第10話

片桐さんの姿が見えなくなった頃俺の携帯に電話がかかってきた。

最近見慣れた番号からだった。


『もしもし、星奈か?』


『うん。私だよ董哉。』


やはり電話をかけてきた来たのは星奈だった。

しかしいつもの感じではなく今日は少し、しおらしい感じがする。


『こんなタイミングで電話をしてくるなんて、もしかしてさっきの片桐さんとのやりとり見てたか?』


『うん。今日一日ずっと2人を見てたよ。董哉が頑張って話しかけている姿も、七海ちゃんが逃げているところもちゃんと見てた。」 



『そっか....ちゃんと見守ってくれてたんだなありがとうな。』



『ううん。お礼を言うのは私の方だよ。私はさ見ることしかできないからさ、七海ちゃんが抱えているものに何もわかっていなかった。』




『それに私のせいで七海ちゃんは後悔をしていた。私にはもうそれをどうすることもできないからさ、本当にありがとうね。』



『俺は星奈のお願いを叶えただけだ、星奈から言われなければ自分から行動をすることなんてなかったんだ。』



『でもさ普通の人ならさ、いくらお願いだからってここまで人のために行動しないよ。だから私はここまで行動してくれたことに感謝してるの。』


さっきの片桐さんの時もそうだが、こう素直に感謝されると照れてしまう。

しばらく何もいえず黙ってしまった。



『あれ?なんでなんも言わないの?もしかして

董哉照れてる!?』


このやろう。こいつ茶化してきやがった。


『そうだよ!照れてるわ!こんなに素直に感謝されるのなんてないからな!照れもするわ!』



星奈に茶化された俺は開き直ってしまった。


『ただでさえ今日片桐さんにお礼とか色々言われて恥ずかしかったのに、お前までしおらしくなってお礼なんかいうなよ!受け取る側としたら余計恥ずかしくなるわ!』


今外にいるということも忘れ声を大きくして話してしまった。



『あー面白い、董哉のこういうの見るの久しぶりだな!いやーいいものを見れた!』



先ほどのしおらしさもなくなりいつも通りの星奈に戻った気がした。なんならここ最近で一番喜んでいるそんな気がした。



『話は変わるが星奈的にはもう片桐さんは大丈夫だと思うか?俺的にはもうあの笑顔を見るとさ片桐さんは乗り越えていけると思ったんだが』



『私も大丈夫だと思うよ。じゃないと最後あんないい笑顔で挨拶なんてしないよ。』



そうだよな。あの時の笑顔はとてもいい笑顔だった。



『ならもう片桐さんを元気にするのは大丈夫そうだな。』



『うん。でもこれからも七海ちゃんと話してはあげてね。』



『え?どうしてだ?もう片桐さんは大丈夫なんだろ?俺が話す意味なくないか?』



『ぶっぶー乙女心テスト0点です。ちゃんと勉強してきてください。』



『どういうことだよ。本当にわからない。』



『今はまだわからなくてもいいよ、これからわかっていけば。とりあえずこれからも七海ちゃんと話すこと!いいね!』



星奈はそういい電話を切ってしまった。

俺は何も理解できないままだが、星奈に言われたことをやっていけばいずれわかる日がくるだろう、そう思い家に帰宅した。

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