解くのが好きだったため、案外楽しい同好会なのかもしれないと思っていた。
…ええ、思っていましたとも。
「暇だ…暇だ!」
俺は読んでいたミステリー小説――「グレープフルーツ殺人事件」というヨクワカラナイ小説を今にも投げ出したかった。
「どうしたよ、江崎」
「どうしたよ、じゃない!日常にある謎を解くのはどこいった!」
「そうはいっても、日常に潜む謎なんて、ないからなー」
「では、謎を募集するというのはいかがでしょう」
そう言ってきたのは、神崎――あの目が大きい女子である。
「謎を募集…?」
「ええ、ポスターかなにかで、例えば、うーん、『日常の謎募集中!詳しくは二階の地歴室へ!』とか」
なるほど、謎は自分たちで探すのではなく、他人の謎を解くというのか。
「いい案じゃないか」
「いい案だね!」
結果、この案は採用された。
「…なぁ、なんで、写真なんてとるんだよ?しかも、なんだ、このポーズ」
「ポスターというのはインパクトが大事だからね」
「にしてもこんな…俺らは高校生なんだぞ?」
「まぁまあ、じゃあ、撮るよー」
「一番腹立つのはお前が写真に写ってないことだ…」
パシャリ。
俺が今一番思っていることを口に出す暇もなく、写真は撮れた。
その写真は、撮った本人でも、笑えてしまうほどのものであった。その本人を、俺を含むほかの部員は白い目で見つめている。
写真を見ると、俺は中央で片足立ちをし、両手をYの字にあげている。
そして残る二人、神崎と鴛谷は、俺の両端に立ち、俺を盛り上げるようなポーズをしている。
神崎は最初「いやいや無理です丸井さんがやってください」と機関銃のように否定の言葉を撃ちに撃ちまくっていたが、丸井の「ポスターを作ろうといったのは君じゃないか」の一発でしぶしぶ受け入れた。
ちなみに鴛谷はというと、「いいじゃないか、面白そう」で終わった。
そして俺は…二人がやっていたので俺もやることにした。という簡単な理由である。
「よいしょっと!」
丸井がポスターを張る。確かに、他のポスターに比べては、インパクトは十分といえるだろう。
――いったい、どれぐらいの人が、このミステリークラブに謎を持ってくるのだろうか。俺は「グレープフルーツ殺人事件」を閉じ、ポスターを眺めていた。それは皆も同じのようだ。
そして、この瞬間、俺たちの「ミステリー・クラブ」の活動は、始まったのであった。
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