第5話

3学期の始業式当日の朝、俺は見事に寝坊をして、今現在走って学校に向かっている。


8時までに登校なのにもかかわらず、7時まで夢の中のいたのだ。

両親は仕事の関係で早くに家を出ている。俺のことを夢の中から起こしてくれる人はいないはずだった。


しかし現実はとても幸せな方法で俺のことを夢の中から覚ましてくれた。



まだ俺が家で熟睡していた時、こんな朝早くにスマホから着信音がなった。

反射的にスマホを手に取り電話に出た。


『あい....もし..もし..』


『董哉!今何時だと思ってるの!?このままだと学校に遅刻するよ!』



まさかの星奈からのモーニングコールだった。


『え?まだ6時だろ平気だってほら目覚まし時計見ても6時だぞ』


『何言ってんの!?今もう7時過ぎだよ!』


スマホの時間を確認すると確かに7時を過ぎていた。


『てことは...目覚まし時計壊れていて、新学期初日なのに今とてもピンチってこと!?』


『そーだよ!董哉のお母さんもお父さんも仕事行って誰も起こしてくれる人いないでしょ。

だから私がモーニングコールしてあげたのだ!

感謝したまえ!』


『本当に助かった!ありがとう。すぐに支度して行ってくる!』



『はーい。どういたしまして。急いでいるからって事故に遭わないようにね!』



『星奈がそれを言わないでくれよ。複雑な気持ちになるわ。』


そりゃそうだ星奈は交通事故に遭って亡くなったのに、本人が事故に気をつけてと言うのは

なんとも言えない気持ちになる。



『あははーごめん、ごめん。でも本当に気をつけて登校してね。いってらっしゃい!』



星奈とこんなやりとりをまたしながら朝を過ごせたのが幸せで、俺は少しニヤけながら登校をしていた。


朝のやりとりを思い出していたら、いつのまにか学校に到着していた。



「ふー、なんとか遅刻せずに登校できたな。」


そう独り言を呟きながら自分の教室に向かった。




俺が教室に入ると少し雰囲気が変わった。

クラスメイトの俺を見る目が同情をしているかのような目で見てきている。



星奈が亡くなったという知らせはどこからか伝わったのだろう。

俺と星奈はクラスでも一緒に過ごしていたからクラスのみんなも俺たちの仲を知っているのだ。



そんな中、星奈が亡くなったと知れば俺に同情の目が向くのも自然とわかる。


こういう目を向けられるのはあまりいい気分ではないが、

俺はクラスメイトの視線に気がついていないフリをしながら自分の席についた。



席につくやいなや、クラスメイトたちが俺に話かけようか少しザワついていたが

そんな中たった1人だけそんな空気を知らないかの様な感じで話しかけてきた。


「おっすー、董哉。数週間ぶりだな宿題ちゃんとやってきたか?もしやっていたら俺に見してくれよ。俺まだ終わってねーんだ」



友達の中谷蓮斗がまるで何事もなかったかのように普通な感じで話しかけてきた。


「やっぱりやっていなかったか、はいこれ今回の冬休みの宿題だ、提出までにちゃんと写せよ。」


「サンキュー、やっぱ頼りになるわ董哉は!」


といい俺の宿題を手に取りながら蓮斗は自らの席に戻り必死に宿題を写していた。


おそらくだが蓮斗は普通に接することで俺に気をつかってくれたのだろう。

その優しさがとても伝わってきた。


心の中で蓮斗に対する感謝の言葉を思い浮かべていると、とある人物が教室に入ってきた。


「あははー、みんなおはよー。」


片桐七海が笑顔でみんなに挨拶しながら登校してきた。

しかしその笑顔は今までの明るい笑顔ではなく、まるで必死に笑顔を作っているかのような笑顔だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る